Planet Shining.
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第1話:ガンダム強奪〜chronopsychology〜 2000.05.09. |
アメリカ。アリゾナの乾いた岩だらけの砂漠の中を、一列になって何かが進んでゆく。それはまるで、この広大な砂漠の中では蟻の行列の様に見えるが、実は巨大なトレーラーの群れだった。
「あ〜つ〜い〜・・・・」
そのトレーラーの中の一台の中で、1人の東洋系の少年が呻いている。ボーダー柄の適当なカットソーを着て、トレーラーに作り付けのソファに寝転がって雑誌を読んでいる少年。
「・・・暑いったら!何とかしろよ、クリス!」
そう言うと、その少年は遂に明後日の方向に読んでいた雑誌を放り投げた。
「・・・あのなあ、ウラキ・・・・」
クリス、と呼ばれたのは窓の近くで外を眺めていたもう1人の少年だった。
「お前はまだいいよ!髪の毛が短いんだからさ!役柄だか何だか知らないが、俺なんかこの髪型だぞ!だいったい『ヒマだ〜』とかいってさっきの町で俺のトレーラーに乗り込んで来たのはお前だろ?クソ熱いんだよ、この狭い車の中に二人も野郎がいたらさ!あったり前じゃ無いか!」
そう言うとクリスは、自分の持っていたアイスノンをウラキと呼ばれた少年に投げてよこした。クリスというのは、何処から見ても欧米系の人種の少年だ。淡い色の金髪を頬の両側にかかるくらいまで伸ばしている。そうしてそれを、うるさそうにかきあげながら続けた。・・・そうだ。何より面白いのは、この全く人種の違う二人の少年が『日本語』で会話を交わしていると言う事だ。
「いや、ほんと可哀想に。その髪型。ああ、俺はそのままでよくて良かったな〜。」
ウラキはアイスノンを器用に受け止めると、それにすがりつきながらあまり可哀想とも思っていない口調でそう続けた。
「可哀想だよ、ああ・・・。これを、80年代ふうに、こう・・・」
クリスは浦城の近くまで歩いて来ると自分の髪を両手で持ち上げた。クリスの白いシャツはいかにも熱くてたまらん、というように前のボタンが殆どはだけてあった。
「バシっとリーゼントにしなきゃならないんだぜ、この『チャック・キース』って役は!」
「だから、可哀想。うん、ほんとほんと。」
「・・・可哀想と思ってねーだろ、お前さ・・・」
西暦2008年、5月。
ここ、アメリカはアリゾナ州の岩だらけの砂漠で、一本の映画がまさに今クランクインしようとしていた。・・・『GUNDAM』三十周年を来年に控え、製作が開始されようとしているその映画こそが、日米合作の『GUNDAM0083
STARDUST MEMORY』実写版、である。
「クリスぅ!あれ!あれじゃねーの、見えて来た!!!」
「ええ〜?」
ガンダム、というのは日本のアニメーション作品である。初代のガンダムが製作されてから既に三十年あまり。それだけの永きの時を越えて、ガンダムシリーズは製作され続けて来た。映画、アニメ、ゲーム、そしてプラモデル。
「・・・うひゃ〜・・・本当に基地だ。・・・ここが、『トリントン』になるんだ。」
クリスがぼそっと、台本を広げながら呟いた。
ガンダムは、アニメであった事もあってもちろん、最初は誰もが理解した訳では無かった。特に、諸外国では日本のアニメの知名度は殆ど無かったと言っても過言では無いだろう。しかし、日本では映画が振るわなくなる代わりに、アニメが伸びた。・・・最初にアメリカはハリウッドのマニアックな映画監督達が日本のアニメを見出した。そうして、そのクオリティの高さに気付くのにそう時間はかからなかった。90年代の中ごろには『ジャパニメーション』という言葉が生まれ、あっという間に世界中に日本のアニメは広がって行った。日本で放映された数年後には、アジアやヨーロッパの子供達が日本のアニメを見るようになったのである。
「廃棄処分になった米軍の基地かあ・・・本当に核、あるんじゃねーの?」
