ボーイズラブゲーム、『学園ヘブン』の製作元のサイト様はこちらです。18禁ですので、御注意ください。
なお、この小説は何処までもリクエスト主であるはるなさんが面白がってくれたらなー、っていう主旨の元に書かれており、それ以上にあまり意味はないです。
ごめん(爆笑)!!←男らしく。


2005/01/09 お題:赤城さん

 ばらいろ小咄。『学園ヘヴン』(前編)

 大学の前庭を横切っていた時に携帯が鳴った。シャアからだったので電話に出ると、「二日ほど留守にする」と言う。あっそ・・・・と返事をしそうになってから、急に気づいた。
「・・・・つーか、あれ、もともと俺んちだから。あんたが勝手に入り浸ってるだけだから、別に断る必要ねぇよ。・・・・・好きにすりゃいいじゃん。」
『そう言われればそうだな。』
 珍しいと言えば珍しい電話だった。シャアはそれなりに多忙らしく、断わりもなく戻って来ないことは今までにも多々あった。それが何故、今日に限って断わりの電話を入れる気になったのか、その理由がそもそもよく分からない。
「・・・・・・・・・。」
 アムロは切れた携帯を見てしばらく考え込んでいたが、まあ、大学にこれ以上用も無いし、素直に帰ることにした・・・・と、まてよ。今日、何曜日だっけ?もう一回携帯の液晶画面を見る。
「・・・・・金曜か・・・・ってことは、丸二日一人っきりか・・・・・うっわ、すげー久しぶり・・・・!」
 そう考えたら少しわくわくして来た。・・・・・何をしよう。・・・・・何をしようかな!タイミングの良いことに、明日の土曜に入っていた授業は休講である。・・・・・本当に久しぶりの、丸二日一人だけの週末!!
「・・・・・・・よし、」
 とりあえずアムロは、大学最寄りの近鉄京都線興戸駅から急行列車に飛び乗ると、自宅のある二つ前の駅、桃山御陵で降りることにしたのだった。



「いらっしゃー・・・・お、アンタか。」
「どうもー。」
 竹田の二つ前、桃山御陵の駅で電車を降りたアムロは、繁華街から一つ入った通りにある中古ゲーム屋に向かった・・・・・あまりに何度も来ているので、もう店主とは顔なじみになってしまっている。
「・・・・あんまおもろいの無いで、今。」
「いいよ。」
 この中古ゲーム屋は個人商店なのだが、それなりに品揃えが良くてアムロは気に入っている。新作が入って来るスピードも早いし、旧作でとんでもない掘り出しものが見つかることもある。自分のような顔なじみの多い店なのだろうなあ、と思う。
「アンタ、PSP買ったんか?」
「ニンテンドーDSもね。・・・・・いや、別に、普通にPS2とかでいいんだけど、今日は。」
 店主からの問いかけに適当に答えながら、アムロは棚を流して見てゆく。・・・・・そう言えば、昔はこの店にもっと良く来てたよな。昔、というのはシャアと妙な関係になる前の話である。・・・・アムロは、自他共に認めるゲームおたくだった。今もそうなのだが、シャアと一緒にいることで、必然的にゲームの時間は減っている。
「でもまあ、自由な時間が二日もあるわけだし・・・・・・」
 店を一周したところでアムロは立ち止まってこう言った。
「・・・・・・なのに、本当に『おもろいの』無いんですけど!」
「せやから、そう言うたやん。」
 店主は首をすくめてアムロを見る。・・・・容赦なく本当のことを言うなあ、というゼスチャーだろう。いや、厳密には気になるソフトが幾つかあるのだ。しかし、新作過ぎて高かったり、なにより二日間・・・・二日間でクリア出来そうなゲームでなくて、アムロは迷っていた。話題のRPGを二日でクリア、というのは不眠不休で四十八時間費やしても無理だろう。
「・・・・・・・あれ、」
 そんな時に、アムロの目に一本のゲームが飛び込んで来た。・・・・・なんと表現したらいいんだろう、魔がさした、っていうのかな、こういうの。
「・・・・・・なるほど。なるほど、そうか、本当に欲しいゲームが無いのなら、逆に・・・・」
 話のネタにするためにウケ狙いで一本、というのも悪く無いかも知れない!!アムロはそう思ってそのゲームを手に取ったのだが、それを見てさすがに店主が呆れたような声を上げた。
「あんなぁ、アンタそれ・・・・」
「分かってる。知ってるって、内容はゲーム雑誌とかで見たことあるから。」
 笑えるかも、と思ったらもう止まらなくなってしまった。そこで、そのままそれをレジに持ってゆく。・・・・ありがたいことに、そのゲームは中古ソフトとしても激安だった・・・・というか、男性の客が多いこのマニアックな店では買い手つかない、というのが本当のところだろう。
「・・・・・・ま、それやったら止めへんけどなぁ・・・・・」
 ともかく、店主はそのゲームを適当に袋につっこんでくれた。どうも、と言ってアムロはお金を払って外に出る。
「電車乗るの・・・めんどくせぇな・・・・」
 そうして、二駅離れた自分のワンルームマンションに向けて歩き出す。途中でコンビニ弁当を買うのも忘れなかった。楽しい予感がする金曜の夕暮れ時だ。・・・・その時のアムロは、これからの二日間で自分にどんな悲劇が襲い掛かろうとしているのかまだ知らなかった。・・・・・・・・手にぶら下げたビニール袋の中で揺れているゲームソフトは『学園ヘヴン』。・・・・・いわゆる、ボーイズラブゲーム、である。・・・・・・つまり、男であるアムロに言わせればまぎれも無い『ホモゲー』、であった。



