(番外編:家庭訪問!!)



2000.06.17.






「さあて、あんた達!今日は、作文を書いてもらうよ!!」
教室に入って来るなり、シーマ先生はそう言った。というか、シーマ先生はいつも威勢がいい。
「さっさと鉛筆と消しゴムを机の上に用意しな!あたしゃトロくさいのは大っ嫌いなんだよ!」
そう言いなら、シーマ先生は何故かいつも持っている扇子をぱしぱし叩きつつ、
机の間を歩き回る。気の弱い子供ならそれだけで気絶しそうな勢いだ!!
しかし、コウ(7才)はシーマ先生が大好きだったので、
急いで怒られないように鉛筆と消しゴムを用意した。
「今日書いてもらう作文はズバリ!『将来誰と結婚したいか』がテーマだよ!
・・・来週家庭訪問があるのはみんな知ってるねえ?それで、この作文を爆弾にしようと・・・
まあ、そう言う訳さ!それよりみんな、親にちゃんと貢ぎ物・・・じゃなかった、茶菓子を
用意するように言っただろうね!?」
子供達は、一斉にコクコクと頷いた。・・・シーマ先生を怒らせたモノは
地獄に落ちるらしい!!・・・地獄ってなんだか知らないけど!!
もちろん、コウ(7才)とキース(7才)も頷いた。コウ(7才)などは、楽しくて
笑い出しそうだった。・・・キース(7才)はそうでも無かったが。
と、にこにこ楽しそうなコウ(7才)にシーマ先生が気付いた。
「・・・なんだい、コウ。質問かい?」
そう言って、シーマ先生がコウ(7才)の頭を扇子で小突いたので、コウ(7才)は
思わず後ろにひっくり返りそうになった。が、しばらく考えてから言った。
「えっと・・・しつもんです。シーマ先生、けっこんってなに?」
シーマは、呆れ果てた顔でコウ(7才)を見た。
「・・・あああ、やってらんないよ!本気で言ってんのかい!キース!教えてやんな、この坊やに!」
キースは隣の机でうげえ、というような声を出した。










「コウ、けっこんってのはさ、およめさんをもらうことだよ。」
キース(7才)はしかたなしに、コウ(7才)に説明を始めた。
「およめさん・・・って、なに?」
「あーもう・・・!おまえ、およめさんも知らないのかあ!?」
キース(7才)は5才の頃には『コウとけっこんする!』と自分が言っていたのも棚に上げて
バカにした顔でコウ(7才)を見た。
「だからさあ、およめさんっていうのは・・・ごはんつくってくれたりせんたくしてくれたり
いろいろいっしょにやってくれる人なんだよ。そういうひとと大きくなったら、みんな『けっこん』するんだ。」
「・・・・それって、おやとどうちがうの?」
コウ(7才)が聞いた。うーん、とキース(7才)も考えた。
「えっと・・・およめさんにはうんとあいしてる人がなるんだよ。」
「・・・・あいしてる・・・ってなに?」
「あーもう!」
キース(7才)は、本当は自分も良く分からないことを説明していたのでだんだん頭が
こんがらがってきた!そこで、超テキトウにこう答えた。
「あいしてるって、うんとスキって事にきまってんじゃんか!」
「・・・うー・・・・・・」
コウ(7才)は、そこまでキース(7才)の説明を聞くと、『だれとけっこんしたいか』と
題名だけ書かれた原稿用紙にむかって考え込んだ。・・・難しい!
これは、難しい問題だぞ!
鉛筆をクルクル回してみる。
しかし、結論は浮かびそうに無かった。コウ(7才)は時間ギリギリまで悩み続けた・・・
そうして、遂に鉛筆を握るとこう書いた。










『だれとけっこんしたいか』
2年1組 うらき こう
ぼくは、大きくなったらガトーとけっこんしたいです。
なぜなら、ガトーはぼくのごはんをつくってくれて、せんたくもしてくれて、
それからぼくはガトーの事がうんと好きだからです。
ガトーはいいおよめさんだと思います。
どれくらいすきかというと、もっているプラモデルぜんぶより好きです。
ガンダムじーぴーぜろわんふるばーにあんより好きです。
これは、ふるばーにあんにへんけいする所がうまく作れなくて
がとーがてつだってくれました。
それで、ガトーはときどきにんじんをしてくれます。
だから、ぼくはガトーとけっこんしたいです。










その日の放課後、コウ(7才)とキース(7才)の通う小学校の職員室には
謎の高笑いが響いていた。
「遂に見つけたよ、ガトー・・・!まさか、コウを育てていたとはね!
この世界の『茨の園』がゲイクラブになったせいで、首にされて
苦渋を舐めること幾年月・・・・遂に!遂にこのシーマ・ガラハウ復讐の時が来たんだよ・・・!!」
あーっはっはっは、と笑い続けるシーマ先生を、恐くてもちろん誰も止められなかった・・・・。










その日、家に戻るとコウ(7才)は、ガトーにお土産の合歓の花といっしょに、『家庭訪問のお知らせ』という
紙を手渡した。ガトーは合歓の花はテンプラにしような、と呟きながら、そういえばもう
家庭訪問の季節か、と言った。
「この花、たべれるの!?」
驚いてコウ(7才)がガトーにそう言うと、ガトーは頷きつつ言った。
「うむ・・・で、コウの担任は誰だっただろうか。記憶に無いな・・・」
ガトーがそう考え込むので、コウ(7才)は元気よく答えた。
「シーマ先生だよ!」
・・・・・・・・・・・・・激しい沈黙。





