+ 来るもの去るもの +
『う・・・ん・・・・・・・・・。』
アナベル・ガトーからアナベル・ガトー大尉になる瞬間。
朝の目覚め。
昨晩もなかなか寝つけなかったが、それでもいつの間にか、眠っていたようだ。
・・・頭が重い。
瞼をこすって、少しでも早く『戦闘可能』な状態を取り戻そうとする。
いつもは苦もなくできることが、うまくできない。
・・・理由はわかっている。
目覚める前に見た夢が、邪魔をしているのだ。
襟足で揃えた銀色の透けるような髪。
緑色のトレーナーに半パン。
大きな目は、好奇心いっぱいで。
小さな口はもぞもぞと動いている。
手足のあちこちに擦り傷があるけれど、元気良く駆けていく。
・・・待っていてくれる人の元へ。
それは、まだ、小さなガトー。
両親とも健在で、毎日あちこち飛び回っていた。
人工の自然に過ぎなくても、子供にとっては小宇宙。
砂も石も土も草も花も川も湖も、すべてが、遊び場。
やがて、6歳のガトーを残して、母が亡くなり、
そしてガトーは、外に遊びに行かなくなった。
『ただいま』
と帰っても、
『おかえり』
と言う人がいないので。
・・・静かな家に帰るのは、とても怖かったので。
母の夢を見るときは、いつも子供の自分がいる。
6歳の頃の自分がいる。
・・・・・・・・・しょうがないだろう?
『う・・・ん・・・・・・・・・。』
アナベル・ガトーからアナベル・ガトー大尉になる瞬間。
そんな夢を見た後は、時間がかかって、少しだけ戸惑う。
懐かしさに、息苦しくなりながら、深呼吸。
そして、なるべき、自分へと・・・
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