 ・・・・その、次の日。土曜のまだ早い時間に、コウの携帯が鳴った。・・・・・早い、というか。
「・・・・・五時!?・・・・・・アムロ、俺を殺す気か!」
 最後の方は携帯に向けて叫びながらも、ともかくコウは電話に出る・・・・いつも通りに、留学生会館のガトーの部屋に転がり込んでいた。
『・・・・・コウ。・・・・・・・・・そろそろ、起きるかと思ってさ・・・・・・』
「・・・・・あー、いや。起きると言うか、起こされたんだよ電話にさぁ・・・・・・なんだよ、どした?」
『・・・・・・・・・』
 ところが、アムロからきちんとした返事が無い。・・・・さすがにコウは、眠い目をこすりながらベットの上に起き上がり、何故か正座をした。
「・・・・・アムロ?・・・・なんだよ、何かあったのかよ。・・・・アムロ?」
 見ると、そんなコウの様子に気付いて、やや不機嫌そうにガトーも向かい側のベットに起き上がっている。
『・・・・・コウ・・・・・このままだと・・・・俺は死ぬ・・・・・・』
「・・・・おい、え?・・・・えぇ!!??ちょっと待てよ、アムロ、どうしたんだよ、アムロ!!」
 ただならぬコウの声に、ガトーがベットから立ち上がって歩いて来た。
「どうしたんだ。」
「アムロがおかしい。」
 コウはそれだけを説明すると、電話に向かって呼び掛けた。
「アムロ、何処だよ、俺すぐ行くから・・・・」
『・・・・・うん、コウも今日の授業休みだろ?一緒の授業だから。』
「休みだ!家か?・・・・すぐ行くから、剣道部も練習、今日ないから、」
『うん・・・・・・・・・』
 ・・・・・何やらアムロは今にも死にそうな有り様である!!!コウはベットの上に立ち上がって、パジャマのズボンを脱ぎながら言った。これは、ジーンズに履き替えるためである。
「おい、死ぬなよ、おい!!??ガトーも一緒の方がいいか!?」
『・・・・・・ガトーだけはダメだ・・・・・・・』
 ガトーだけはダメだ、という言葉にちょっとした違和感は憶えたものの、とにかく電話は切ることにした。
「すぐ行くから。・・・・待ってろよ!」
 電話を切ると同時にガトーに向かって首を振る。
「私は行かない方が良いのだな?・・・・シャア絡みではない、ということだな?」
「詳しいことは分からない・・・・・また、連絡するから!」
 コウはジーンズを履くと適当に上着をひっかけて、靴下も履かずにスニーカーに足をつっこんだ。そんなコウにガトーが後ろから、洗濯した靴下を投げてよこす。
「コウ!・・・・靴下は持ってゆけ!きちんと履くのだぞ!」
「分かってるって・・・・・!!」
 ともかく数十分後、コウは自己新記録のスピードでアムロの家に到着した。・・・・もちろん、人気の少ない始発の市営地下鉄の中で、靴下を履くのも忘れなかった。



