「ねぇっ! 海に行こうよ!」
 なんて言い出したのは、もちろんコウで。
「はぁ〜?」
 アムロはおもいっきり嫌だなぁって顔をした。
「お前、今が何月なのかわかっているのかっ」
 と、まるで叱りつけるように言ったのは、やっぱりガトーで。
 だって今は10月で、10月と言えばすでに秋なのに。
「秋の海に何しに行くんだい」
 おもしろがってるのがシャアだった。












文責:しゅうかさん
『バラ色の日々』・・・しゅうかさんに頂きました、なんだか総括編、みたいなしんみりしたお話です(^^)。












 やはり、当然、車の持ち主であるコウが運転手である。
 そこにアムロが、いつものようにナビをしようと助手席に乗り込もうとしたところ、シャアが文句をつけた。
「たまには、ガトーがナビをすればよいだろう」
「ええっ」
 どうやらアムロの隣に座りたかったらしい。せっかくコウにも公認のなかになったのだからと、最近、遠慮というものがさらになくなってきたんじゃないかとアムロは思った。かんべんしてほしい。
 だが、二人がつきあっているからといって、コウは気遣いができるような人間ではなく・・・
「ヤダ! 俺はアムロのほうがいい」
 即答で言いきった。
 思わずむっとするガトー。なんでかは彼自身でもわからなかった。いや、わかりたくなかったのかも知れないが。
運転手であるコウの希望には逆らえず、結局アムロがナビすることになったのだった。

 さて、どこにいくのか。

「静かなところがいい」
 アムロは人ごみや賑やかところは苦手だ。
「きれいなところが良いだろう?」
 シャアは内心Wデートのつもりでいるのだ。
「近いところでよい!」
 狭いのだこの車はっ 後ろにデカイのがふたりだからな。
 ガトーは自分でもよくわからない感情に左右されて、ご立腹である。
「まっかせなさい!」
 コウは、はりきっていた。
 他の3人はちょっと不安になった。

 コウのドライヴィングテクニックやマナー、かけるMDやラジオチャンネルのこと、コンビニでの買出し等々、ささいなことで言い合い笑いあいしながら、車はにぎやかに走り続ける。
 海に向かって。
 それは、長かったのか、短かったのか・・・




「さあっ 海だよっ!」
 車をとめて、真っ先に飛び出したのはコウだった。
「見ればわかる!」
 律儀に言い返すのはガトーだった。
 遅れてアムロとシャアが車から降り立ったとき、ちいさな入り江の海は、少しだけもの寂しい秋の日差しにやわらかく照らされていた。
「4人で来たかったんだよー」
 そういってコウが走り出す。
「待て、コウ! どうしてお前はそう考えなしなのだっ」
 砂浜から波打ち際。そしてそのまま海の中へといってしまうコウを追いかけ、慌ててガトーも海の中に入ってしまう羽目になる。
「やったね、同犯だからなっ♪」
「お・ま・え・は〜っ!!」




 手を引っ張ったり、水を掛け合ったり、相手を引き倒したり。じゃれあうコウとガトーを、シャアとアムロは、眩しいものを見るかのように見ていた。二人で並んで立って。
「やっぱさ・・・なんかお似合いだよね?」
 ほほえましく、ほんの少しうらやましく感じながらアムロは言った。
 やりたいのではなく、できるということにたいして羨ましいのだ、というのはいいわけだろうか。
「ん?」
 煙草に火をつけるシャア。
 なんかさまになってるよな、などど思ってしまったことは、シャアには内緒だ。つけあがるにきまっているから。
「あんた、吸い過ぎだって。なにもこんなところに来てまでそんなに吸わないでよ」
「こういうところだからさらにうまいのだろう?」
「そうかな」
「そうなのだよ」
 見つめあって数秒間・・・シャアの手がアムロの頬に触れる直前、
「・・・じゃなくて。・・・あの二人、さ」
 アムロは視線を海辺にもどした。
「私たちのようにかね」
 逃してしまったことに苦笑しつつも、シャアもコウとガトーを目で追う。
 見てるこちらが恥ずかしくなるほどだな、と思いつつ・・・
 アムロは、自分たちはおにあいなのか?と思ったがつっこまずにおいた。
「ひょっとすると俺たち以上じゃないの?」
「そうだな」
 再び視線を合わせ、ニヤリと笑う。
「そんなこと、聞こえてしまったら、ガトーに殺されそうだがな」
「たしかに」




