+ 形 +





「・・・素晴らしい。」



モビルアーマーを見上げながら、男が言った。



「まるで、ジオンの精神が形となったようだ。」





男は、本気でそう思っていた。

最高の機体が与えられた嬉しさに。



さきほどまで乗っていた機体も見事なものだった。

が、所詮は連邦が設計し連邦が組上げたもの。



・・・だが、これは違う。



遠い果ての地にいる同朋から送られてきた、

一機限りのカスタムMA。



マニュアルには、

AMA-X2『NEUE ZIEL』

全高:76.6m
全幅:73.6m
重量:198.2t
ジェネレータ出力:75,800kw
主スラスター推力:359,000kg×1、204,000kg×1、125,000kg×11
武装:メガ・カノン砲×1、偏向メガ粒子砲×9、有線クロー・アーム×2、
メガ粒子砲×6、大型ミサイルランチャー×4、小型ミサイルランチャー×24、
Iフィールド・ジェネレーター×4

・・・桁違いの数値が並ぶ。



男は、この機体を乗りこなせるだろうか、などと微塵も考えたりしない。

最高の技量を持つ自分にこそ相応しい、最高の機体であると思う。



そう、連邦の機体で朽ち果てることなど望まない。



もしも、帰れぬ場所へ往くとしたら、

『ジオンの精神』を形にしたようなこのMAと、

一緒に往こうではないか。





・・・・・・・・・形あるものは、いつか必ず壊れることを、

男は知っているのだろうか。



いや、知っていようがいるまいが、

この男が進もうとしている道が変わることは、もう、ないのだ。





操縦席についた男は、深く静かに頭を垂れて、

出撃前のわずかな時間を安らぎの中で過ごした。














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