「・・・・・・・アムロ?」
 適当にチャイムを押したのだが、返事が無い。試しに、と思ってドアを開くと、鍵はかかっていなかった。
「・・・・・・・アムロ?・・・・俺だけど・・・・・アムロ?」
「・・・・・・・適当に入れよ。」
 最初に、そのもうもうと部屋にこもった煙草の煙りに驚いた。・・・・それから、こりゃ徹夜したんだな、と気付く。
「・・・・・んだよ・・・・生きてるじゃんか。・・・・・ゲームか?」
「・・・・・おー・・・・・・・」
 テレビの前に陣取ったアムロは意外に元気で、何故か縞模様のトランクスとTシャツといういでだちで、PS2のコントローラー掴んでいた。・・・・・画面には、コウの見知らぬゲームが流れている。音は消されているらしく、右側のボタンでスキップされる画面上の会話は、早すぎてコウには読めなかった。
「・・・・・・おい、アムロ?」
 そこで初めてアムロはコウの方を向いた。・・・・・な、なんかやつれてないか。
「コウ・・・・・」
 アムロはそこでやっとゲームをセーブすると、コウの方を向き直る。煙草の箱に手をのばそうとするので、慌ててコウは換気扇を回しに走った。・・・・・この部屋、ヤバいって、なんか!!
「なんだってんだよ・・・・・」
「・・・・・そーれがさ。俺としたことが、大変な過ちを犯してしまい・・・・・・」
「あやまち?・・・・なんだよ、それ。」
 するとアムロは、隣に座り込んだコウに一冊のペラい説明書を放ってよこす。・・・・コウはそれをパラパラと眺めてみた。
「・・・・・・これが原因か?・・・・・ゲームだろ、ええっと・・・・・・」
 ・・・・・眺めて見たが、まったく内容は分からなかった。
「なんのゲームだ?」
「恋愛シュミレーション。」
 アムロが顔色一つ変えずにそう答えた。なるほどねぇ、と思ってコウはもう一回その説明書を眺め直す。恋愛シュミレーション、って言ったら、『ときメモ』みたいなのだろう。『ときめきメモリアル』。かつて一世を風靡したゲームなので、さすがにそれくらいは知っている・・・・・やったことはないけど。・・・・と、やがて恐ろしい事実に気付いた。
「・・・・・・・・・・おい、アムロ。」
「なんだよ。」
 アムロはめんどくさそうに頭をかいている。
「・・・・・・・・・俺の気のせいかな、このゲーム・・・・男しかいないように思えるんだけど・・・・・」
 コウは恐る恐るアムロにそう言ってみた。・・・・・実に綺羅々しい説明書の表紙を、更にじっくり眺め直す。
「・・・・・・男しかない。」
 煙草を吸いながら、実に苦々しげにアムロがそう言った。
「・・・・・・・・・意味が分からねぇんだけど。」
「・・・・・・・・つまり、」
 アムロが灰皿らしい物体(それはおそらくかつてコンビニ弁当の器だったモノだろう)に煙草を擦り付けて火を消しながら説明した。
「・・・・・主人公も男なんだが、口説く相手も男という恋愛シュミレーション・・・・ぶっちゃけ、『ホモゲー』だ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 コウは実に長らく沈黙していた。・・・・・・・・おおよそ一分くらいだったが、やっと正気を取り戻したらしく叫んだ・・・・・・アムロほどゲーム業界に詳しく無いコウは、そんなゲームの存在自体を今、知ったのである。
