+ ガンダムに乗って +
ジオン残党の急襲で破壊された基地の中で、
丸一日ぶりに有り付いた食事は、
・・・なんだか見なれたものと違う。
(・・・ああ、そうか。)
いつもより品数が多い高カロリー食。
ガンダムに乗って戦って戻ったコウには、
パイロット食が供されているのだ。
ジオンの残党の急襲で破壊された基地の中で、
再開された食堂は、
冷静に
マニュアルどおり
パイロット食を作って、
それを食べるコウは
・・・食べてる気がしない。
バニング大尉は重傷だし、
アレン中尉もカークス少尉も亡くなった。
カレント小隊も全滅とみなされてるし・・・。
ただ機械的に口元にフォークを運ぶ。
「コウ!元気だせよ!!」
「元気っ・・・て?!」
向かい側に腰を下ろした親友のチャック・キースの声に
(だせるわけないだろ!!!)
と叫び返そうとしてハッとする。
キースだって悲しくないわけがない。
だけどコウを気遣ってくれているのだ。
「おまえ、ガンダムに乗れたんだぜ!!!」
コウと同じパイロット食をつまみながら、キースは言う。
「すっげーよ、ガンダムだぜ。
ナイメーヘンにいた頃、いつも言ってたじゃん。
いつかはガンダムに乗りたいって。
・・・これぞ男のロマンだろー。」
そうだ。
一年戦争の後、公開された情報の中で、
なんども見た白い機体。
一年戦争を勝利に導いた憧れのモビルスーツ。
ナイメーヘン士官学校卒といえど、
実習機はジムしかなかったし
トリントン基地に来てからも、
ジムやザクしか乗ったことがなくて。
・・・ガンダムに乗った・・・んだよな。
「うらやましいぜ。俺だって乗りたかったよ。」
そう、ガンダムに乗ったんだ。
キースじゃなくて僕が。
・・・・・・・・・ガンダムに乗って負けたんだ。
キースじゃなくて、僕が。
ガンダムに乗って
勝ちたい。
あいつに。
「だーかーらー、元気だせよ、な。」
「さんきゅ、キース。」
味がしてもしなくても
口に入れて飲み込んで
元気をだして強くなって
(・・・勝ちたい。)
ガンダムに乗って。
次
戻る
Copyright (C) 2000-2005 Gatolove all rights reserved.