「……完了!」
 アストナージがそう言いながら最後のパネルを閉じた。
 次の瞬間、辺りに居た整備班のメンバーから雄叫びが上がり、格納庫はしばし騒然となる。
「……ありがとう、アストナージ。」
 自分も整備に参加していたアムロは右手を上げた。
「まあな、俺だけの力じゃ無い。」
 機械油で少し汚れたその右手に、 アストナージは軽くハイタッチをして、それから自分の部下達を見つめる。
「殆どが特注パーツのリガズィをこれだけ早く修理出来たのは、素早く納品をしてくれたアナハイムエレクトロニクスと、それから……『優秀な整備班一同』のおかげだ。」
「もちろん、皆にも感謝してるよ。」
「へえ、なんかご褒美でも出るのかよ。」
「それはブライトに聞いてくれ。」
 笑いながらアムロは格納庫の壁際にある通信パネルの方に流れていった。
 0091、十一月頭。
 ……ついに、先の『地球降下作戦』で破損したリガズィの修理が完了した。



『はい、こちらブリッジ。』
「アムロ・レイ大尉だ。……ブライトはいるか?」
『艦長に繋ぎます。』
 通信パネルに取り付いたアムロは、艦橋のブライトに連絡を入れる。
『ブライト・ノア大佐である。』
「俺だ。」
『何だ。』
 モニターに映るブライトは、なにやら書類をチェックしている所のようでこちらを見向きもしない。
「全艦放送の使用許可を。」
『……許可する。』
 そこでアムロはブリッジにいるオペレーターにもう一回話しかけた。
「アムロ・レイ大尉である。……全艦放送を。」
「アイサー。……回線開きました、どうぞ。」
 アムロは一つ咳払いをすると、格納庫から全艦に向けてこう言った。



『……旗艦作戦士官の、アムロ・レイ大尉である。ロンド・ベル艦隊の全作戦士官、及び全モビルスーツパイロットに告ぐ。……作戦士官は現時刻を持って通常の任務を解除。エリア32に、演習用トラップをレベルSSPで展開せよ。……全力で罠を張れ。』
 その日、ロンド・ベル艦隊はサイド1宙域で通常の監視任務に付いており、まあ殆ど全ての乗員が暇を持て余していた。……宇宙は凪いでいた。
『全モビルスーツパイロットに告ぐ。……モビルスーツ訓練用シュミレーションのステージ4で、イチサンフタマルまでに最高のスコアを叩き出せ。そしてその結果を、俺にメールで提出しろ。……リガズィが直った。』
 何を言い出すんだろう、と興味津々で格納庫の整備班連中はそんなアムロの後ろ姿を見つめて居る。
『……リガズィが直った。……だから、シュミレーションの成績の一番良かったパイロットを、』



『試運転の時に俺の後ろに乗せてやる。……以上!』



 一瞬、艦隊中が沈黙に包まれた。……そして、次の瞬間には蜂の巣を突ついたような大騒ぎに陥った。



「……聞いたか、今の!」
「他艦からの通信が殺到しています、ラー・チャター、希望者三名、ラー・キエム、希望者四名……」
「どこの! ……だから、どこのパイロットまでその資格はあるの、」
「大尉と二人乗り出来るんだろう?」
「ちょっと! 『ロンド・ベル艦隊』のパイロットだけですよね、資格があるの! なんかもう既に、第四軌道艦隊全てに情報が流れてるみたいなんですが……!」
 その、あまりに騒々しいオペレーター達の様子に気づいて、やっとブライトが顔を上げた。
「何の騒ぎか。……状況の説明を。」
「……って、聞いて無かったんですか、艦長! 今の全艦放送!」
「ああっ、俺がパイロットだったら絶対挑戦したのに!アムロ・レイ大尉と二人乗り出来るんだろ……!」
「アムロと二人乗り?」
 ブライトが聞き直した。
「アムロと二人乗りか?」
「そうですよ! ……大変なことになってますよ!」
「私は嫌だ。……頼まれてもそんなことはしない。見ているだけでも目が回るんだぞ。……あんなものに乗ったら生きた心地がしないに違い無い。」
「……それは確かにそうなんですけど……」



