(がとーらぶ姉様に捧げます。読んでから、怒らないでください/笑。)
第4話:上司来襲編:2000.05.01.
「じゃ、これとこれでは?」
コウ(7歳)を目の前に、日曜の午後、縁側で一緒にプラモデルで遊んでやりながら、
ガトーは小さく頭を悩めていた。
「うん・・・こっち。こっちがいい、ガトー。」
コウ(7歳)は、目の前に置かれたザンジバルとサラミスのプラモを見比べて・・・・
そうして、『サラミスの方を』指差した!!!
「・・・何故だ。」
「カッコ良いからー。」
「そうか・・・・。」
ガトーは、天井を見上げた。・・・もう時間が無い。どうしたものか・・・。
実は数日前、ガトーさんちには一通の手紙が届いていた。
『育児休暇中のアナベル・ガトー少佐へ』というのが、表書きであった。
・・・それは、ガトーが所属するデラーズ・フリートの本拠地、茨の園からの物であった!!
手紙には、近日中に貴公の家を訪問する故・・・云々と描かれていた。
上司の、エギィユ・デラーズ閣下からの物だ!!
ガトーは、慌ててコウ(7歳)に聞いた。
『お前は、大きくなったら私と戦うな?』
『うん!ガトーと戦うよ!モビルスーツに乗るの!』
『・・・私と一緒にでは無く、私と、戦うんだな?』
『うん!ガトーを倒せるくらい強く大きくなるの!!』
『・・・・・・・・・・・・・それで良いんだが・・・正しいんだが・・・まずい。』
ガトーが、「自分を倒す敵を一生懸命育てている」と、デラーズ閣下が知ったらどう思われるか!!
コウ(7歳)は可愛いし、元気に育って欲しい。しかし。
ガトーは、何で自分が子育てをする羽目になったか良くは知らないが、これだけは思った。
・・・・・・デラーズ閣下は、きっとそんな生活をお許しにはならないだろう・・・!!
「・・・コウ。これとこれでは?どっちがいい。」
ガトーは、今度はコウ(7歳)にボールとブラウ・ブロを見せてみた。
「ん〜・・・」
悩んだ挙げ句、コウ(7歳)は
「こっち!」
と、やっぱりボールを指差した・・・・ああ!何故だ。モビルアーマーでも、
ボールに負けるとは・・・・!!
とにかく次の日の午後、コウ(7歳)が学校に行っている間に、
遂にデラーズ閣下がガトーさんちにやってきた・・・・!!
なんと、ピンクのロールスロイスでやって来た。
何処からか、リリーナ専用機を借りて来たらしい。
「ガトーよ・・・・」
玄関で出迎えるガトーに、デラーズはこう言った。
「一体いつまで子育てはかかるのだ。皆が、お前の帰還を茨の園で待っておるぞ!!」
「は・・・・」
そう答えつつも、ガトーは(一体この世界の茨の園はどこにあるんだ?)と、少し考えた。
「とりあえず、どうぞお上がり下さい。狭苦しい所ですが。」
「うむ・・・ガトーよ、着物も似合うな。」
「は?」
ガトーはデラーズに褒められたので恐縮に思いつつも、デラーズを茶の間に案内した。
ガトーがお茶を入れる。デラーズが、それを飲む。
かぽーん・・・と、庭から音がした・・・・・と、デラーズが言う。
「・・・・こういう生活も・・・悪くは無いな。」
「は・・・そうでしょうか。」
ガトーは答えた。
「うむ。貴公と二人でだな、こんな家に住むのも・・・・」
「は?しかし、そうしましたらデラーズ・フリートは一体・・・」
ガトーは、デラーズの言っている意味が分からず答えた。
デラーズはうおっほん、と咳払いをした。
「ともかく、そのコウとやらいう子供はいつ帰るのだ。」
「もうそろそろ戻るかと・・・・」
ガトーは、焦りつつもそう答えた。まずい。デラーズ閣下は、必ずコウ(7歳)に、
デラーズ・フリートに来るか?と聞くことだろう。しかし・・・
「・・・ただ今帰りました、ガトー!」
その時、絶妙なタイミングで、コウ(7歳)が小学校から帰って来た!
「お客さま?・・・・初めまして!コウ・ウラキです。」
ガトーの教育が良いのだろう。コウ(7歳)は茶の間のふすまを開けると、
廊下から中には入らずにきちんと正座して挨拶した。
「ぼく・・・いない方がいい?ガトー。」
「いや・・・お前も来い。」
すると、コウ(7歳)は嬉しそうにガトーの脇に駆けて来た。そして、横に
ちょこんと座る。
デラーズは思った。・・・確かに、かわいらしい子供だ。
しかし、何故ガトーが茨の園を留守にしてまで育てる必要がある?
「・・・私はエギィユ・デラーズ。それで、コウ・ウラキ。
君は、デラーズ・フリートに来るのか?」
「・・・・?」
コウ(7歳)は、分からない、という顔をした。
「でらーずふりーと・・・って、何?ガトー。」
そうして、困ったようにガトーに聞いた。・・・まずい!
デラーズ・フリートの事も教えていないと閣下が知ったら、どう思うか・・・!