ウラキも、立ち上がりながら言った。もっとも、クリスほど真面目にではなく、台本でぱたぱたと自分を扇ぎながらだったが。トレーラーの群れは今、綺麗に整列しながらその今は使われなくなった基地の脇に止まろうとしていた。
日本の実写映画が廃れたのは逆に良かった。日本では、本来映画に流れるべき人材が、皆アニメに流れたのである。そうして、とても他の国の追随を許さないアニメが作られるようになったのだった。そんな日本のアニメの中でもGUNDAMは明らかに一つのブランドとして、今や世界に通用するネームバリューを持っていた。三十年の間、廃れずに新しいファンを獲得し、生き延びて来続けたのがその証拠だ。普通、技術が進歩すれば過去の技術で作られたモノは魅力を失い、忘れ去られる。しかし、GUNDAMはそうではなかった。
「・・・クリス!行ってみようぜ、あの金網の前までさ!」
そう言うと、止まったばかりのトレーラーからウラキが飛び出した。
「おい!でもかなり距離があるぜ!ウラキったら!」
クリスがそう言ったがウラキは聞いていなかった。・・・熱くて死にそうだって言ってたのは誰だよ。クリスはそう思ったが、自分もトレーラーを飛び出した。
今回、GUNDAM三十周年を記念して『GUNDAM0083 STARDUST MEMORY』の実写版が作られると言う発表は、かなりのファンを驚かせた。何故なら、お世辞にも0083というオリジナルビデオアニメは評判が良くはなかったからだ。映画化した劇場公開版など、興行的に大失敗をきした。・・・だがしかし、突っ込み甲斐があるということは、やり直し甲斐も有ると言う事なんだよ。・・・ウラキの背中を追い掛けて金網に向かって走っていたチャック・キース役のクリストファー・ブラッドフォードは、そんなオーディションの時のプロデューサーの言葉を思い出していた。
「一番乗り!うおー!!」
目の前では、金網に取り付いたコウ・ウラキ役の浦城 直(すなお)が、そう言って振り返った所だった。・・・そうだ。たまたま、ウラキは役柄と同じ名前だった。
「おっせーよ、クリス!」
更に、ウラキとクリスは実は同じ高校の同級生でもある。同じ、下田にあるアメリカンスクールの。そうして、小さい頃から一緒に雑誌のモデル何かをやっていた、いわゆる親友なのだった。
「馬鹿みたいにはしゃいでんじゃねーよ!ガキが!!」
「同い年だろ!」
そう言うと、ウラキはもう一回振り返って金網を見た・・・keep out. 錆びた看板にそう書いてある。・・・風情があり過ぎだ。
「な、クリス・・・いつから撮影始まんの。」
「そんな事も知らねーのかよ、お前・・・」
クリスは少し呆れ果ててそう言った。確かに、こいつはコウ・ウラキという役柄にルックスはぴったりだ。が、如何せんガサツすぎる。そう思ってクリスはウラキの髪の毛を引っ張ってみた。
「何すんだよー。」
ウラキが不服そうに首をぶんぶんと振った。・・・ま、あのアニメのコウ・ウラキという役は性格が極端だ。実際にあんなボウヤな人間は居ないだろう。クリスとウラキが二人セットでオーディションに合格したのは・・・英語が話せたから、というのと、主役だけは日本人から選びたいと言う、日本側の要求からだったに過ぎない。それは、二人とも良く分かっていた。
「あのな、ウラキ・・・これは、チャンスなんだぜ?俺達、これが成功するかしないかでその後の人生が決まってくんの。腐ってもハリウッド映画に出られるんだからさ・・・もうちょっとこう・・・気合い入れろよ。」
「・・・カケてもいい、クリス。」
「なんだ?」
急に真剣な顔でウラキが顔を近付けて来たのでクリスは眉根を寄せた。
「・・・この映画はポシャる!B級映画止まりだと思う!!・・・楽しめ!」
「・・・あのな・・・・」
その時、二人を呼ぶ日本のエージェントの声がした。二人は、大慌てでトレーラーの列に向かって走って行った。映画の中の役柄の19才より、彼等は更に二つも若かった。
「そう言う訳で・・・」