 格納庫にはケーラが顔を覗かせていた。
「……大尉! 何ですか、今の放送。」
「言った通りだよ。……アストナージ、そう言う訳なのでサブシートの設置、ヨロシク。」
「休む暇も無いとはこの事だな……。」
 溜め息をつきつつも、整備班の連中は面白そうにリガズィの調整に入る。
「……あのね、大尉。」
「なんだ、中尉?」
 アムロは無重力の格納庫の中に、入口から流れて来たケーラの腕を捕まえた。
「……さっきの、シュミレーションでハイスコア出したら……っていうのなんだけど。私も参加出来るかなって聞きたくて。」
 ……呆れた。……でもまあ、ケーラも『モビルスーツパイロット』には違い無い。
「ケーラだったら、いつでも後ろにくらい乗せてやるよ。」
「本当!?」
「……大尉、それは俺の女だ。」
「知ってるさ。」
 これ以上格納庫に居たらアストナージにスパナを投げ付けられそうだったので、アムロは部屋に戻る事にした。



 途中、医務室の前を通ると船医に「リガズィってのは大変な病気だったようじゃのおー。」と言われる。まあね、でももう直ったよ、と伝えて手を振った。
 食堂の中を抜けると料理長に「直ったリガズィに、特別メニューはいいんですか!」と言われる。リガズィは飯を食わないよ、と丁重に断って中を通り抜けた。



 ……一番盛り上がっていたのは、実は砲列甲板だった。
「……来たぞ! はいよ、こちら砲列甲板!」
 副官が通信機を構え、手前のテーブルではアリスが紙を広げ、チビた鉛筆を舐めながら取りまとめをしている。
「どこだ。」
「……機関室です。」
「教えてやれ。」
「……胴元はアリスの親父だ! 掛け金は一口500!」
 アリスタイド・ヒューズ中尉の後ろでは、砲列甲板の若手が鈴なりになってその手元を見つめて居た。……砲撃の手腕を学んでいるのでは無い。……違法な賭けに熱中しているのだ。そしてその手腕を学んでいる。ここから、この砲列甲板から、次の艦隊を(ある意味で)担う連中が育つのだ。
「今現在の一番人気は、誰か、って。」
「ウェインだ。……旗艦のウェイン少尉。まだ若いが、負けず嫌いで腕も立つ。次がキエムのハシム少尉。次がチャターのリー中尉。それでその次が……大穴だな、ケーラ・スゥ中尉だ。」
 副官が通信機越しに内容を伝えた。すぐに、機関室の連中の返事が届く。掛け金が上乗せされ、オッズが書き換えられる。
「……へっ、久々に面白くなって来やがったぜ……アムロ・レイってのは、なかなかやるな!」
 そう呟くアリスの顔は嬉しそうに微笑んでいる。胴元はボロ儲けだからなのか、リガズィが直って嬉しいからなのか。
「……お祭りですね、アリスの親父!」
 若手の一人がそう叫んだ。……その通りだ。アリスは思った。
 ……艦隊の日々が、楽しいに越した事はない。そして実際楽しい。……だから俺は軍人をやっている。



「……何の騒ぎだ?」
 同時刻、ラー・カイラムの左舷デッキに一隻の運搬用ランチが横付けされたのだが、あまりの騒ぎに誰もがそれに気づいていなかった。……留守番だった伍長が一人、荷物に気づいて格納庫に出たのだが、何故かランチは荷物を所定の場所に置いてゆくだけではなく、人が降りてくる。
「……お疲れさまです!」
 降りて来たのが通信兵などではなく士官だったので、伍長は慌てて敬礼をした。
「やあ、お疲れさま。……それで、何の騒ぎだ?」
 降りて来た士官はもう一回そう聞いた。
「すいません! 自分は、荷物が届いただけかと思っておりまして……」
「実際、荷物を届けに来ただけだよ。通り道だったので、ついでに。」
 そう言って彼は、手に持って居る封筒をヒラヒラとさせた。
「……艦長に、頼む。」
「アイサー! しばらくお待ち下さい。」
 伍長は通信パネルに飛んで行った。……残された士官は、しばらく首を傾げて「……あれっ? だからこれは、一体何の騒ぎなんだ……?」ともう一回、呟いた。



