「コウとシナプス艦長について」 2002.11.07.


 確か、自衛官がそうだったかと思うのですが、短いんですよね。・・・・何がって、年金をもらうまでの年数がです。何を言いたいんだ?っていうと、軍人の寿命が短い、ってことを私は言いたかったのです。軍人だけではないのですよね。実を言うと、消防官も警察官もそうなんですよね、確か十五年くらい勤めただけで、年金を貰うことが出来てしまう。危険手当が発生する職業というのはそういうものらしいです、通常の会社員は、勤続三十年くらいしないと年金はもらえないのですが。いや、今は不景気だからもっと年をとってからでないとダメなのでしょうか?


 さて、そんなわけで今回私が誰についてお話したいのかというと、エイパー・シナプス艦長についてです。アルビオンの、つまりペガサス級強襲揚陸艦の艦長さんです。皆様がどう思われているかは分かりませんが、たとえばブライト、ブライト・ノアのような凄まじくかけ出しのペーペーのような軍人に『艦長』が出来てしまう「宇宙世紀」というのは一体どうなっているんだ?と、つねづね私は疑問に思っていたわけなのです。(しかし、あれはあれで緊迫感があっていいかと思うんですけれどもね、艦長代理、で艦の責任者、であることを必死に頑張るブライトというのはそれはそれでファースト的には正解だったわけです。・・・・でも、やっぱ「えー、アニメって便利だなあ・・・」って思いはしませんかでしたか/笑。都合が良すぎると!)そんな私にとって、シナプスさんというのは実に納得できる「艦長らしい艦長」さんだったわけでした。ただ、私はぬるいファンだから、知らなかったのです、サンライズ・アートワークスを読むまで、エイパー・シナプス艦長が四十五歳、というのを!それは、想像していたよりずっと若かったのです、だから一番頭の、「軍人の寿命は短い」という話になります。
 今回は「父性っぽいもの」について少し語ってみたかったのでシナプス艦長にテーマをもってきて、それでコウと絡めて話そうと思っていたのですが、0083本編で一番父性について分かりやすく語れるのはもちろんバニング大尉かと思います。サウス・バニング大尉。彼は、本当に良くコウの父親役をこなしていますね。ただ、私はバニング大尉については、思ったより書いてきてしまっているのです。(『アルビオンの少年』『アルビオンの少年』3おおきな星ショウ・ザ・フラッグ・・・・もそうかな?)なので今回は敢えてシナプス艦長で行ってみたいと思います。


 これまでの二回でもたびたび話題にしてきているのですが、0083映画版「ジオンの残光」のパンフレットですね。面白いので、今年は(今年は?)もう最後まで、そのパンフレットネタで話してみようかという気分になってきましたが(笑)、果たして、そのパンフレットにシナプス艦長についてもとんでもないことが書いてあるのか・・・と言ったら書いてあるのですよ、これが(笑)。『コウ・ウラキの両親と昔からの知り合い』と!!・・・・いやもちろん「そんなわけあるか!」と私も思います(笑)。だけれども、これまでの二回思いっきり「否定」を主張してきたので、敢えて今回はそのふざけたとんでもない設定を汲んでみようかと思います。・・・いかがですか(笑)。


 0083というのは主人公が19才のコウ・ウラキなわけなのですけれども、そもそもロボットアニメ、というもの自体が、本来なら「子供が見るもの」という特性上、「子供が主人公」というのが本当だと思っています。だから、その理論で言うと「逆襲のシャア」なんていうのはとんでもない話なわけですよ。ロボットアニメなのに、主人公が29才のアムロ・レイと34才のシャア・アズナブルですからね!それを可能にしたのがトミノさんの力量なわけなのですが、その話題については今回は置いておいて。
 さて、コウ・ウラキの年齢が19才であることを覚えておいてもらって、更にそれは本来ロボットアニメの主人公らしからぬ年齢だということも分かっておいて頂いて、更になにを話したいのかといえば、「主人公の成長」というその一点なわけです。主人公の年齢がどうであろうと、平凡な主人公が必死に頑張り、そして成長してゆく、そういうストーリーはロボットアニメには欠かせない、と私は思っています。そこでバニング大尉や、シナプス艦長が登場、なわけですね。きっぱり断言しますけど、0083の大人はイイ!大人と言うか、本当にオヤジ達が輝いている!そういうアニメだと思います。果たして、シナプス艦長はどうなんだ?というと、コウ(主人公)との最初の会話から素晴らしいんですね。シナプス艦長はたった一言、勝手にガンダムを動かしたコウに向かって聞くわけです。「・・・乗り心地はどうだ?」と。アムロがガンダムに乗っていることを知ったブライトの方がまだ怒ってますね、だけどシナプス艦長は怒らない。それどころか、余裕で、ユーモアたっぷりに聞き返す。「・・・乗り心地はどうだ?」・・・・・・・すごいことですよね!!


