きらきら




 ある日、コウはアムロに「きらきら」をもらいました。アムロときたら、コウと違ってなんでもできるし、その上綺麗なものもたくさんもっていたからです。コウはよくアムロにいろいろなものをもらいました。そのほとんどはコウには分らなかったり、つかえなかったりするものでしたが。でも、コウは、アムロがだいすきだったのでいつも喜んでもらっていました。その日も、喜んでその「きらきら」をもらうと、両方の手のひらのうえにそっとのせて、でもいそいでガトーのところに向かいました。なぜなら、コウはガトーも大好きで、アムロにもらったものは必ずみせるようにしていたからです。「ガトー!」ガトーのところにたどりついて「きらきら」をみせるまで、コウはその「きらきら」がこわれてしまうんじゃないかとたいへんに心配しました。何故なら「きらきら」はとってもあいまいで、不確かなものに見えたからです。「みてこれ、アムロにもらったよ!」いつものとおり、コウがそう元気よくガトーの前にたつと、ガトーはちょっとだけふりむいてくれました。ガトーはいつも、ちょっとだけしかふりむいてくれません。「これは・・・『きらきら』だな。」ガトーはそういってコウの手のひらのうえにのせられたものをみました。ああ、なんてことでしょう、ほんとうに「きらきら」は「きらきら」なのです。コウはガトーも「きらきら」を好きになるかな、と思いました。なぜならコウは、アムロにもらったものはみんな大好きになっていたからです。「そうだよ、『きらきら』。綺麗だね。」コウもそういうと、驚いた事にガトーがむずかしい顔をしてコウをみるのです。そんなことはいままでに一度もなかったことでした。そうして、ガトーはさんざんかんがえたあげくにこういいました。「コウ、これはわたしたちには関係がない。」「え?」コウは、ガトーの言っている意味がわかりませんでした。というか、コウにはいつもガトーの言葉の意味は、よくわからなかったのです。それで、考えつつ、考えつつ家に帰って、そのころようやっとガトーがなにを言おうとしていたかわかるのでした。「関係がないってどういうこと?」ガトーはコウの質問にまた考えていましたが、そのうちこう言いました。「・・・必要ないということだ。」そうして、とつぜん『きらきら』をコウのてのひらからとりあげると、ぽいっとそこらに投げ捨ててしまいました。・・・コウはほんとうにびっくりしました。ガトーがそんなことをしたのははじめてだったからです。見ると、投げ捨てられた『きらきら』はまだ地面の上でやっぱり『きらきら』でした。コウは迷いました。こういう時はどうすればいいのでしょう。「・・・ええっと。」コウは、さいしょ驚いていたのですが、そのうちガトーは『きらきら』が好きにならなかったのかもしれないとやっと気づきました。それで、こう言いました。「ごめんなさい、ガトーは『きらきら』がきにいらなかったんだね?」「いや、ちがう。必要無いと言ったはずだ。」・・・だけれども、コウにはやっぱりその言葉の意味は分らなかったので、こう言ってみました。「アムロは『きらきら』があると、人はもっとしあわせになれるって言ったよ。だから、『きらきら』はいいものだって。シャアさんとも『きらきら』があるから、どんなにはなれていてもずっとつながっていられるって。」「でも、あのふたりは喧嘩ばかりしているだろう。」ガトーに言われてみると、たしかにその通りでした。アムロとシャアさんは、いつもいつも喧嘩ばかりしているのです。「でも・・・・・」コウはまだ何かを言おうとしたのですが、言葉が出てきませんでした。「きらきら」は手のひらにのせているとき、とてもあたたかくてここちよかったのです。だから、とてもいいもののような気がしていたのです。でも、ガトーはそれを捨ててしまいました。「でも・・・じゃあ、どうすればいいと思うの?」コウはついにガトーにきいてみました。本当はガトーに聞くのはとても悔しかったのですが。コウは、ガトーにあまり負けたくなかったのです。すると、ガトーは急にコウの手のひらの上に自分の手のひらをのせました。・・・・・驚いた事に、それは「きらきら」とおなじくらいあたたかかったのです!そうしてガトーはいいました。「『きらきら』はたしかによいものだと私も思う。だが、『きらきら』がなくてもきっとつたえたいことはつたわるし、生きてゆける。だから、私達には『きらきら』は必要無い。」今度のガトーの言葉は、コウにもすこし分かった気がしました。それに、ガトーの手のひらときたら本当にあたたかく、それでコウはすごくしあわせな気持ちになったのです。「・・・分かった、それじゃ俺かえるよ。」それで、コウは満足して家に帰りました。帰ってから、アムロが『きらきら』はどうしたの?とコウに聞いたので、コウはちょっと困りましたが、正直にガトーがすてちゃった、と答えました。すると、アムロは大笑いしていました。コウはそんなアムロをみて、アムロは『きらきら』をたくさんもっているんだから、あんなにシャアさんとけんかしなきゃいいのにな、とおもいました。・・・・・どんな時だって手をつなげば、すぐに「きらきら」と同じくらいあたたかくなるんですから。

 






2001.01.20.




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