ウラキとクリスの目の前では、監督が椅子に座って数人のスタッフと役者を前に、椅子に座ったままフランクに話を進めていた。
「・・・この監督なんか好き。サンタクロースみたいでさ。」
クリスの耳もとに、ウラキが話し掛けてきた。人の話ぐらいマトモに聞けよ・・・とクリスは思ったが、ま、誰もあまり真剣に話を聞いている様子はない。スタッフは、主に廃棄された基地を『トリントン基地』にする為飛び回っていた。
「ま、撮れる所からとろう。知っての通り、この映画は役者だけじゃどうにもならない。・・・CGが届かないとな。」
監督のエドワード・カーターはそう言うと手を振った。スタッフが散ってゆく。CGが届かないと、というのは本当だ。この映画は、半分以上がCGだ。つまり、モビルスーツというマシンの部分が。フルCGの特撮なのだ。ひょっとしたら、自分達の方がおまけかも知れない。
そうウラキが思っていた時、監督が手招きをした。
「・・・子供達。」
どうやら、自分とクリスの事らしい。そう思った二人は、監督の前に足を運んだ。
「映画は初めてか?」
「・・・そうです。」
二人は英語で返事をした。
「ま、適当にやってくれ。そのうちフィルムは回り出す。台本なんか気にするな。」
そんな訳に行くかよ・・・とクリスは思ったが、ウラキはそうは思わなかったらしい。
「はい!」
そう答えると満面の笑みで笑った。・・・全く得な顔をしてやがる。クリスは思った。中身の性格はどうあれ、ウラキはとてつもなく真面目で素直な・・・ま、そう言えば名前も直というのだった・・・性格に見える。見た目は。見た目だけは!!
「・・・やっぱ、あの監督好きだな。」
トレーラーに戻る途中で、そういうウラキに思わずクリスは言ってやった。
「ゲイだぜ。」
「うそっ。誰が!!」
「あの監督。」
「・・・うそっ!!!気持ち悪い!!!」
ウラキが大声でそう叫んだ。まあ、日本語だったから監督には分からなかった事だろう。
「気を付けろって。そんなんばっかだぞ、ハリウッドは。」
「・・・・・・・うそっ。じゃ、なんだ、俺達もつき合ってみる?」
「あのなあ・・・もういい、寝ようぜ。今日は撮影はしないらしいから。」
「あー、後でさ、お前のトレーラーにゲームやりに行っていい?あの、ガンダムの奴。あれ、おもしろいなー!!!」
「あのなあ・・・・」
製作発表記者会見もなければ、進行表も顔合わせもなし。それがハリウッド風らしい。二人の少年は、そこそこ浮かれていた。
が、次の日も撮影は無かった。二人は呆然と、一晩にして出来上がったトリントン基地とアルビオン格納庫のセットを見上げて立っていた。
「すげえ・・・」
二人は、今日初めて基地の中に入れて気付いたのだが、どうやら中ではずっとセットづくりが行われていたらしい。ロケのトレーラーの
群れが付く前から、先発した美術スタッフによってだ。
「マジですげえ・・・これがハリウッドかあー・・・」
昨日は、楽しむだけと言っていたウラキは、もうセットに夢中だった。二人は今日、なんとなくトリントンの制服を着ていた。衣装を合わせていたら、メイクスタッフが『セット覗いて来たら?動き回ってもおかしく無いか教えてね。』と言ったからだ。
「・・・ガンダム!!の、足。」
ウラキは、もうはしゃいで格納庫中を飛び回っていた。人間と一緒に映るシーンで必要な分しか作られない為、格納庫にはガンダムの膝から下だけがあった。それを喜んでみているウラキを眺めながら、クリスはひょっとしてこいつってはまり役なのかもな、と思った。
「ウラキ!もう行こうぜ!腹減ったよ!」
しかし、クリスは叫んだ。もう、太陽が真上にある。暑いし、今日も撮影は行われなそうだし腹は減るしでトレーラーに戻りたくて
しかたなかった。
「待てよ!もうちょっといいだろ・・・って、こんな台詞確か台本にあったなあ・・・」
ウラキがそう言いつつも、クリスの横に駆け寄ってきた。
「どうせ今日も撮影ないんだろ。」
「ああ。原因は、スタッフの話で分かった。役者が揃わないんだ。」
「役者が揃わない?みんな、一緒のトレーラーで来たんじゃないのかよ。」