「・・・・・やるなよ、そんなの!」
「買っちまったんだからしょうがねぇだろ!!」
「でもやるなよ!・・・・おまけに俺に話すか、普通!!」
 アムロがシャアとただならぬ関係なのは知っているが、こんなゲームまでやられるとなると、親友としてはヘコんでくる。そこで、ひどく率直にコウはこう言った。
「・・・・そんなにホモが好きなのか!」
「そんなワケねぇだろ!」
 アムロは、というと何故か急に泣きそうな顔になっていた。その、ひどくもじゃもじゃな頭を更に自分でかき回す。
「・・・・・・恐いんだよ!こんなに『恐いゲーム』と思って無かったから、ネタになるかと思って軽い気持ちで始めたのに・・・・マジで恐ぇんだよ!だからコウを呼んだんだよ!」
「呼ぶなよ!!」
 コウの叫びもまた切実だった。・・・・なにが・・・何が面白くて、ほ・・・・・ホモゲー?
「・・・・・・・・なあ、コウ。・・・・・・聞いてくれ。」
 アムロは泣き落しが利かなかった、と気付いて作戦を変えて来た。・・・・それくらいは、付き合いの長いコウにも分かる。今、アムロの目は座ってる。・・・・・すっっごく恐いことを言う前触れだ、これは!!
「・・・・・・俺は、今までクリア出来なかったゲームが無い。・・・・つまり、ゲーマーとしての人生を無敗で過ごして来た。・・・・分かるか?」
「・・・・・・んー・・・・・まあ、なんとなく・・・・・」
 アムロのゲーム好きは自分も知っている。でも、それとコレとは関係ないような気も、コウにはした。
「だからな、ここで負けたく無いんだ・・・・一人でやるのが恐いから、って理由で『学園ヘヴン』を途中で放り出すような・・・そんな真似は俺はしたくない。」
「いや、放り出していいような・・・・・・」
 コウは思わずそう言った。すると、アムロがコウの肩をガシッ、と掴む。
「・・・・・コウ!!男なら、逃げるわけにはいかない場面もあるだろう!!!」
「・・・・・いや、逃げていいと思う、俺、全力で逃げていいと思う・・・・・・・男だからこそ!!!」
「現実を見ろ!!このゲームはここにあるんだぞ!!??それでもか!!」
「・・・・・い、嫌だ・・・・・・!」
「つべこべ言わずに半分やれよ!・・・・音声入れるから、コウにも大丈夫だろう、ってルートがあるから、やれよ!!手伝えよ、コンプまで!!」
「・・・・・・いやだぁあああ!」
 コウは叫んだのだが、結局アムロにコントローラーを握らされてしまった。・・・・・・ここまで来たらやるしか無い。・・・・・・結局貫徹で『学園ヘヴン』をやっていたらしいアムロは、コウに「中嶋さんにだけは近付くな・・・・!」という謎の一言を残して、自分はさっさと仮眠、とばかりに寝てしまったのだった。・・・・・・・コウは仕方なく、アムロオススメの『篠宮さんルート』のコンプリートから作業を始めたのだった。



