+ 声 +
「この宇宙(うみ)は、泣いているのでしょうか?
・・・我々に何かを訴えたくて。」
「・・・迎えてくれているのだ。私には、それが聞こえる。」
ガンダム2号機が、ソロモン海を駆けていく。
2機のリック・ドムを従えて。
さながら、名乗りを上げて敵に挑む、中世の騎士のように。
静かな海に漂う、戦いの名残り。
共に戦った、あるいは、敵として戦った、MSのかけらが、
敵味方の区別なく混ざりあって眠っている。
その懐に、かつて人であったものを抱いて。
動いている時は、金属の塊だと信じられないほどだった。
『人型』と呼ばれ、パイロットに命を吹き込まれ。
今はただの機械の破片。
冷たく硬い金属の塊。
人を殺すために生かされるよりは、まだ幸せなのだろうか。
「この宇宙(うみ)は、泣いているのでしょうか?
・・・我々に何かを訴えたくて。」
「・・・迎えてくれているのだ。私には、それが聞こえる。」
アナベル・ガトーは、
不思議と気持ちが落ち着くのを感じていた。
出撃前に、ソロモンの海を見た時は、
3年前の戦いの記憶が、
散っていった同胞の面影が、
心を捕らえて放さず、昂ぶるばかりだったのに。
こうして、激戦の行なわれたソロモンの真っ只中に帰ってくると、
どうしたことか、そういったことの全てが封印・・・いや、浄化された如く。
・・・・・・・・・そうだ。
これは復讐戦などではない。
新たな戦いなのだ。
ほのかでもいい。
我々の理想の道標とするために。
この宇宙(うみ)の声は、
厳しく、
激しく、
そして、優しい。
・・・・・・・・・迎えてくれているのだ。私にはそれが聞こえる・・・・・・・・・
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