+ 再会 +





リック・ドムIIのコクピットで
カリウス軍曹は幸せな夢を見ている。



デラーズ中将の声がテレビジョンから流れてきた時、
カリウスはその言葉の意味より
写っている映像に驚喜した。

禿げた中年男の右隣に立っている
懐かしいシルエット。

「・・・ガトー大尉っ!」

三年ぶりに見る姿。



(変わられてない。)

皺ひとつない軍服を
真直ぐ伸びた背筋で着こなして。
鋭い眼光も
ひっつめられた銀髪も
見慣れた者には時々優しい口元も。



0080年1月、
グラナダ撤退戦を最後に
大尉と離れ離れになってしまった。
自分はサイド6にあるコロニーのひとつに
潜伏することになってしまったが、
大尉の噂はなかなか流れてこない。

月のどこかにいるっしゃるのだろうか。

それとも撤退戦で大尉は・・・まさか?!

胸を悩ました日々。

・・・それが終わったのだ。



大尉の姿を見た時、
どれほどの喜びを感じたことか
涙腺が緩むほどに。



確かな情報もないままに、
カリウスはその日のうちに
サイド6を飛び出した。

建設途上のコロニーに隠した
リック・ドムIIと共に。

ただ一度の演説で
時が回りはじめた。

カリウスだけでなく、
どれほどの旧ジオン兵が
躍起だったことだろう。

元モビルスーツパイロットも
元技術者も
元通信兵も。

各々の立場でできるだけのことを・・・。



秘匿回線で
情報が流れてくる。

茨の園。
デラーズ艦隊。
ガトー少佐。
そして、向かうべき場所。

間に合って欲しい。

ガトー大尉、・・・いやガトー少佐の元で
もう一度、戦いたい。

こんな終わり方はいやだ。
少佐のそばで。
私は・・・。



一人では長い旅も
いつのまにか数機のリック・ドムIIが連なって
中継基地で補給を受けながら
ソロモン海を目指す。



身体の節々が長時間の硬直のせいで痛む。
なのに、嬉しい痛みだ。
刻一刻と少佐に近づいて・・・。





再会のその時まで
リック・ドムIIのコクピットで
カリウス軍曹は幸せな夢を見ている。














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