2000/12/18 初出

 ばらいろ小咄。『しようよ』

 シャアとアムロは、その日盛大に喧嘩をした・・・いや、なんで喧嘩をしたかって、それにはそれなりの理由があるのだが、わざわざ痴話喧嘩を聞かされて楽しい人間もそんなにはいないだろうから、ここで話すのはやめておく。
「・・・・シャア、寝た?」
 アムロがそうベットの中から呟いたが、返事は無い。シャアはどうやら寝ているらしかった。このフランス人は、行動はあくまでスマートなのだが(特に女を口説くスピードなんてめちゃくちゃ早ぇ!)寝ている時とセックスしている時だけは非常に態度が尊大だ・・・それはともかく。
「・・・寝てるな?」
 ここは大学生のアムロの、ワンルームマンションであった。シャアがこの部屋に入り浸って自分本来の家である留学生会館の部屋に戻らなくなってからもう1年以上が経つ。・・・1年だってさ!アムロは思わず、掛け布団を引っ張り上げながら首をすくめた。十二月の初めの京都の気候が寒かったからでは無い。我ながら呆れたからだった。・・・男と付き合い始めてもう1年!・・・俺も男なのに!!
「・・・・シャアってば。」
 返事が無い事は分かっていたが、アムロはもう1回そう声をかけてみた。今、シャアはアムロの小さな部屋に無理矢理作られたコタツに入って、小さくなって寝ている。つまり、アムロのベットの下の床の間にだ。・・・・俺がそっちで寝れば良かったかな。アムロは一瞬そんな事を思ったが、すぐさまシャアと喧嘩をしていた事を思い出して首を振った。ちなみに、アムロの部屋にはついこの間までコタツなんかなかった。それは、シャアが粗大ゴミの回収場所から拾って来たものなのである・・・が、これはまた別の話。
「しゃーあー・・・・」
 言いながら、アムロはふとんから片足を出してみた。・・・届く。もともと狭い部屋なので、ベットとコタツもそうたいしては離れていなくて、アムロがベットから出した素足の右足は、簡単にシャアの頭に届いた。思わず、そのまま軽く蹴飛ばしてみる。
「んー・・・」
 シャアはちょっと唸ったがやっぱり起きなかった。身長百八十cmを超える男が、コタツに無理矢理もぐり込んでいる様も笑えると言えば笑える。アムロは、思わずそのままシャアのほっぺたも、裸足の指でつついてみた。
「・・・ひひひ。」
 ちょっと面白い。調子に乗ってアムロはシャアをつつき続ける・・・・・と。





「う、ひゃ・・・・!」
 驚いた。・・・寝ているかと思ったシャアが急にアムロの足を掴んだのだ。アムロは慌てて足を引っ込めようと思ったが、間に合わなかった。





「わ、やめ・・・っ!」
「・・・・・・・おかえしだ。」
 そう言って、シャアはかたっぽだけにょきっとベットから飛び出したアムロの足をちょっとひっぱる・・・・うっわ、いつから起きてたんだこいつ!アムロは焦った。そして、その不安は見事適中して、ひっぱるくらいならいいのだが、シャアはアムロの足を面白そうに撫でたりへんな感じで触ったりしはじめる。
「やめろって!やめろってば!」
「やめないー。」
 狭いワンルームマンションの中で、喧嘩をしてわざわざ別の所に寝ていたと言うのに、ついにシャアは面白そうにアムロの足をなめた。思わずアムロの口から変な声がでる。
「・・・・っ、わーーーー!!!・・・だっから、シャア・・・・っ!」
「なんだ?」
 面白そうに、それでもアムロの足を触り続けていたシャアがそう言う。・・・・あー。失敗だった。こんなやつ、やっぱ放っといて寝れば良かった。・・・ちょっと泣きそうになりながらアムロは結局言った。





「・・・・・・・・・・・・・・・・しようよ。」










 そんなわけで、二人は喧嘩をしてはずなのにやっぱりセックスして、同じベットで寝る事にした。・・・冬ってば、まったく寒いから最悪だ。・・・人とかにやったら触りたくなっちまう・・・と、アムロは悔しいからそう思うことにした。

   




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