作者註:えー、皆様お気付きかと思いますが、実を言うとこの話は「成立しません」(笑)。というのもですね、厳密には一回も書いていませんが、
「ばらいろのねがい。」という話を読む限り、どうやらこのシリーズは2000年頃のお話らしい(笑)。しかし、今は2002年ですね(笑)。
だからといってワールドカップが別の年にあったことには出来ませんし・・・・コリャマイッタ(笑)。
というわけで、目次のタイトルにも()が付いていたりしますが、まあオハナシですので(笑)、軽く楽しんでいただけますと嬉しいです(笑)。
なお、この小咄のお題(ネタ)は、ヒナちゃんとがとーらぶ姉様にいただきました。どうもありがとう!!




2002/06/23 初出

 ばらいろ小咄。『フーリガン!』

 

『た・・・・たすけて・・・・・』
 自分にかかって来たあまりの電話の内容に、コウはさすがに寝転がっていた居間で携帯片手に飛び起きた・・・・それはとある六月十一日の平和な午後のこと。
「・・・・どうした、アムロ!!!死ぬな、腹が減ったか!?・・・頑張るんだ、耐えろ!!・・・・だってまだ俺の子を産んでいないじゃあないか・・・・・・!!!」
『いや、それは永久に産まないけど、でもたすけて・・・・!!!後ろから読むと テ ケ ス タ・・・・・ってネタ、ドラえもんにあったよな?』(註:アムロはドラえもん『ドラえもんのび太と魔界大冒険』という映画のことを言っています。)
 その日は平日の火曜日で、実に珍しいことに、コウは自分のマンションにガトーとたまたま二人でいるところだった。理由は簡単である・・・・今はFIFAワールドカップが開催中で、そうして午後の授業が無くて、部活動の練習も無くて、更にコウの家だけがスカイパーフェクTVを見ることが出来たから!である。日本は今回韓国と共同で開催国だと言うのに、フランスの命運を決めるフランスVSデンマーク戦、それが何故か、スカイパーフェクTVでしか拝めなかったのだった。
「つーか、真面目な話、今どこにいんの。」
『えー、駅・・・・・三条の・・・・から出て、コウの家向かってるところ。』
「あ、それちょうどいいね!ガトーもウチにいるんだ、ほら、今日ってフランスVSデンマーク戦だろ、それでさ、一緒に見ようかって・・・・・」
『それが問題なんだ!!!』
 そこで、何故かアムロからの電話は雑音と共に途切れがちになる。思わず、コウは自分の家の台所で(勝手に!)軽食の用意をしていたガトーの方を仰ぎ見た。
「・・・・あー、もしもし?アムロ?・・・・・ゴメン、俺、話が読めない・・・・」
『だから・・・・!!!たすけて、俺の隣に今フーリガンが・・・・ぎゃあああああ!』
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 そこで、本当にアムロからの電話は途切れた。コウは、切れた電話をしばらく片手に持ったまま黙り込んでいたが、やがておもむろにガトーにこう聞いた。
「・・・・なあ。シャアさんて、凄くサッカ-好きなのか?」
「・・・・というような話は、聞いたことが無いな・・・・・」
 ガトーは気の早い麦茶をコップに注いで、それを持って居間に入って来ながらそう答える。・・・・えー。・・・・六月に麦茶。それを、こくこく飲みながらコウは考える。でも、アムロ助けてって。・・・・えー。
「・・・・なあ。ガトーはフーリガンじゃないよな?だいじょうぶ?」
「・・・・というような話も、聞いたことが無いな・・・・・」
 それだけ会話を交わすと、ガトーとコウの二人は、とにかくシャアとアムロ二人の到着を、部屋で待つことにした。



「・・・・だから、あんたオカシイって!フランスVSセネガル戦あたりから!!」
 飛び込んで来たアムロの第一声はそんな言葉であった・・・・見ると、必死に手を振って、シャアを追い払おうとしている。
「ひどいと思わないかい・・・!私はまったく、フーリガン扱いだよ!」
 続いてコウのマンションに入って来たシャアは、いつもと変わらず曖昧な笑みを浮かべる、表向きにこやかな人間にコウとガトーには見えた。ところが、アムロがこう言う。
「・・・・だってさ!ホントに変なんだ、シャアが、この間から・・・・・!!」
 よくよく話を聞くと、シャアの調子がおかしいのは、この間のフランスVSセネガル戦でフランスが大方の予想を見事に裏切って思いきり負けてかららしい。その試合を、見ていたシャアがいつの間にやらフランス語しか話さなくなったのだとアムロは言った。
「そりゃあまあ、自国の応援をするのだ・・・・フランス語しか話さなくもなるだろう、それは?」
 ガトーがそう言いながら、台所から追加の麦茶と、それから簡単な食べ物も持ってくる・・・・おお!見れば、テレビはそれぞれの国の選手が、ピッチに入場する場面を放映している場面だった。イイ感じ!自分は体育の授業でくらいしかサッカーはやったことは無いものの、まがりなりにもスポーツをやっているし、必死に誰かが戦うのを見るのは大好きだ!・・・と思いつつ、そうして振り返ったコウは信じられないものを見た。



 ・・・・ええっ、国歌が歌えるよこの二人!!