「……一人一回! 一時までなんだから、何回も使ってる隙無いだろ!」
 モビルスーツの操縦シュミレーターの前には、どの艦もちょっとした行列が出来ていた。……パイロットだけ、とアムロ・レイが言ったにも関わらず、皆がやる気になってしまって仕方なかったからだ。
「……っしゃああ!」
 威勢の良い声を上げて、シュミレーターを飛び出して来たのはサットン・ウェイン少尉だった。
「少尉! 少尉のスコアは!」
 本来ブリッジに居なければならないはずの通信兵の一人が、我慢出来ないらしく声をかける。
「……六十八機!」
 ……それを聞いて、行列の人数が少し減った。……本来は三十くらいが標準アベレージのステージだ。ウェイン少尉は、確かに腕が良いのだ。……セロリは食えないが。
「……すげぇ……!」
「いや、俺はやる! ……大尉の後ろに乗れるなら!」
「私もやりたい!」
「……だから、一人一回、だってば!」
 シュミレーター付きの整備兵が悲鳴を上げた。……こんな事になるなら、右舷デッキでリガズィの整備に回された方が良かったよ!



「艦長、定期運搬船で面会者が来ているそうです。」
「……回せ。」
 ブライトは艦の大騒ぎにもめげず、艦長席で黙々と書類を読んでいたが、そう言われて顔を上げた。
「ブライト・ノア艦長である。」
『コウ・ウラキ大尉であります。……初めまして、お忙しいですか。補充用員の件ですが、サイド1に会議で出向いたので、ついでにと思って。書類で持って来たのですが……』
「……あぁ。」
 見知った顔だった。……というか、連邦軍で知らぬ者の居ない『裏方』、連邦軍で一番有名なモビルスーツ訓練教官の顔だったのである。
「……艦橋へどうぞ。」
『では参ります。……以上。』
 それで左舷からの通信は切れた。……ブライトは艦長席から降りて、ゆっくりと伸びをした。相変わらず艦は喧噪に包まれている。



「……ウェインがシュミレーションで六十機以上落としたそうだ。今、列に並んでるヤツから連絡が入った、」
「オッズは。」
「ウェインは1.06倍。……手堅いが大した儲けにゃならねぇな。」
「大穴は。」
「アストナージ・メドッソ。139倍。」
「……誰だぁ!整備班長に賭けやがったのは!」
「次が、ブライト・ノア艦長の132倍。」
「おいおい……!」
 砲列甲板はヒートアップしていた。全員が砲座にも着かず賭けに熱中している。
「それでもって、その次が……俺だ。アリスタイド・ヒューズ、122倍!」
「誰だぁ、親父に賭けたの!」
 アリスはシュミレーションをやってすらいない。いや、そもそもモビルスーツに乗れない。すると、砲列甲板の若手二人が、面白そうに手を上げた。アリスはその二人を見て目を細める。
「……今度、ビールを奢ってやるぜ!」
 次の瞬間、俺も親父に! という声が砲列甲板にこだました。



「……ちょっと落ち着いたかな……」
 アムロはシャワールームの中でひとりごちていた。……一時になったらメールチェック。それで、誰と一緒にテストドライブするかが決まる。
「俺の予想だと……やっぱウェイン?」
 降下作戦でリガズィを壊した張本人である。……しかしまあ、可愛く無いわけではない。むしろ可愛い。
「……さてと、」
 アムロが部屋に出て、ノーマルスーツに着替えて格納庫に向かおう……と思った時に通信が入った。
「……こちらアムロ・レイ、」
『私だ。』
「ブライト? どうした。」
『至急ブリッジへ。』
「……臨戦?」
『いや、戦闘ではない。』
 アムロは通信パネルの脇の時計を確認した。……今は一時ちょうど。……ブリッジに寄る余裕くらいはあるか。
「分かった、すぐ行く。」
 それで通信を切った。