ガトーは、思わずこう言った。
「あ〜・・・コウ。台所に、おやつが用意してあるから、食べて隣のキースとでも
遊んで来い。分かったな?」
「はい、ガトー!そうだ。これ、今日のおみやげなの・・・」
コウ(7歳)がそう言って、ガトーに菜の花を差し出すのをデラーズは
淡々と見ていた。ガトーは、毎日コウ(7歳)がお土産を持って学校から帰ってくるのを
とても楽しみにしていた。それで、思わずデラーズ閣下がいるのも忘れて
顔をほころばすとコウ(7歳)の頭を撫でた。
「うむ、分かった。気をつけてな。」
「はい!」
コウ(7歳)は元気よく席を立ちかけた・・・と!その時、遂にデラーズが凄まじい勢いで
叫んだ!
「ガトーよ!」
「はっ・・・」
その声に、コウ(7歳)はびっくりして立ち止まった。
「・・・広く物を見よ!・・・貴様が今やっている事はなんだ!」
「こ・・・子育てかと思います、閣下。」
「いや、何を子供の頭を撫でておる、と私は言いたいのだ!何でそんな良い事を、
この子供ばかりが・・・じゃなかった、とにかく明日にでも茨の園に戻るのだ!」
「そんな・・・閣下・・・!!」
「・・・ガトー・・・どっかいっちゃうの・・・?」
デラーズが、あまりの勢いでガトーを怒鳴るのでコウ(7歳)は少し怯えつつ言った。
「いっちゃうの・・・?」
デラーズの顔が恐い。というか、正確に言うと、頭に浮き出た青筋が恐い。
「・・・やだよ・・・だめ・・・ガトーを連れてかないで!!」
が、コウ(7歳)は怯えながらもデラーズの前に立ちはだかった!!!!
一触即発の危機!!
「・・・閣下・・・!!!やはり、ここに・・・!!!」
と、その時ケリィがすごい勢いで茶の間に飛び込んで来た。カリウスも一緒だ。
「茨の園に出勤したら、ガトーの所に行っていると聞きましたので。僭越ながら・・・!!」
神の助けとはこの事だ!・・・でも、出勤って?
「何用だ、ケリィ。」
「は・・・」
ケリィはデラーズの元に歩み寄ると、持って来た一枚の紙をデラーズに見せた。
随分、小さな紙だ。そうして、何かを耳打ちした。
「む・・・」
・・・その間、コウ(7歳)は必死でガトーにしがみついていた。
ガトーがいなくなっちゃったらやだ、やだ・・・!!
「・・・私は気が変わった。・・・ガトーよ。その子供も私が導く。
縄を付けて引っ張ってでも、立派に育てて茨の園に連れて来い。」
「は・・・!広いお心づかい、感謝します・・・」
「うむ・・・帰るぞ。」
デラーズは、何を納得したのか帰っていた・・・良かった。
本当に、大事にならずに良かった・・・・!!
「コウ!」
ガトーは思わず、コウ(7歳)を抱き上げると回してやった。
コウ(7歳)は随分大きくなったが、まだガトーに持ち上げられない程では無かった。
「・・・持つべきものは、友達だろ〜?なあ、ガトー。」
ケリィがにやりとそう言った。
「ほんっとに。一時はどうなる事かと・・・。」
カリウスも、隣で胸をなで下ろしている。
「ああ・・・済まんな。しかし、一体、閣下に何をお見せしたのだ。」
ガトーが、ふと思い付いてそう言うと、ケリィは更ににやりとこう言った。
「コウ(19歳)の写真。・・・それも、俺の家に本編で泊まった時の寝姿。」
・・・・ガトーは思わず絶句した・・・・・・・!!!
「・・・・何ぃ!!??」
「いや〜、しかし、本当に間に合って良かった。ほら、俺とカリウスの家は、早稲田に有るから、
茨の園までも、ここまでもすごく遠いんだ。」
ケリィはさらにとんでも無い事を続けたが、ガトーは辛うじて正気を保った。そして言った。
「コウ!これから先の会話は聞くな!それで、ケリィ!どういうことだ!!」
「どう言うも何も・・・そういうことでしょう?閣下は、十九歳のコウ・ウラキは好みのタイプだと
判断したんですよ。」
「・・・・・・・・。」
ガトーは絶句し続けた。他にどうしろと言うのだ。・・・しかしやがて言った。
「・・・それで良いのか、この世界の倫理観は・・・!!」
「いいんでしょ。だって、ガトー少佐この世界の茨の園が何処に有るか知ってます?」
カリウスの言葉に、ガトーは眉寝を寄せた。
「いや・・・知らん。なんだ。港区か?」
「新宿二丁目だよ。」
・・・・・・ケリィの返事にガトーはこのままコウ(7歳)を連れて、
日本から脱出しようかと思った・・・・。
「ガトー・・・おはなし、終った?」
ちゃんとガトーの言う通りに、耳を塞いでいたコウ(7歳)が、
無邪気にガトーに向かってそう言った。
ガトーは思った。・・・絶対に、コウ(7歳)はマトモに育てようと・・・!!
神に誓った。
・・・てなわけで、第6話、『母の日?編』に続く・・・(笑)。
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