+ 天分 +





(・・・・・・・・・・退屈だ。)



アナベル・ガトーにとって
初めての潜水艦の旅は快適とは言えなかった。

ただの狭い空間なら
戦艦や空母だって似たような作りだ。
なのに、どうも息苦しい。



気分転換に艦内を歩いてみたいものだが、
客人扱いのガトーが居られる場所は限られている。

艦長室で雑談することはできても
そうそう邪魔はできないし、
作戦司令室は入室禁止だ。

他は、食堂兼談話室で休憩中の乗組員に、
せがまれるまま宇宙の情報を話してやるか、
トレーニングルームで身体を動かすか、借りてきた本を読むか、
長い通路歩を端から端まで走ってみるか。

時々、奪った試作2号機の様子を見に行くが
本当にただ見るだけ。





「・・・ふー。」

食堂で溜息1つつくと、

「少佐殿は、潜水艦に向いてませんね。」

「そう思うか?」

年下の伍長にずばり言われてしまった。



「潜水艦の乗員になるための適性で一番大事なことは何かご存知ですか?」

「・・・いや。」

「協調性なんだそうです。」

「・・・。」

「この閉鎖空間で時には何ヶ月も過ごすんですから。」



聞き様によっては
自分には協調性がないと言われているようなものだが、
アナベル・ガトーは腹が立たなかった。

(・・・そうか。)

モビルスーツ乗りは目立ちたがりなのかもしれん。

と、むしろ納得してしまった感がある。



ましてや、エースパイロットと持て囃され、
専用機を与えられ、
自分でパーソナルカラーを決めてるようでは・・・。

(・・・たしかにな。)



しかし、この伍長にはできないことができるのも自分であり、
それぞれの天分があって、勿論なのだ。





ガトーは見えもしない壁の向こうを見やった。

(・・・・・・・・・それでも、退屈は退屈だ。)



重力の井戸の底のさらに底
光すら届かぬ深い海の中を
静かに進んでいく濃緑の船が
早くアフリカに着いて欲しい

と、(心から)願ったのだった。














戻る










Copyright (C) 2000-2005 Gatolove all rights reserved.