「・・・・・・・・・・どうなった。」
 アムロが目を覚したのは、土曜日の昼も過ぎてからだった。
「・・・・・・・おぅ、俺、結構頑張った・・・・・と、自分でも思う。」
 コウはそう言いながらアムロにコントローラーを手渡した。・・・・・呼び出されてここに辿り着いたのが午前六時過ぎだったから、かれこれ六時間もホモゲー、とやらをやっていることになる。
「・・・・・・宝塚みたいだな、これ・・・・・・・綺羅々しくて現実味がねぇよ。・・・・まあ、ゲームだから現実味は必要無いのかもしれないけど。」
「・・・・・微妙に間違って無い気がする。」
 そう言いながらアムロはコウからコントローラーを受け取った。・・・・・着の身着のままベットで適当に眠っていたので、ひどい有り様である。髪の毛など、面白いくらいにひっくり返っていた。
「・・・・・・どこコンプした。」
「・・・・・結構コンプした、ええっと・・・・・篠宮さんと・・・・」
 コウも、それなりに睡眠時間を削ってアムロの、下らないとも思える作業を手伝っている。眠い目をこすりながら、こう言った。
「・・・・篠宮さんと、俊介と、岩井さんだろ、それから海野先生と、女王様はコンプした・・・・。」
「・・・・・・うっわ、女王様とか、よく頑張ったな・・・・・・・俺、あの人苦手・・・・」
「・・・・・女の人だと思って耐えた・・・・・海野先生も同じく・・・・。俊介は、男の友情だからと思って頑張った・・・・だって、身の上が可哀想過ぎてさ・・・・・。」
 アムロが素早くシーンリストをチェックするのを、コウはぼんやりと眺める。・・・・・しかし、眺めながらやはり思った、どうしてこんな目に俺が遭わなきゃならないんだ!!
「・・・・・・くっそ、確かに人数的には半分クリアしてるけど・・・・・恐いのばっか残してるじゃねぇかよ、コウ!!」
 ・・・・そう言って怒るアムロの方が恐い!!・・・・・コウはそう思ったが、口には出さなかった。
「問題はこの二人なんだよ、成瀬さんと中嶋さん!」
「ち、近付くなって言われたから近付かなかった・・・・・・な、中嶋さんの方?」
「ああ、俺すごい恐怖体験したから。・・・・中嶋さんルート初回で。それは正しい。」
 アムロはそう言いながら、ひどく真剣な面持ちでテレビの画面を眺めている。・・・・・・・やがて、チェックが終わったらしく、コウの方を振り向いた。
「・・・・王様ルートもコウがやれよ。・・・・・俺、もうちょっと寝る・・・・」
「ふざけんな!」
 コウはさすがに怒った。
「俺、ちゃんと、全人数の半分やっただろ!!??残りは自分でなんとか・・・・」
「・・・・なんとか出来たら、コウを呼んでない!!」
 アムロも負けじと叫び返した。
「なんていうか・・・・なんていうか本気で恐いんだよ!・・・・・だって、シャアがマトモに思えてくるんだ、成瀬さんとか見てると!!・・・・シャアを十人足して、それを絞って凝縮したら成瀬さんが出来上がるかな、ってくらいの人なんだ、こんなの・・・・・こんなの一人でクリア出来るかよ!」
 ・・・・・いや、それはシャアさんに失礼なんじゃ・・・・とコウは思ったが、まあゲームをやってそれなりの人物像は掴めていたので返事をする。
「・・・・分かった、じゃ、一緒にやるからさぁ・・・・・とりあえず、メシだけ買って来ていいか?」
「・・・・・・うん。」
 そこでアムロは、成瀬ルートのコンプを目指し始め、コウは眠い目をこすりながら近所のコンビニまで弁当を二つ買いに行くことになった。



