+ 中年の星 +





ヴィリィ・グラードルは、
最近お腹の出っ張りが気になっていた。

軍隊生活をはじめてから
基本は規則正しい食事と運動を続けていたが
それでも時々浴びるほど酒を飲んだり
肉を食べる会に喜んで参加したりしても
ほっそりとした体型を維持していたのに
三十歳を過ぎた頃から
同じように食べたり飲んだりしても
身体に栄養が付いて
なかなか体重が落ちてくれなくなった。



(重力のない生活も影響してるのか・・・。)

一年戦争以来、グラードルは
宇宙の海のみで暮らしてきた。

茨の園も
ペール・ギュントも
無重力の世界だ。

カルシウムを意識して摂取しないと
骨はもろくなるし
筋力トレーニングをしないことには
すぐ肉がたるんでしまう。



休暇の度、サイド3に帰っていた頃は、
ドッキングベイに艦が入ると
急に身体に重さがかかり
地上に(正確には人工の地上であるけれども)降りた感じを
懐かしくもわずらわしく思ったものだった。

だが今は
あの感覚が恋しい。
と思う。



ズズーっと
頭のてっぺんから足先まで沈みこむような
あの鬱陶しい重力が。





・・・隣ではアナベル・ガトー少佐が長い足を組み替えた。

スラリと伸びた手足と
しなやかな筋肉が
バランス良く養われた身体。

二十代の頃の自分でも、とても敵わん。
と、思わせる。

ガトー少佐もいずれ三十歳、四十歳と
年を重ねていくのだろう。

はてさて、
お腹が出たりするものかな?

・・・不謹慎な想像にグラードルは
少し口の端をゆるめた。



(少し、身体を動かしてくるか。)

グラードルは、
次の半舷休息の時間には
トレーニングルームへ行くことに決めた。














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