+ First Time +
302哨戒中隊の隊員たちが、ずらりエース級だとしても、
そこはそれ、20歳前後の若者の集団である以上、
酒の席や、あるいは、酒が無くとも、こういう話題に花を咲かせることがある。
「俺は、16歳だったなぁ。」
「・・・は、早いっすね。」
「士官学校のダンパで知り合ってな、二つ年上の・・・
知らないんなら、教えてあげるって言われて、ラッキー、と。」
「ゴクッ。」
「・・・そりゃあ、良かったよ(ニヤリ)。」
「ゴクゴクッ。」
「ところで、おまえは?」
「・・・・・・・・・。」
「ははは。さては、まだだな?」
会話の主は、ケリィ・レズナー大尉とカリウス伍長だ。
どっちがどっちかは、一目瞭然だろう。
「よーし、次にサイド3か月に戻ったら、いい店に連れてってやろう。」
「いえ、いいです。」
真っ赤になって手を横にふる、カリウス。
「一度は、経験しておくもんだぞ。」
言外に(死ぬ前に)というお節介もこもっているが、
少しも悲愴に聞こえない、ケリィの物言い。
「その・・・、最初は、『愛する人と』って決めてあるんです!!」
・・・クシャッ。
恥ずかし気に、だが真面目にそう言うカリウスに、
ケリィは照れたように、大きな手のひらで、カリウスの巻き毛をくしゃくしゃにする。
「ははは、ははは。」
「・・・どうした?」
そこへちょうど、中隊長のアナベル・ガトー大尉がやってきた。
楽しそうに笑い合う二人に、割ってはいる。
「よう、ガトー。今、カリウスに初めての時はどうだったかって聞かれてさ。」
「・・・レズナー大尉。止めてください。」
・・・怒られる!
と、カリウスは一瞬、身を縮めた。
回りからも親友同士と見なされているガトーとケリィだが、
その性格はずいぶん異なっている。
「おまえは、どうだった?」
「・・・聞きたいか?」
(へっ?!)
ガトー大尉にH話なんて、もってのほかだと思っていたのに、
意外とノッてくるではないか!!!
「あんまり、昔のことで、忘れたんじゃないのか?」
「・・・そうでもないぞ、まだ一年も経ってないのに。」
(・・・オクテだったんだ。へーっ。)
恐る恐るガトーの顔色を窺いながら、話に聞き入るカリウス。
「無論、私とて、緊張はしていたが・・・」
(そうか・・・ガトー大尉でもかぁ。)
「赤子の手を捻るようなものだったな。」
(えっ?もしかして、女子高生とか??)
「直前で一瞬、体が止まったが。」
(そういうものか・・・ふむふむ。)
「性能に差がありすぎる。」
(ひどいなぁ。大尉の体だったら、そうかもしれないけど。)
「・・・だから、ルウム戦役で、初めてセイバーフィッシュを墜とした時より、
その後、サラミスと対峙した時の方が、印象に残ってるな。」
「・・・・・・・・・はああぁ???」
「どうした、カリウス?」
思わず大声を上げてしまったカリウスを、怪訝そうにガトーが見る。
せいばーふぃっしゅ、
・・・って、
それって、初めて敵機をやっつけたってこと?・・・
「い、いえ、何でもありません!!!」
カリウスは、反射的にケリィの顔を見たが、
いつのまにか回れ右をして、こちらに背を向けている。
・・・その肩がひどく震えていた。必死で笑いを堪えているのだ。
「で、おまえは、どうだったのだ?」
302哨戒中隊の隊員たちが、ずらりエース級だとしても、
そこはそれ、20歳前後の若者の集団である以上、
戦火の中で、どうやらそれなりの毎日を過ごしているらしい。
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