 ・・・・成瀬ルートで本当に二人は疲れ果てた。
「・・・・・う、うざいくらい親切で良い人だな、この人・・・・・・・・」
「コウ、お前いいヤツだな。そんな台詞がまだ出てくるなんて・・・・・俺は、こんな人間が近くにいたら蹴り飛ばす・・・・・・」
 ・・・・・二人は疲れていた。コウと、アムロの二人である。結局、王様ルートはコウがコンプした。王様がそれなりにヘタレで、魚釣りくらいにしか主人公を誘わないのが幸いした。
「・・・・・さて、残った問題は・・・・・・」
 ・・・・・・・二人は説明書を眺め直す。・・・・・・・残っているのは、和希と中嶋と七条だ。
「・・・・・・こいつが理事長だろ。・・・・和希ルートは案外すんなり行くと思う。・・・・そんなにヤな奴じゃないし。」
「・・・・・分かった、それじゃ和希から・・・・」
 ・・・・・・気がつけば、夕暮れ時。土曜日の夕日が、ワンルームマンションの中でホモゲーに勤しむアムロとコウの二人を照らしていた。
「・・・・・・・・・コンプー!!!」
「つか、サバ読みすぎじゃねぇ、こいつ!!・・・・・本当は幾つなんだよ、オイ!!」
 和希ルートコンプ。・・・・二人はゲームクリアに必死になるせいで、そのゲーム自体の異状さには既に感覚が麻痺した状態に二人は陥っていた。
「・・・・・で、残ったのは・・・・・・」
 アムロが説明書を摘まみ上げて呟く。・・・・・・残ったのは、中嶋と七条。
「・・・・・・どっち、先にやる?」
 ・・・・コウは、半分眠りそうになりながら、アムロのゲームに付き合っていた。
「・・・・・中嶋さん、恐いんだろ。・・・・・じゃ、七条さん先で・・・・・・」
「分かった、七条ルートコンプが先な。」
「・・・・・んー・・・・・」
 ・・・・半分寝ている。・・・・・というか、疲れ果てている。・・・・どうして、週末を全部犠牲にして、『ホモゲー』をやらなきゃならないのか、良く考えるとまったく意味が分からない!!・・・・でも、大学生なんてそんなものなのかな。
「・・・・・・・コウ?眠いならちょっと寝ろよ。」
「いや、ちょっと眠いどころでなく、超ねみー・・・・・・」
 ・・・・・コウが眠りに落ちた後、アムロは必死で、七条ルートのコンプを成し遂げた。音声を切って、会話をスキップしてすっ飛ばしてもそれなりに時間がかかった・・・・・回想シーンがやたら多かったからだ・・・・・でも、やった!!・・・・・と、思ったが、振り返るとコウは本気で布団をかぶって寝ている。
「・・・・・・・コウ・・・・・俺は・・・・・・やったぜ・・・・・!!」
 アムロの目には、土曜の午後十一時を示す時計と、七条ルートコンプを示すシーンリストの画面ばかりがちらついていた・・・・・そこで、コウの眠るベットの上に馬乗りになるとこう叫んだ。
「・・・・・起きろ、コウ!!・・・・残りは中嶋さんだけだ!!」
 コウは慌てて飛び起きた。・・・・・・なんだって!
「・・・・はい!!・・・・・俺、起きました、篠宮さん!」
「・・・・・・・お前、実は本気で篠宮さん気に入ってるだろ・・・・絶対気に入ると思ったよ、武道なんかやってるお堅い人で、小姑みたいな性格で、メシを作ってくれて、おまけに靴下の干し方にまでこだわる人だもんなぁ・・・・。」
 アムロはややため息をつきながらそう言ったのだが、コウは本気で寝ぼけているらしい。
「・・・・・・・え、何。・・・・・え?あと残り中嶋さんだけって・・・・・え、俺なんか言ったか?」
 いや・・・・コウの好みは本当に分かりやすいと言おうとしたのだが、ここまでドップリこのゲームに浸ってしまっている自分達の事を思うとなんだかそれも空しく思えてしまい、アムロはツッコむのをやめることにする。
「・・・・とにかく、残りは中嶋さんだけだから!!・・・・・俺、本当に恐くて一人は嫌だから、頼むから起きててくれよ。」
「分かった・・・・・」
 コウがベットから起き上がって、アムロの隣に、テレビの前に座り込んだので、アムロは運命のボタンを押すことにする。



