0076.11.09.






『残された者は、精一杯生きるべきだ。・・・・・・・・・君は、僕の、分までね。』










些細な事故。

些細な死。

些細な未来の喪失。






一発の不発弾が彼の未来を奪った。



・・・同じ場所に居た。

ただ、彼の後ろに立っていたということだけで、

彼は死に、私は生き残った。



私と彼とケリィの三人で組んだ小隊は負け知らずで、

教官にも一目置かれた。



一緒に卒業できることを、疑いもしなかったのに。



物静かで、優しく笑い、怒ることのない男で、

バックスに彼がつくと、いくらでも突進できたのと同じに、

教室で、背後にいる彼の視線を感じると、どこか安心した。



コロニーへの移動中に、家族を亡くしたと言っていた。

不慮の事故に、ただひとつ見つけたノーマルスーツへ幼い彼を押し込んで、

大きくうなずいた父の顔と泣きながら笑っていた母の顔が、

忘れられないと言っていた。

地球から宇宙へ駆り立てた連邦政府が、

許せないと言っていた。





・・・・・・・・・なぜ、『あの時』は、彼が私の前にいたのか。





些細な事故。

些細な死。

些細な未来の喪失。





彼の両親が彼に託した未来を、

その彼が私に託した未来を、

・・・私の両親が私に託した未来も、

私は、見届けなければならない。



もしも、私が最後を迎える時が来たら、

誰かに継がねばならないのだ。





安らかに眠れと、

彼と彼の未来を惜しむが故に。
















(2001.11.10)











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