「・・・何だと!」
沈黙の後、辛うじてガトーは叫んだ。
「今すぐ転校だ、コウ!・・・本当にシーマなのか!あの、シーマ・ガラハウなのか!!??」
「うん・・・?そうだよ。ぼくはシーマ先生すきだよ。
・・・なんで転校しなきゃだめなの?」
そう言われれば確かにその通りだ。・・・しかし、ガトーは柄でも無く
うろたえていた。シーマめ!獅子心中の虫め・・・・!
「・・・・・・・・落ち着け、コウ。」
「・・・・ぼく、落ち着いてるよ、ガトー。」
「そう、そうだな・・・・」
良く考えれば、シーマがコウに勉強を教えたところで何の不都合も・・・・
いや、ある。ガトーは首を振った。不都合はありすぎる!
シーマが、教師という柄だろうか!
そんな、百面相で悩み続けるガトーを、コウ(7才)は面白いなあ・・・と思いながら
見ていた。それから、急に思い出して言った。
「ガトー・・・ぼく、おなかがへったよ。」










果たして、その数日後、家庭訪問の日がやって来た・・・!










シーマ・ガラハウは、隣のキース(7才)の家の後で、コウ(7才)の家にやって来た。
・・・・・・・勝ち誇った笑みだった・・・・!!!
「・・・ガトー。ひさしぶりだねえ。」
「・・・何か用か。」
「家庭訪問だよ。」
・・・二人の間に飛び散る、幾多の因縁と憎しみと確執の火花!
「・・・コウ、キースの所にでも行っていないさい。」
はあい、とコウ(7才)が飛び出してゆき、部屋にはガトーとシーマだけが残った・・・。
「単刀直入に言う。貴様は教師と言う柄では無い!」
「柄と食ってくのは関係ないのさ!今までだってこうやって食って来たんだ!」
ガトーとシーマはいつも平行線だ。本編でもそうだった。
東京の下町の、平家の日本家屋の茶の間で、二人は睨みあいを続けた。
「・・・ともかく、貴様がコウに教えを説けるとは思わん!」
「へえ!いいのかい、ガトー。良く考えても見るんだね、私は小学校の
教師なんだよ・・・・」
シーマはほくそ笑みながら、目の前で苦虫を噛み潰したような顔を続ける
ガトーにこう言った。
「小学校はねェ、どの授業も一人の教師が全部教えるのさ。国語も、算数もね・・・
・・・それから、高学年になったら性教育もだ!」
「・・・・・・・・・・・!!」
ガトーは、相変わらず苦い顔でそれを聞いていた。
「それから、これ。読んで見るかい?この間、コウが書いた作文さ!」
 そう言って、シーマは一枚の原稿用紙をガトーに見せた。それは、シーマ曰く『爆弾』の、
コウ(7才)の作文であった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ガトーは、それを読んだ。既に、完全に沈黙していた。しかし、それはあまり
顔に現れていない。
「・・・・・・それで?」
 遂にガトーがそう言った。待ってました、とばかりにシーマが答えた。
「つまり、あんたも偉そうな顔をしてるけど大してコウを育てるのに成功しているとは
言えないって話さ!それを何だい!私が教師に向いて無いって!?
大笑いだね・・・!大体、『にんじんをしてくれます』ってなんだい?」
ガトーは答えなかった。ただ、本来上官である女の罵詈雑言に黙って耐えた・・・!!
言えない。それだけは、絶対言えない・・・・!!
「・・・ま、いいけどね。これで終ったなんて思わない事だねェ。
そういえば、コウは、給食のにんじんは食べれないんだよねえ・・・・それなのに、
にんじんってなんだろうねえ・・・・」
薄目で、そう言った時のガトーの反応を確認しつつも、遂に、シーマ・ガラハウは座ぶとんから腰を上げた。
「・・・・なんとしてもこの話のレギュラーになってやるよ・・・・覚悟してな・・・!!」
ガトーさんちに、このシリーズ初めてであろうと言う完全勝利の高笑いが響いた・・・。










表の木戸を開けて出て来たところで、シーマ先生は路地で遊んでいた
コウ(7才)とキース(7才)に出くわした。
「シーマ先生!」
コウ(7才)が駆け寄って来たので、シーマ先生はつい顔がほころんだ。
「コウ。・・・ところで質問なんけどねぇ。『にんじん』ってなんだい?」
「えっと・・・?」
そのシーマ先生の質問に、コウ(7才)は返事をしかねた。言っちゃダメだとガトーに言われていたからだ。
そうして、後ろに残して来たキース(7才)を見た。キース(7才)は、何かを
察したのか首をすくめてちょっと遠くで立ち止まったままだ。
「えっと・・・・」
そこで、コウ(7才)はこそっとシーマ先生ににんじんが何かを教えてあげた!










「・・・・そうかい。」
にんじんの正体を知ったシーマ先生は、嬉しそうに笑った。コウ(7才)は、シーマ先生が
大好きだったので、それを見て嬉しくなった。
「何笑ってんだい?」
そういうと、シーマ先生は扇子でコウ(7才)の頭を小突いた。
おかげで、コウ(7才)はまた後ろにひっくり返りそうになった。
その有り様を、ガトーが非常に苦々し気に家の中から見つめていた・・・今にも、激高しそうだった!















・・・暗雲立ちこめるガトーさんち(爆笑)!果たして、シーマ先生はレギュラーになれるのか!!??
・・・っていうか、番外編なのに長過ぎだ(><)!!
どうなる、このシリーズ・・・・!!
とりあえず、管理人は寝るぜ・・・・!!















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