 ・・・・・二分後、二人は揃って布団に頭をツッコんでいた。



「・・・・・恐ぇよ、なんなんだよこの人っ!!」
 そう言いながら、布団の中でコウはアムロの手を掴む。・・・・ああ、ホントにどうしようかと思った!
「・・・・・続けたくねぇんだよ、だから俺もっ!!」
 アムロも(おそらくは)涙目で、そんなことを呟いている。・・・・暗い暗い布団の中での出来事だった。二人は、そうしている自分達がどんなにおかしい状態なのか、そちらの方に気付いていない。何しろ、二人揃って今ゲームの中で中嶋さんに襲われかかったのである。今まで経験したことのナイ非常事態に、二人とも正気を失っていた。
「アムロが買ったゲームだろ、もうちょっと頑張れよ!!・・・・15禁なんだろ、PS2なんだろ、だったらたいしたことねぇよ!!」
「それをお前が言うかよ、ならお前が頑張れよ、俺は絶対やだよ、この人!!中嶋さん!この人にだけは近寄りたくねぇよ!!」
 ・・・・しかし、実際には近寄らないと、中嶋ルートをクリア出来ないのである。・・・・・二人は、本当に頭を抱えていた・・・・近寄っただけで押し倒されそうな中嶋さんに怯えていた・・・・・結果として、布団の中に頭をツッコんでいた。
「・・・・・・・落ち着け。・・・・落ち着け、これはゲームだろ、アムロ。」
「・・・・・・・そうだな・・・・・・。」
「俺達、ベルリバティーの生徒じゃ無いだろ、ホントは。」
「・・・・・・・そうだな・・・・・・。」
 そこで、気を取り直した二人は布団から揃って顔を出した。・・・・・日付けは、日曜日に変わりかけていた。
「・・・・・ゲームってことは、だぞ?・・・・思ったんだけど、このゲームにも『攻略サイト』はあるんじゃないかな・・・・・・・・どう思う?」
 コウは非常に常識的な意見を述べた。・・・・・なるほどな!と、アムロも思った。
「そこに行ったら、最短で中嶋さんルートを攻略する方法も書いてあるんじゃないか?その、最短、っていうか・・・・やる人間が被害を受けない程度の最短で・・・・・」
「・・・・・頭いいな、コウ!」
 さて、二人は本当にゲームの画面から顔を背け続けていたのだが、そこでやっと腹を決めて、画面を見た。・・・・そしてすぐに逃げた。・・・・・恐い。中嶋さんというのは、どうにもサディスティックな人らしい。しかし、ゲームと言うのは正直で、どんなに音声を切っていても、会話をスキップで飛ばそうとしても、初めて見るシーンはそれが出来ないようになっている。
「・・・・・検索、早く、検索・・・・」
「死ぬな、アムロ!!」
「死んでねぇよ、検索・・・・!」
 アムロは必死でパソコンを立ち上げると、大急ぎでネットに繋ぎ、そして検索した・・・・・キーワードは『学園ヘヴン』。
「・・・・・あっれー?」
 しかし、コウがパソコンの画面を見て言った。
「・・・・・たくさんヒットはするけど、ポータルっぽい攻略サイトがない、珍しいゲームだな・・・・・」
「・・・・・見るな!」
 とりあえずアムロは叫んだ。え、と呟いて隣で同じ画面を眺めていたコウはカーソルを動かすのを止める。
「・・・・・多分それは、『学園ヘヴン』であって、『学園ヘヴン』でないサイトの山だ・・・・・止めるんだ!」
「いや、そこまで言うなら止めるけどさ・・・・・」
 おおよその見当がアムロにはついた。でも、コウには三十万年かかっても、理解出来ないサイトのリストだろう、今のは!!・・・・・なんてことだ!!
「・・・・・じゃ、やっぱり自力でやるしかないのか、中嶋さんルート・・・・・」
「・・・・・こういうの、得意そうな友達はいないのか、逆に。」
 その時、またコウが極めて冷静にそう言った。・・・・・・・アムロはそこで初めて、フト他の可能性に思い付いた。
「・・・・・・そうか。・・・・そうか、その手があったか!」
 そして携帯を掴むと、日曜日になったばかりというのに、とある人物に電話をかけたのである。
 ・・・・その相手は、甲斐 嗣典、大学の同じ工学部の先輩、カイさんの電話である。別にカイさんが女性向けボーイズラブゲームに詳しいわけではない。
「・・・・・・もしもし。・・・・・あ、カイさん、こんばんは、あの、すいません変なこと言って、隣に・・・・・」
 ・・・・・・・もし、アムロの記憶が間違っていなければ、
「・・・・・ミハルさんいますか? ええっと・・・ミハルさんと電話変わって欲しいんですが・・・・・」
 カイの彼女である時枝 美晴が、確かこの手のゲームに詳しかった様な記憶があったのだった。



後編に続く。)
         






■お題リクエストは赤城はるなさんです!■

・・・・続いちゃったよ・・・・(笑)!!
スイマセン。本当にすいません。赤城さんの、本来のリクエストは『テレビゲーム』というお題だったかと思います。
最初は更に限定して、『スーパーマリオ』だったかな、と記憶しているんですが・・・・・・でもね!
・・・・・・わたし、本当にテレビゲームって、ほとんどやったことがないんです(><)!
それで、どうせやったことがないのなら、このお題の為に、やってみるのも一興かと(笑)。はるなさんの喜んでくれそうなゲームを、
やってみるのも一興かと(笑)。それで、本当に、考えに考え抜いて、『逆転裁判』にするか、『学園ヘヴン』にするか、最後まで悩んで、
悩みに悩み果てて、結局『学園ヘヴン』にしてみたのですが・・・・・・・・・。
もはや小咄とは呼べない長さのこの作品ですが、次回、どうやってコウとアムロがこの作品をクリアしたのか、
その謎が解きあかされます・・・・・(笑)。お楽しみに・・・・!!
(↑ちなみに、最後の選択理由は、『学園ヘブン』の主人公の声が
ジャック・ベアード(福山 潤さん)だったから、とまあ、その一言に尽きます・・・・!/爆笑。)
いやもう、なんとか終わらせますのでそれまでヨロシク(笑)。





2005/01/09




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