 シャアとガトーの二人は、フランス人選手達と共に、『ラ・マルセイエーズ』を歌い上げたところだった・・・・アムロを見ると、ほらな!と言った調子で首をすくめている。・・・・すいません、俺「君が代」まともに歌えません!そう思った矢先に、アムロがその後のシャアの状態を話しだした。・・・・・ホイッスル。試合スタート!!



「・・・・それで、シャアさんどうなったって?」
「いや、今回ジダンとか前の二試合欠場してたじゃん・・・・なんかよく分からないけどフランスヤバいらしいじゃん・・・」
 コウとアムロの二人は、怪しい雲行きを感じとって思わずヒソヒソ話しで会話を続けていた。・・・・いや、見てます。試合も見てます、きちんとフランスの応援をしてます!なんとなくそんな気分である。ちなみに、フランスはこの試合で三点以上の点差を付けて勝たないと、リーグ戦での敗退が決定する。つまり、先に進めない、ってことだ。・・・・・二人は何故かどんどん小さくなりながら、会話を続けた。・・・・やばい。なのに試合はデンマークが押してるよ!!
「フランス語しか話さなくなる。・・・・その上、悪態を付いて転がる、暴れる!!!・・・・あああっ、俺は恐ろしいものを見てしまったよ・・・・!!!」
 その時、観客(って言っても四人)全ての期待を裏切って、デンマークがゴール!!!
「・・・・・!!」
「・・・・あっ、暴れないで・・・・!」
 恐ろしいことに、全く興味が無さそうだったガトーですら、もはやサッカーを見ながらフランス語しか話さなくなり、テレビに向かって大歓声を上げたり、腕を振り上げたり、罵声を飛ばしたりしているのであった・・・・・・・・アレ、何だったけか。そうそう、アディダスの、『サッカー狂症候群』っていうCM。何故か、コウは手を振り上げる二人のフランス人を見て、そのCMを思い出していた・・・・・・あのCMも怒鳴っているバージョンがあるんだ、トルシエ監督が、芝刈りをしている人に向かって、フランス語で、ひたすら、ひたすら!!・・・・・恐いっっっ!コウとアムロの二人は思った。もはや二人に分かるのは、時々聞こえてくるノーン!という嘆きの叫び声ばかりである。コウは思わず観戦の為に買った雑誌を開いて、そうしてシャアに質問してしまっていた。
「・・・・13番!」
「シルヴェストレ!ミカエル・シルヴェストレ!」
「20番!」
「ダヴィド・トレセゲ!」
「17番!!」
「エマニュエル・プティ!・・・・コイツちょっと、ガトーに似てる!!」
「・・・・・って、めちゃめちゃ詳しいじゃないか、シャアさん!!」
「だから言っただろ、俺の隣にフーリガンが、って!!・・・・でさ、シャアったら八つ当たりなんだ、日本が調子いいからって!!明らかに!!日々、普通に生活してるかと思うだろ?かと思ったら、時々急にフランス語でぶつぶつ呟いて・・・それから、暴力、暴力!!」
「いやだそんなのー!!!」
 日本人二人の祈りも空しく、デンマークまたしてもゴーーーーール!!
「・・・・・・逃げる?」
「・・・・って、何処へ!!」
 思わずコウとアムロの二人は手を取り合って、部屋の片隅に避難した。・・・・いやだ死にたくない!!



 ・・・・・善戦空しく、フランス代表チームは一次リーグでの敗退が決まった。・・・・いや、だから恐い!!二人の、しかも生っ粋のフランス人と一緒に、の観戦は、本当にコウとアムロにとって恐怖でしか無かった。・・・・たった今、試合は終了。二人のフランス人は、まだ肩で息を付いている・・・・だから!
「・・・・・って、ぎゃーーーーー!!俺が悪いんじゃないってーーーー!!た、たすけてーーー!!!」
 試合の興奮覚めやらぬシャアが、まずアムロに飛びかかった。・・・・フーリガンだ!!軽く殴る、蹴る、とにかく小突きまわす!!ここ、六本木じゃないのにフーリガンだ!!コウが、そう思って恐怖する間も無く、そんなシャアにつられたのか、ガトーが思いきりコウに飛びかかって来た。
「***********!!」
「*****ーーーーーーーーーーー!!」
「・・・・・ぎゃー!!!せ、せめて日本語話してっ・・・・悲しいのは分かった、分かったから!!」
「待って、俺デンマーク人と違う~~~~!!!」








 それから数日間、ガトーとシャアというフランス人二人が、妙に殺気立っているような気がしてコウとアムロの二人が微妙に声を掛けづらかったのは言うまでも無い。いや、コウこそ知らないのだが、なまじ不思議な距離感で付き合ってしまっている、平たく言うと寝ているような関係のシャアとアムロがベットの中でどんな会話をすることになったやら!想像するだけでも恐ろしい。・・・・・ともかく、








 --------日本戦は明日、である。









 ・・・・その時今度は、コウとアムロの二人が、どうなってしまうのか、ガトーとシャアの二人はまだ知らない。

   











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