+ Last Will -2- +
遺言状
親愛なる父さん、母さんへ。 せっかく生んでもらったのに、先に死んでしまったこと、どうか許してください。 自分で選んだ道です。後悔はしてません。 だから、あまり泣いたりしないで。母さんには泣き顔は似合わないよ。 マリーア姉さん。 ジョック兄さんが、無事に姉さんの元へ帰ってこれるよう祈ってます。 もうすぐ生まれる、おいっこかめいっこにキスを贈ります。 その時までに戦争が終ってるといいんだけど。 ルル姉さん。 いろいろとつらいこともあると思うけど、どうかみんなを励ましてあげて。 姉さんまで泣いちゃうと、家が真っ暗になるもの。お願い。 リディア。 あまり、食べすぎないようにね。 一歳しか違わないのに、姉さんぶったりするから、喧嘩もよくしたけど。 ・・・でも大好きだよ。 ちびすけのファドへ。 兄ちゃんは、もうおまえに会うことができないんだ。 これからは、おまえが父さんと母さんを支えてやるんだぞ。 ・・・兄ちゃんの分もな。 学校をサボったりするなよ。 欲しがってた、Air forceシリーズのプラモは、全部お前にやるから。 ちゃんと大切にしてくれ。 父さん、できたらファドに、戦争がそんなにいいもんじゃないってこと、よく教えてやって。 あいつまだ、かっこいいものとしか考えてないだろうから。 ファドが大きくなっても志願することのないよう、どうか戦争なんかが終っているよう、 心から祈ってます。 みんなに、キスを。どうかいつまでも幸せに。 愛をこめて、あなたたちの息子、カリウス
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『ふううぅぅ・・・・・・』
こんなんで、いいのかなぁと、カリウスは書き終えたばかりの文章を読み返す。
うわ・・・なんだか、恥ずかしいな。これ。
書き直そうかと、クシャッと握り締めてから、
ゆっくりとしわしわの紙を元に戻した。
恥ずかしいけど、どれも本心。
・・・これが最後になるかもしれないし。
カリウスは、なかなか遺言を書く気にならなかった。
それは、死を形として意識すること。
そうと思わなくても、避けていたのだろう。
だが、この前のソロモン戦では、
4人の仲間が死に、レズナー大尉ですら、片腕を失った。
もう、ずいぶんと前から、死は隣に並んでいたのかもしれない。
巧妙に姿を隠して。
カリウスは、何も残さずに死んでいくのか・・・と考えると、
急に、怖さと寂しさに包まれた。
『・・・・・・・・・これで、いいか。』
所定のカプセルにセットして、担当へ持っていく。
・・・・・・・・・幸いにも、
カリウスの遺言書は開かれることがないまま、一年戦争は終結した。
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