ウラキは分からない、という顔をした。例えば、ウラキの相手役のニナ・パープルトン役のジュリエット・クレバーには、昨日トレーラーに乗り移る空港で会っていた・・・クレバーという名前が恥ずかしくなる程、彼女は体だけ立派な女だった・・・頭の中身がちょっと話しただけでもそうと分かる程軽いのだ。B級の体が資本の映画に何本か出ていたのを見た事が有る・・・しかし、ルックスは申し分無く典型的『キンパツ美人』だった。しかも、噂によると神の与えた才能と言うべきか、台詞だけはきちんと言えるらしい。ニナ・パープルトンの役回りに関してはこの映画で大きな改造がなされ、コウ・ウラキとしかつき合わない事になっていた。
「えっと・・・大物が来ないんだとよ。ほら。アナベル.ガトー役の・・・」
「誰だっけ?」
「・・・エーリッヒ・デュロビッツ・フォン・ハイデッケ・フォクトレンダー。」
ウラキと、トレーラーに向かって歩きながら、クリスはため息をつきつつそう言った。
「・・・それ、人間の名前?」
「どーやったら、あんな有名なスーパーモデルの名前を忘れられるんだー!!」
遂に、クリスは叫んだ。
「覚えられないもんは覚えられないんだ、しょうがないだろー!!」
ウラキも負けじと叫んだ。
「そいつのギャラにこの映画の制作費の半分は吹っ飛んでいったって噂も有るくらいなんだぞ!!覚えろ!!」
「分かんねーもんは分かんねーよー!!」
・・・乾いた空の下で大声で叫び合ったらすっとした。二人は顔を見合わせて思わず笑うと、昼飯を食べにトレーラーに急いだ。
噂の『長い名前の男』が撮影現場に到着したのは、更に3日も経ってからの事だった。さすがに、撮影はスタートしていた。・・・本当に気の向くままに、という感じでだったが。この映画は、アニメ版の第1話のエピソードから順に撮っていく事になっている。普通は、映画はこんな撮り方はしないがその辺りが、CGとのマッチングを完璧にする為のこの映画の特色でもあるらしかった。
「・・・何ごと・・・?」
廃虚にされたトリントンでのシーンを撮影していたウラキとクリス、それからニナ役のジュリエットは・・・ちなみに、この女優は本当に演技は上手かった。自分が全く分かりもしない難しい専門用語も、台詞だと言えるのだった・・・思わず建物から飛び出した。・・爆音だ。昨日、この廃虚のシーンを撮影する為わざわざ壊された基地の建物の発破の音よりすごかった。
「・・・ヘリ・・・?」
先に外に出て、空を見上げていたクリスの脇にウラキが駆けて来た。
「なんだよ、あれー!!」
「ヘリコプターだろー!!」
「そんなの分かってるー!!」
・・・どうやら、遂にアナベル・ガトー役の男が到着したらしかった。何も、ヘリで来る事はなかろうに。
「・・・行ってみよう。」
どっちみち撮影は中断だろう。そう思ったウラキとクリスは、基地を飛び出すとトレーラーの脇に着陸しようとしているヘリコプターに向かった。監督や、その他のスタッフももちろんそこに向かっている。・・・これでは、誰が主役やら分からない。とにかく、ヘリコプターが着陸するとドアが開いた。
遠目にも良く分かった。中から、とんでもなく体格の良い男が降りて来る。・・・このくそ暑いのに、しっかりスーツを着ていた。サングラスもかけている。
「・・・エーリッヒ!」
クリス曰く、ゲイのカーター監督がその男に一足早く駆け寄るのが見えた・・・ううん、自分達を出迎えた時とは、偉い違いだ。とにかく、クリスとウラキもその場に到着した。トリントンの制服の衣装を着たままで、人込みに割り込む。
「ふへー・・・あれがスーパーモデルかあ・・・」
「なんでも、これまでどんなに映画出演のお誘いがあっても断って来たって話だぜ?それがなんでまた、こんな日米合作のアニメ原作の映画に出る気になったのか・・・」
