アムロがさっきからあくびばかりをしている。ふわぁあ〜あ、という大きな声と共に伸びては、また丸くなる。その繰り返しだ。本当にネコになったかの様だ。
「・・・なんだろうな、」
「ゲームじゃないか。・・・ゲームのしすぎで寝不足なんじゃないのか?」
コウとシャアは日当たりのいい中庭でガトーがやってくるのを待ちながら、そんなアムロを眺めていたのだがついついこちらにもあくびが移ってくる。
「・・・あっ、」
「俺もだ、俺もあくびでちゃった・・・!」
すると、そんな二人を見てアムロが眠そうな顔でこう言った。
「・・・なんだよ、二人も眠いのか?・・・俺、もう超眠いんだ、どうしよう俺って、このままあくびのしすぎとかで・・・」
そこでアムロはもう一回伸びる。
「あくびのしすぎとかで・・・・死んでしまうんだろうか。」
「・・・・・・そりゃないだろ。」
コウはとりあえず言ってみた。
「あくびのしすぎとかで、ふつう人は死なないだろ?」
続けてシャアも言った。
「・・・・だから大丈夫だよ、あくびちゃん。」
「・・・・・・・・・・・・」
三十秒くらいたってから、コウはやっと気づいた。
「あっ!・・・・今のって・・・今のって、のろけ!?」
「なにが。」
当のシャアの方が分らないような顔をしている。
「だから・・・・『あくびちゃん』とかアムロのことを呼ぶの・・・それ、のろけじゃないんですか!」
「あくびちゃんはハクション大魔王に出てくる女の子の名前だ。」
シャアはしらじらしくそんなことを答えた。・・・ウソっ、絶対のろけだ!コウは勝手に顔が赤くなった。三十秒くらい遅かったが。アムロはついにこっくりこっくり、舟を漕ぎ出した。ガトーが今すぐやってきて、全員を起こしてくれないと、俺達の舟は沈没してしまうかもしれない!!コウは焦った。・・・恥ずかしい!なんて恥ずかしいんだ!『あくびちゃん』だって!
「・・・だって、誰も俺のこと『コウちゃん』とか呼んでくれないし・・・!」
「どこへ旅立ってるんだ、コウくん。」
シャアが呆れてそう呟いたところへ、ぬっとガトーが登場した。アムロはもはや完璧に寝ていた。
「・・・また下らない話をしているな、お前達?」
「ああ、ちょうどいいところへ。頼むからコウくんを『ちゃん付け』で・・・・」
「・・・やめてくださいよ!!」
アムロが半分眠ったまま引き摺られながら学食へ向かったのも、コウがガトーに『ちゃん』付けで呼んでもらえたのかも、
それはまた別の話である。
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