+ 敵 +





・・・俺はなんでケリィさんと戦ってるんだ?



酔っぱらいにからまれて
ぼろぼろに殴られて
気を失って
見ず知らずのそんな俺を拾って
介抱して
寝かして
ごはんを食べさせてくれて。

一宿一飯の恩義・・・じゃないけど
モビルアーマーを一緒に修理して
そのことに夢中になって。


あの時、
二人の間に流れていた時間は
同じ線上にあった。

敵とか味方とか
そんなことは思わなかった。

もしかしたら
いつか
このモビルアーマーで
戦うことがあるとしたら?

・・・あるとしても
イメージできない先のことで

だってあんなに楽しかったじゃないか。

部品を選んで
ネジを回して
配線を繋いで
機動のうねりをあげる
モビルアーマーに
二人して喜んで。



・・・なのに、今は
敵として対峙している。

ケリィさんには何のためらいもなく。

俺は・・・、

俺も・・・、

はじめは戸惑ったのに。



右手が動く。

左手が動く。

右足を踏んで。

左足を踏み込んで。



昨日は一緒にいた人を
今日は敵にして。

・・・いやもともと敵だったのだ。

ケリィさんはあきらめてなかったんだから。

パイロットであることも
軍人であることも。



右手を動かし。

左手を動かし。

俊敏に反応する身体。

・・・怖いほどにためらいが消えていく。



敵か。

味方か。

戦場で意味をもつのは、ただそれだけ。



ケリィさんが勝つか。

俺が生き残るか。



・・・俺はだからケリィさんと戦ってるんだ。














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