 その後も、「本気ですかシナプス艦長・・・」という発言を、彼はし続けます。例えば、バニング大尉が「新人が一号機のパイロットでもですか!」と、コウを一号機のパイロットにすることに対して確認をとります。すると、シナプス艦長は一言「かまわんよ。」と答えるわけなのです。・・・・私が考えたってすこしヤバいと思います。そもそも、ガンダム試作一号機と、ガトーに奪われた二号機、というのは共にデータ収集の為に地上に降ろされた機体なわけですよね。それを、実験する前にガトーに奪われてしまって、任務の意味合いが変わってしまった、本来なら必死に二号機を取り戻そうとしているわけですから、一号機にシロウト同然のコウを載せている場合ではない、だけどシナプス艦長の返事はO.K.なのです。・・・・このあたりが凄い。コウ自身はぜんぜん気がついていないわけなのですが、下手をするとコウをめちゃくちゃに買っているバニング大尉(例:「ウラキは俺についてこい!」の台詞。・・・・ここで「キースは!!?」と突っ込まない方はいないと思います/笑)以上の判断を、シナプス艦長はしていることになります。凄い思いきりだな、と。そうして、決断力だな、と思います。こんなに包容力のある、頼りがいのある艦長はそれまでのガンダムで私は見たことがありませんでした。そうしてそのまま、シナプス艦長は一歩も引かず、上層部の命令も無視してその有り様をコウやキースにあますところなく見せた挙げ句、信念を通してアルビオンで突撃して、最後には・・・・最後には、その、軍事裁判で、死刑になるわけなんです。・・・戦った相手に殺されるのではなくて、地球連邦軍に殺されてしまうのですよ。


 そんな後ろ姿を見た、コウの衝撃は大きいだろうなあ、って思う。コウ・ウラキは、その後のガンダムの歴史にはもちろんミジンコ程も出てこない人間なわけなのですが、だけれどもそういう軍人の生きざまもあるのだ、と知ってしまった衝撃は大きいと思う。だからこそ表舞台には出てこないのだ、くらいに私は言いたいような気がする。0083というのはですね、本当に裏方の話かと思うんですよ。歴史から抹殺されたガンダムの記録、ですよ。あれだけのことを経験してしまって、それからも『地球連邦軍の軍人』を是非に続けたいと思う人間はあまりいないと思う。そうして、よくよく後になってから、コウはしみじみ、シナプス艦長に信頼されていたことを理解すると思う。必死の最中から抜け出して。我を通したその生き方とかを知って、自分が戦った相手と寸部変わらぬその思いを知って、泣いたりすると思う。自らが死んでまでコウの成長を促した、そういうバニング大尉とは明らかに違う「父性」なのですが、そういう含みを持った父性が、自分を見守っていてくれたことを知ると思う。


 そう思った時に、ですね。私は、「そんなわけあるか!」という「ジオンの残光」のパンフレットの記述に、初めてノってみたくなったのでした(笑)。だから、コウの両親と、それからシナプス艦長が昔から知り合いだった、ってそういうのですよ。あるわけない、って思います。ただ、あからさまに付き合いがあった、というのではなくて、そうとは知らずに、ですね。そうとは知らずにですね、(ここ重要!)コウの親とかと知り合っていて、そうしてその面影をコウに見ていたからこそシナプス艦長はあれだけコウに甘くて、とんでもない決断を出来ていたとしたら、それはそれで面白いんじゃ無いかと。・・・・・なにより、誰もついてこなそうなシナプス艦長の過去、その部分ですね(笑)。そういう彼がいかにしてペガサス級の艦長になったか、っていうそういうところを私は書いてみたくなってしまったのですよ。つまりね、そういう気分にさせるところが、凡人しか出てこない0083の素晴らしいところかと思うんです。凡人が、ただの人間がドラマになることを、痛いほど0083を見ていると感じるんですよ。
 ってことで、今回はひとつ、そういう星の屑の、地味で目立たない連邦のオヤジ達への哀歌をこめて、とんでもなくひとりよがりな話を書いてみようかと思いました。


『極彩色』



 いや、今回の星の屑は正直このあたりで限界かと思います・・・・(笑)。おつきあい下さって本当にありがとうございました(笑)!







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