「初めまして。ラー・カイラムへようこそ、艦長のブライト・ノア大佐です。」
「初めまして。コウ・ウラキ大尉であります……綺麗で素晴らしい艦ですね。」
 コウ・ウラキ大尉本人に会うのは初めてだったが、東洋系にしては背丈の高い、なかなか見栄えのする人物だった。
「そうですか?」
「新造戦艦の匂いがしますよ。」
 そう言って彼は笑った。
「……この艦には、アリスタイド・ヒューズ中尉がいるのです。」
「本当ですか! ……どうしよう、会いたいな……何年ぶりだろう。」
 封筒を手渡しながら彼は本当に人懐っこい目で自分を見た。黒い髪に黒い目で、ああ、まるで子犬のようだ、とブライトは思った。この人物なら本当に砲列甲板に頭を下げに行ったことだろう。最近83年の抹消記録に、アクセス権を行使して改めて目を通した。そして、失われた『試作ガンダム一号機』に乗って居たのがこの目の前に居る人物だと、ブライトは初めて知ったのだ。
「……会って行くといい、」
「有り難うございます。……ところで艦長、この騒ぎは何ですか。」
 ウラキ大尉は実に不思議そうに、辺りを見渡してそう言った。
 ……確かに、誰もが浮き足立っているな、今日のラー・カイラムは。いや、ロンド・ベル艦隊全てが、か。
「……今、『原因』を呼びましょう。」
「は?」
 ブライトはアムロの部屋に通信を入れた。……それを済ませてからウラキ大尉に説明した。
「……という訳で、皆『アムロと二人乗り』がしたくてこんな騒ぎになっているのです。」
「あぁ、なるほど。」
 ウラキ大尉は実に面白そうに少し笑った。
「……で、そのシュミレーターは何処に?」
「……は?」
 今度はブライトが聞き直す番だった。
「ああ、いや、だから。……アムロ・レイ大尉が作った『モビルスーツ操縦シュミレーション』の『ステージ4』なのでしょう? ……訓練士官の自分は良く知っている、あのステージのターゲットはゲルググ・マリーネだ。……あれなら、誰よりハイスコアを叩き出せる自信がある。」
「……やる気なのか。」
「まあね、地球に帰る……ついでにね。」
 ブライトは左舷ブリーフィングルーム脇にあるそのシュミレーターの場所を教えてやった。
 ウラキ大尉は綺麗に敬礼をして、しかし何処か悪戯な子どもの様な顔をして、ブリッジを左の扉から出て行く。……次の瞬間、右の扉からアムロが入って来た。
「……何の用事だ、ブライト。」
「……補充用員の、候補リストだ。たった今、オークリーから届いた。」
 手渡しでな、とは言わなかった。ブライトはただ、封筒だけをアムロに手渡した。
 アムロはうん、と答えて封筒の封を切った。
 ……参った、面白い事になって来たぞ。



「……大尉! 絶対俺が一番です!」
 ウェイン少尉がそう言って駆け込んだ格納庫の先には、整備班の要員しか居なかった。
「ばぁか、メールで送れよ! こっちは忙しいの!」
 アストナージが答える。……こいつ、カミーユを思い出すなあ。
「あっ、何ですか! 俺だってメールで結果を送る事くらい知ってますよ、」
「じゃ、さっさと行けよ!なにしろお前、セロリが食えないんだろ、」
「ああああっ。何で知ってるんですか、アストナージさん!」
「艦隊の全員が知ってるよ!」
「何で!」
「……ともかく知ってるの!」
「……信じられない!」
 呟きながらウェインは出て行った。……さあて、誰が勝つんだ。



