+ 最高の酒 +





不死身の第4小隊そのいち、
アルファ・A・ベイト中尉は言った。

「やっぱりビールだろう。
それも、缶やビン入りじゃなくて、
サーバーからジョッキに注ぎたての
白い泡がしゅわしゅわいってる冷えたヤツを
一気に飲み干すのがサイコーだぜ。」

・・・ただ宇宙では泡が立たないから
ビールは我慢してるのさ。
と、不満顔。



不死身の第4小隊そのに、
ベルナルド・モンシア中尉は言った。

「ビールなんざぁ、酒じゃねぇ。
酒といったらブランデーで決まりよ。」

ちなみにお気に入りは
イタリア製のワイルド・ターキーだ。



不死身の第4小隊そのさん、
チャップ・アデル少尉が言った。

「・・・ふっ。私ならテキーラですね。
芋虫入りが飲めてこそ一人前です。」

冷静な口調の割になかなか過激である。



「おまえら、何やってんだ?」

不死身の第4小隊を束ねていた
サウス・バニング大尉、
今は、強襲揚陸艦アルビオンのモビルスーツ隊の隊長が
声を掛けた。

三人が格納庫の隅っこで
(いつもどおり)ポーカーに興じていた時のことである。



「いや・・・今ですね、最高の酒はなんだ?っていう話しになって・・・。」

ベイトの声に、

「ベイトのヤツはビールだって言うし、アデルはテキーラ。俺は・・・」

「ブランデーだろ?」

モンシアが続いてバニングが引き取る。

トリントン基地でバニングが
怪我のためベッドに寝かされていた時、
モンシアが見舞にくれたのもブランデーだった。



「・・・変わってないな。」

バニングが懐かしげな表情をする。

かつて、ただの第4小隊だった頃から、
三人はやはりそれぞれの酒を楽しんでいた。

不死身の第4小隊と呼ばれるようになっても、
陽気で酒好きで仕事も遊びもきっちりやるところは変わらなかった。

そういうヤツラと仕事をやっていたってことを、
・・・また組むことができたってことを、
心底嬉しく思っている。

(・・・言ってはやらんが。)



「大尉はどうです?」

アデルの問いに、

「おまえらはセンスがない。」

とバニングの冷たい一言。
みんなの反論が上がる前に、

「最高の酒と言ったら、
生きて帰って飲む酒。
・・・に、決まってるだろ。」

(おまえらと一緒にな。)



大尉、
そりゃ、ずるい、
・・・ふっ、
と三者の反応。

言外の意味をくみ取れない仲じゃない。
そんな年月の付き合いじゃない。

照れくさいような
暖かいような
大尉の言葉。



「そろそろ寝とけよ。」

「へぇへぇ。」



生きて帰ってみんなで
酒を飲みたい。

最高の酒を。

(みんなで。)















宇宙世紀0083年11月8日15時27分、
サウス・バニング大尉、戦死。



・・・三人は酒と涙で弔った。










(もう最高の酒は、飲めない。)














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