 見つめあって、笑って。

 穏やかな海。

 心地良い潮風。

 気の合う仲間たち。

 こんな時間がずっと続けばいいのに・・・

 でも、そんなわけはなくて。

 きれいな海だった。

 きれいで・・・

 とても感傷的な気分にさせられて。




「忘れたくないよね」
 ぽつん、とアムロが言う。
 今日の自分はちょっとおかしいだろうと思う。
 たぶん海と楽しそうなコウたちのせいだ、としておく。
 シャアは黙っていた。
 黙って、煙草を燻らせていた
 浅瀬では、コウとガトーがまるで子どもみたいに波と戯れていて。
 それを自分たちはあきもせずに眺めている。
 二人並んで。
 いつものように・・・
 それだけが、何にもかえがたい大切なもののように思えて・・・
「忘れないよ」
 たとえ、オレ達が離れ離れになって別れてしまったとしても。
 すべて、覚えているから。
 絶対に。
 そんな風に思った。
「この海の向こうに。あんたの国があるのかな」
 沖をはるかに望んでも、見えるのは水平線に浮かぶ船と、雲と、打ち寄せる波の飛沫だけ。
「向こうではないだろう。大陸がじゃまをするのだから」
「その言い方・・・夢がないよね〜」
 軽い、単なる思い付きで言ったつもりだったのに。
「夢?・・・ちがうだろう」
 思いのほか真摯な口調に黙らされる。
「何を不安がっているんだい?」
 まだ残っている煙草を携帯灰皿でもみ消して、シャアはアムロと向き合った。
「まるで、別れ話をされている気分だよ」
 思いがけない言葉だった。
「そんなつもりはなかったんだけど。そう?」
「自覚がないんじゃ、よけいに性質がわるいな」
「・・・・」
「卒業して離れ離れになるとか、私たちが帰国するとか、そんなこと考えていたんだろう?」
 確かに・・・
「卒業まであと2年半あるんだ。今、考えることかい? なんなら日本に残って仕事に就いたっていい」
「シャア・・・」
「先はまだ長いんだ。今から別れることなんて考えてくれるな」
 言いながら、自分でも先走りすぎてるとシャアは思っていた。
 アムロはそこまで考えていなかったかもしれない。そう思っていたのは自分の方かもしれない。
 シャアはそっと手を伸ばしてアムロの頬に触れる。
 二人して、キスをしながら、幸せで泣きそうになった。
 なんて感傷的なんだろう・・・
 きっと、海のせいだ。

 互いに、そう思った。 




 ひとしきり騒いだ後、ようやくコウはガトーにひっぱられて海からあがってくる。
「アムロー!」
 びしょ濡れの二人が手を振りながら戻ってくる。
「ホンとに、子どもみたいだな。君たちは」
 あきれたように言うのはシャアで。
「私をコウと一緒にするな」
「なんでだよ!」
 二人は同時に反論し、またケンカになる。
「いや、そっくりだね」
 笑いながら、アムロが言った。




「クシュンッ」
 小さくくしゃみをしたアムロに視線が集中する。
 隣からふわっと暖かいものが肩にかけられる。
 シャアの上着だ。
「着ていたまえ。風が冷たくなってきた」
 それはシャアの体温で暖かかった。
「あんたは?」
「君ほど弱くはないさ」
「確かに」
 重々しく同意するのがガトーで。
 コウは、なんかいいよな〜、なんて思ったりもして。
「どうせっね!」
 アムロは、労われるのもうれしくて、すねてみせたりなんかもする。

これもいつもの風景・・・

「さて、帰るぞ。風邪をひく」
 コウもガトーもびしょ濡れだし。
 並んで歩くシャアとアムロの後ろを、コウとガトーも並んで歩く。
「やっぱさ。よくわかんないけどさ。なんか似合ってんだな。二人はさー」
 そんなコウの言葉を、シャアとアムロは聞こえない振りをした。自分たちが、彼らに対し同じことを思ったことは内緒だ。
 ガトーは、同感だが口にするのには抵抗があると思ったので、黙っていた。




 振り返ると、空が夕日色に染まっていく。

 この海を見に来たことは、きっと忘れない。

 海を見るたびに思い出すだろう。

 今日のことを。

 そして・・・4人ですごした日々を。

















(2002.10.09)




■コメント■

こーらぶ様
いつもお世話になってますv 
実家&職場が近いという好条件にめぐまれ(笑)親しくさせていただけて、とても幸せです。
このたびはこのような機会を与えてくださり、ありがとうございました。
が、日ごろのご恩をあだで返してしまった気がしてなりません・・・
このような話になってしまってすみません m(_ _)m
コウ(&ガトーさん)が全然目立ってなくて、ホントにすみませんっ
所詮わたしはアムロFanなのです(^^;
そして、微妙に(というかあからさまに?)ばらいろの4人ではない気もしてしまうのですが。
初めて書いたG話だったので、なんてのは言い訳ですか?ですよねー
ばらいろ設定は楽しかったけど難しかったです。(本編ものの方が楽だったかな〜なんておもったりも/笑)
それで、いつもの自分の文章とは違う感じになって、ちょっと発見をした気分です。ふしぎ〜
機会があったら自分のトコロでもGにチャレンジ・・・できるかな〜
やっぱ読むほうがいいので。これからもがんばってください。
たのしみにしていますv
















2002/10/10




しゅうかさんは地元のお友達です(笑)。
御本人も書いてらっしゃいますが、実はガンダムを書いている方ですらありません(笑)。
(あゆむさんも、宇宙世紀ではないんですが、でもウィングだから一応ガンダムの方で・・・・)
ってことで、今回一番無茶なお願いをしてしまったのがしゅうかさんだったかもしれません(><)!
すいません、しゅうかさん、でも書いていただけて本当に嬉しかったです・・・・!!

なんだか、このしゅうかさんのお話を受け取って読ませていただいたときに、不思議な気分になりまして。
ええと、今回落ちたわたしの「ゆうやけをせおって。」という話なのですが、エピソードは違うのですが、
なんというかこういう雰囲気の作品を考えていたのです(笑)。
それで、そっちは落ちたんですが(笑)、ちょうどこれを頂いていたのでトリにアップさせていただこう・・・と。
しゅうかさん自身もほんわかされた方なのですが、やさしいかたり口調のお話で、詩のようで、
ほんと、ひたることが出来ました。素敵なお話をありがとうございますー。

へんな表現なんだけど、エンディングみたいな話かと思うんですよねー。それも、映画とかの、
本当に終わってしまうのでは無くて、アニメとかの(笑)、CMはさんで「次回予告!」が
はじまるやつ(笑)。そういう区切りっぽい、総括っぽいはなし。

しゅうかさんが、まさにばらいろを読んで思っていたんだろうなあ、っていう世界を、
書いて、読ませていただくことが出来て、本当に良かったです。ありがとう!
今度また、焼き鳥でも食いながら飲みましょう〜〜〜(^^)。
(はっ・・・・彼氏も焼き鳥の話してたな、焼き鳥ばっかか!私は/笑)










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