 約束のイチサンフタマル時。……すなわち、宇宙時間の午後一時。……ラー・カイラムの右舷デッキは、信じられないような人混みに満ちて居た。キャットウォークの上まで人で一杯だ。
「……それでは、結果を発表する。」
 この数時間、作戦士官達は思い付く限りの罠を作戦宙域に仕掛けることに、パイロット達はシュミレーションに熱中したはずだ。……有意義だったな、とアムロは思いつつ手元の端末を見つめた。
「シュミレーションの結果、最もハイスコアだったのは……」
 サットン・ウェイン少尉、六十八機、とアムロが言いかけたまさにその時だった。
「……あのー。」
「何だ?」
 大勢のギャラリー、全てがその声のした方に顔を向けた。
「あー、あの。……初めまして、自分はオークリー基地のコウ・ウラキ大尉であります。」
「……あぁ。」
 アムロは驚いた。……入口から流れてくる人物はブライトと同じ、砂色の地上軍の制服を身に纏っている。宇宙ではあまり見ない色だ。
「……初めまして、俺は、アムロ・レイ。」
「知ってるよ。……はい、これ、俺のシュミレーション結果。」
「……やったのか?」
「……うん。……皆が終わってから、少しだけ借りたよ。」
 コウ・ウラキ大尉は面白そうに首を竦めて笑った。……と、後ろのギャラリーから、叫び声が聞こえる。
「ちょっと、ウラキ大尉! ……なんでここに居るんです、っていうか、俺がセロリ食えないのを、アムロ大尉に教えたのはウラキ大尉でしょう!」
「……どうかな。」
 ウラキ大尉ははぐらかした。
「そんな『大人の事情』は、お前には教えられないな。」
 アムロもそう言いながら、ウラキから受け取ったディスクを端末に差し込む。……シュミレーションのスコアが画面に出た。……それを確認して、アムロは心から楽しくなった。
「……結果を発表する。……スコア最上位は、コウ・ウラキ大尉。地上軍北米方面オークリー基地所属……撃墜数、百三機。……文句のある者は?」
 アムロは皆を見渡した。……右舷格納庫には何十人と、人が集まっている。……しかし、誰一人文句を言わなかった。
「……文句のある者は? 発言を許可する。」
 しかし、やっぱり誰も文句を言わなかった。……平均三十のステージで撃墜百三!
「……じゃ、俺、ウラキ大尉とデートするから。」
「ラッキーだったなあ、通りすがりだったのに……。」
 コウ・ウラキ大尉はそんなことを言いながら、整備兵に宇宙用のノーマルスーツを手渡され、着替えに向かう。……三々五々、格納庫から人が減って行った。……最後まで残っていたのはサットン・ウェイン少尉だった。
「ずるい……! 『大人の事情』ってなんですか! 『大人の事情』って!」
「俺より落とせるようになってから、そういう台詞は言え。」
 ノーマルスーツに着替えたウラキ大尉が脇から出て来た。……そして、ウェインの頭を軽くぽんぽんっ、と二回ほど叩くと、こう言った。



「ごめん。……お前は優秀だよ、でもあの『アムロ・レイ』と一緒に宇宙を飛べるとなったらさ。……つい俺も本気になっちゃって。」



「……ずるいー!!」
 飛び出してゆくリガズィにそう叫んだウェインの声は、きっとモビルスーツに乗る二人には聞こえなかったことだろう。



 もちろん、アムロは即ウラキ大尉を宇宙軍にスカウトした。……これだけ優秀な人材に、地上でただ訓練教官をさせておくのはあまりに惜しい。
「……残念だけど、」
 ウラキ大尉は笑ってそれを断った。
「そうすると、ほら……ウェインみたいなのを地上で訓練して、宇宙に上げる人間が居なくなってしまうから。」
「……そっか。……それは確かに困るな、」
「……だろ?」
 二人は笑って、暫し一緒に宇宙を駆けた。……なんか楽しいなあ。アムロは思った。同い年の、こんな面白い人間が、地上で頑張ってくれているなら、



 俺は地球をもっと愛おしく思えるかも知れない。



 ラー・カイラムに戻った二人は、艦長と、それからアリスタイド・ヒューズ中尉を交えて料理長の『リガズィの為の特別料理』を味わった。……アリスは今回の一件でボロ儲けしたらしい。始終機嫌が良かった。コウ・ウラキ大尉は、通りすがりと言うだけあって、それでさっさと帰っていった。



 しかし、実に有意義な一日だったのである。……多くの人々にとって。











2006.09.27.







長〜(笑)。コウが出るだけでこれだけ長くなるわたしがスゲ〜(笑)。←いや、最終話だからってのもありますヨ(笑)!







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