二人は、人込みをかき分けて一番前に出て来ていた。・・・近くで見たその男は、なんと言うか・・・本当に圧迫感があった。立っているだけで様になる、と言うのはこういう事を言うんだろうな。とにかく、アニメのアナベル・ガトーには良く似ていた。あんなとんでもない歩くモチベーションみたいな男が、この世に実在するとは思わなかった。銀髪。その髪の長さ。背格好。・・・とにかく、『そのもの』だ。
「すげ・・・おい、ガトーそっくりだよー・・・」
「何間抜けな事言ってんの、お前・・・」
そう答えつつも、クリスも同じ事を考えているに違い無い、とウラキは思った。なにしろ、目が離せない。生き物として人種が違う、この人。
「ああーっ、俺だって背が低い方じゃないのに!」
そう叫んだウラキに、クリスが吹き出した。
「ばっかお前、相手はスーパーモデルだぜ!?パリコレとかミラノコレクションとか、ニューヨークコレクションとかに出てんの!日本で、メンノンに時々載ってた程度の俺達とは違うの!!」
そのかしましい二人の日本語での会話に、どうやら挨拶を交わしていたその男も気付いたらしかった。監督達と一緒にウラキとクリスの方に歩いて来る。・・・二人は思わず言葉を止めた。
「・・・この二人が?」
男のサングラスを外しながらの問いに、監督が答えた。
「ああそうだ。君の敵だよ。コウ・ウラキ役とチャック・キース役の二人だ。」
「・・・・」
ふうん・・・という顔で、男は二人を眺め回した。思わず、ウラキとクリスは言葉が出ずにぼけっと突っ立っていた。・・・目の色まで紫だ!
「・・・役不足じゃ無いのか?言葉が通じなそうだ。」
遂に、その男が監督に一言だけそう言うと、二人に挨拶もせずに横を通り抜けかけた。・・・本当に言葉が通じないと思われているらしい。確かにさっきも、ウラキとクリスは日本語で話をしていた。・・・しかし。
「・・・待てよ。」
何に、かは分からないが、猛烈にむかついたウラキは『英語』でそう立ち去りかけた男の背中に声をかけた。ウラキは母親が香港人で父親が日本人な為、綺麗なクイーンズ・イングリッシュを話す。それがコウ・ウラキらしいというのも、ウラキがこの役に抜擢された理由の一つだった。さすがに男は立ち止まった。・・・そして振り返らないまま言った。
「訂正だ。言葉は通じるらしい。」
そうして、また立ち去ろうとした。・・・ウラキは既にめちゃくちゃ頭に来ていた。・・・何だ、あいつ!スーパーモデルだかなんだか知らないが、人の事をばかにして!主役は俺だ!!
「待てよ!待てったら・・・ええと・・・えっと・・・」
名前が長過ぎて思い出せない。最初はエーリッヒとか言ったな。しかし、ファーストネームで喧嘩を売るのも迫力が無い。
「・・・ガトー!!」
思い悩んだ挙げ句に、ウラキはそう叫んだ。そうだ。役名で呼んだのだ。・・・エーリッヒ・デュロビッツ・フォン・ハイデッケ・フォクトレンダーは遂に振り返った。そうして、嫌みたっぷりな表情で鼻で笑うと近くにいたマネージャーとおぼしき人物に声をかけた。その人物が、鞄から何かを男に手渡す。・・・それは、この映画の台本らしかった。
「『・・・私の相手をするには・・・』」
男はゆっくりと台本をめくると、その目当ての台詞を見つけたらしく小さく笑った。そうして、ウラキに向かってこう言った。
「『・・・君はまだ、未熟!』」
「・・・ウラキ。何お前、いきなり喧嘩売ってんの・・・」
よほど立ってから、クリスがぼそっとそう呟いた。・・・何故と言われても。もう、フォクトレンダーは行ってしまった。
「・・・って、あああああああああ!そうだよなあ!何やってんだ、俺!!??どうしよう、クリス!!!」
「知らねーよ・・・面白いな、お前・・・」
クリスは呆れながら空を見上げた。・・・今日もめちゃくちゃ暑くなりそうだった。
アリゾナの砂漠の片隅で。映画の撮影はまだ始まったばかり−−−−・・・・・。
Planet Shining.第1話、終り(笑)。
うーん、こういうのをまさに、書いている私だけが面白い話と言うんでしょうね・・・(笑)。
マトリックス・リローデットのDVDのメイキング見てたら異様に続きが書きたく(笑)。なりまして(笑)。