+ 休暇3 +





『ち・・・・・・・・・思わぬ休暇、ってとこだが・・・。』



残念ながら、嬉しくもなんともない。



ベッドの上で、左上腕を固定されて、
身動きできず、話す相手もいない。





ケリィ・レズナーは、ドロワの一室で、
急にぽっかりと開いてしまった時間を持て余していた。

いや、時間よりも、胸の内に生まれた空白を、
どうしたらいいのか持て余していたのかもしれない。



ア・バオア・クーに撤退中のジオン軍には、
病院船で負傷兵を本国に送り返す余裕もなかった。

もう戦えないとわかっているのに、
退艦もできず、かといって親身に治療もしてもらえず、
寝ているだけの負傷兵たち。



ここだけじゃない。
他の艦にも、俺のような奴が、たくさんいるんだろう・・・



小さな舷窓から見える、傷ついた戦艦や補給艦の群れを見ながら、
ソロモンの激戦を思い起こして、ケリィは嘆息した。





・・・・・・・・・この前の休みは、遊び呆けたのになぁ・・・まったく。



どうせ、いつ死ぬかわかんないしな・・・と、
半年分の稼ぎを大奮発して、

『これであなたも王様気分!豪華リゾートコロニー10日間の旅』

に出たのだ。



MSも戦いもジオンも忘れて、
あるとこにはあるんだなの、山海の珍味に舌鼓。



いつもは、ビールばっかり飲んでるのに、
花と果物が飾られたカクテルを頼んで浜辺で飲んでみたり。



ジャグジーバスとサウナを往復して、
一人我慢大会。



ジェットスキーで、湖を爆走。
ザクに比べれば、何十分の一のスピードに過ぎないが、
生身で風を切る心地よさは、こっちの方が上だ。



美女が踊るステージを見て、最前列で囃したて、
酒を頼んでチップを渡して、・・・頼みすぎた酒で、酔いつぶれた。



バーに居合わせた女性を口説いてみたり、振られたり、

・・・もちろん、上手く寝てみたり。





・・・なーんにも、

ほんとに、なーんにも、考えずに、

一日中、ベッドでテレビを見ながら、ごろごろしてみたり。





・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ギリッ。





『なんで、だ?』





今だって、

同じように、

ごろごろしてんのに、





なんで、

こんなに、

・・・・・・・・・違うんだ?





ケリィは、自由になる右手を伸ばして、切断された患部に触れてみる。



痛むかと思ったそこは、
たっぷり打たれた鎮痛剤のせいで、全く、何ひとつ、感じなかった。





・・・・・・・・・腕が一本、無くなったってのに、痛みもしないのかよ・・・はははっ。





ケリィの、望まぬ休暇は、一年戦争終結の日まで続いた。














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