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『残された者は、精一杯生きるべきだ。・・・・・・・・・君は、僕の、分までね。』
些細な事故。
些細な死。
些細な未来の喪失。
一発の不発弾が彼の未来を奪った。
・・・同じ場所に居た。
ただ、彼の後ろに立っていたということだけで、
彼は死に、私は生き残った。
私と彼とケリィの三人で組んだ小隊は負け知らずで、
教官にも一目置かれた。
一緒に卒業できることを、疑いもしなかったのに。
物静かで、優しく笑い、怒ることのない男で、
バックスに彼がつくと、いくらでも突進できたのと同じに、
教室で、背後にいる彼の視線を感じると、どこか安心した。
コロニーへの移動中に、家族を亡くしたと言っていた。
不慮の事故に、ただひとつ見つけたノーマルスーツへ幼い彼を押し込んで、
大きくうなずいた父の顔と泣きながら笑っていた母の顔が、
忘れられないと言っていた。
地球から宇宙へ駆り立てた連邦政府が、
許せないと言っていた。
・・・・・・・・・なぜ、『あの時』は、彼が私の前にいたのか。
些細な事故。
些細な死。
些細な未来の喪失。
彼の両親が彼に託した未来を、
その彼が私に託した未来を、
・・・私の両親が私に託した未来も、
私は、見届けなければならない。
もしも、私が最後を迎える時が来たら、
誰かに継がねばならないのだ。
安らかに眠れと、
彼と彼の未来を惜しむが故に。
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(2001.11.10)
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