じゅうにがつにじゅうごにち
『コウの日記』
十一月四日 ガトーに電話をした。昨日はありがとうございました、とお礼を言った。ガトーは日曜日は遅くまで寝るから、あまり早く電話をしてこないように、と言った。
十一月九日 明日は土曜日だけど、ガトーはヒマですか、と電話をした。そうしたら、土曜は仕事のことが多い、と言われた。ちょっとヘコんだ。
十一月十日 今日は大学の友人の、キースとドモンと出かけた。そうしたら、ドモンが途中で帰ろうとする。それで、初めてドモンに彼女がいることを知って、俺とキースはめちゃくちゃショックを受けた。……どうしてドモンに彼女がいるのに俺には彼女がいないんだろう……ちなみに、ドモンの彼女は御加村
小雨さんと言って、小雨と書いてレイン、と読むらしい。なんてかわいい名前だろう。女優の小雪ちゃんみたいだ。いつか紹介してほしい。本当はドモンのあとをつけていって顔をみてやろうとしたのだが、ドモンがあまりに怒るのでやめておいた。ドモンは怒ると本当に怖いんだ。ちなみに彼女は、東京女子医科大でお医者さんになる勉強をしているそうだ。……どうして俺には彼女がいないんだろう……(と、えんえんにループ)。
十一月十三日 初めてガトーから電話があった! どうしよう嬉しい。これまでは俺が一方的にかけてばっかりだった。聞いたら、今週末は余裕がありそうだが、お前はなにかやりたいことあるか、という話だった。「特にない」と答えたら、うちに遊びに来るか、と言われた。……どうしよう、凄い!
社会人の友達なんていままでいなかったから、家に遊びに行ったことももちろんない! どうしよう。今からドキドキしている。
十一月十七日 今日は、ガトーの家に遊びに行った。結構な高級マンションで、あと、部屋になんにもないのに驚いた。趣味は? と改めて聞いてみたら、「さあ……」という返事だった。聞いたら、酒を飲むくらいしかしない、言われた。ガトーはちょっと仕事中毒かもしれない。それから、あんまり電話ばかりだとうるさいから、と言って携帯のメールアドレスを教えてもらった。喜んでいいのか、ちょっと微妙なところだと思った。
十一月二十四日 クリスマスまであと一ヶ月だね、とガトーに言ったら、へんな顔をされた。どうやら、前から少し変に思っていたらしい。ガトーは、日本で過ごすクリスマスは今年が初めてらしいのだが、どうして仏教徒のはずの日本人がこれほどクリスマスに盛り上がるのかがわからない、というのだ。それで俺は、日本人はお祭り好きなんだよ、と教えてあげた。
十二月一日 このところ、ガトーは忙しいらしくて、ぜんぜん電話にでてくれない。だから、俺もメールを送っている。クリスマスのことを考えるとちょっとブルーだ。今年も俺には彼女がいないから。つまり、ひとりぼっちのクリスマスだ。それで、急に思いついてガトーにきいてみてみた。ガトーは彼女いますか。……でも、返事が来ない。
十二月十一日 しばらくガトーと連絡がとれなかったのだけど、どうやらどこかに出張に行っていたらしい。彼女がいたらお前となんか遊んでいるか、とひどく怒った返事だった。ガトーはいつも自分勝手だ。……ということに、なんとなく気づいた。
十二月二十日 最近俺はおかしい。……と、自分でもそう思う。クリスマスのことを考えると、いつもガトーのことを思い出してしまう。ガトーとクリスマスを祝いたいのかな、と思ったんだけど、それが既にどうなんだろうなーって思う。クリスマスは、家族とか、好きな人と祝うべきなんじゃ。……どうなの、俺。というか、またガトーと連絡がつかない。また出張かな。俺はあと幾日か学校に行ったら、年末年始休みだ。
十二月二十四日 俺、ほんとにおかしい。……と、思う。ガトーのことばかり考えているんだけど、ガトーとはもう一週間くらい連絡がつかない。そんなことをしている間に、気がついたらクリスマス・イブだった。……ガトー何やってんのかなー。今日は、うちもごちそうだったから、遊びに来れば良かったのに。そうしたらバーベキュー以来だなー。
十二月二十五日 朝起きて、驚いた。……カードが届いていたのだ。クリスマス・カード! 本当は、クリスマスより前に送るものらしいんだけど、うちには何故か今朝届いた。差出人はガトーだ!
それで、俺が浮かれて母さんにそれを言ったら、母さんが「不思議なのよねー」と言った。聞いたら、朝ポストに、新聞と一緒に入っていたらしい。俺は驚いて、朝だというのにすぐに電話をかけてみた。そしたら久々に繋がった。「気がついたか。」とガトーは言う。それから、こう続けた。「忙しすぎて、何も用意出来なかったからな。……昨日仕事帰りに、お前の家のポストにカードだけ入れて帰ったんだ。」
俺は本当に驚いた。……それから、平日だから無理だよね、と思いつつも、今すぐ会いたい、ってガトーに言った。会って、お礼を言いたいと思った。俺はもう休みだった。ガトーは案の定、これから仕事だから無理だ、と笑った。俺は、残念に思いながら何度もお礼を言った。
どうしよう、俺は本当にもうどうすればいいのか分からない。ガトーのことを考えてばかりいる。……年内に、もう一回でもいい、ガトーに会えるだろうか。
2005/11/18 ←書いた日
2008/01/25 ←UPした日
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