帰れ、・・・帰ってくれ。



 玄関脇の木目の壁にコウの身体を押しつけ唇に唇を重ねる。さらに『唇を重ねる』ことの意味を強調するように、上唇と下唇に力を込めコウの唇を挟んで吸う。抵抗するはずだったコウは手首をガトーに掴まれても暴れない。背中がずるっと壁に擦れる音がする。まだ足らないのか・・・嫌がってくれと舌を入れる。軟体動物のような温かいコウの舌を捕らえ絡み合わす。・・・・・・・・・熱い。





 絶対、帰らないっ。



 されるがままくちづけを返す。ガトーの唇のすべてを感じ取って動きを合わせようとする。まぶたを閉じ唇から広がる感覚を全身で味わう。ここで引き下がれば何も変わらない。もうそんなのはイヤだ。どうなろうともこの舌の、この動きの、この情熱の行きつく先を見たい。知りたい。侵入したガトーの舌先を舐め白く揃った歯で甘噛みする。・・・・・・・・・アツイ。





 一分一秒ごとにガトーのくちづけは激しさを増す。唇を舐め舌を吸い唾液を流し息つく暇も与えず、・・・ここにいたらどういうことになるかわかっているのか、・・・・・・・・・だから帰れ!










 ・・・・・・・・・雷光が部屋を揺らすほどに眩しく打ち降ろされる、嵐の夜だった。










The storm that runs through  I











 その日が、0085年の11月13日であったことも、嵐の日であったことも、何ら象徴的な符合ではない。二人にとって意味があるのは、互いの目の前に立つ男の存在だけだ。こうして二人でここにいることを二人が選んだのだから。



 昼からの小降りの雨が窓をざざっと叩くほどに強くなった時、二人は夕食の片付けの最中だった。たかが二人分のお皿の量だ。ガトーが洗ってコウが拭けばすぐに終わる。一瞬、銀の蛇口に反射した稲光が目に入ったガトーは、朝に見た天気予報を思い出した。地球の天気予報は外れることもある、がこの雨の強さなら今日は当たりだな、と。



 「雨音がずいぶん酷いな。・・・・・・・・・早めに帰ったほうがいい。」

 オークリー基地までジープを運転して帰らなければならないコウを案じたのだ。



 「今日は・・・泊めてよ。」

 隣のコウはまっすぐ皿の方を向いたまま言った。



 「・・・・・・・・・駄目だ。」

 結局、無かったことにして乗り切った初めてのくちづけの後、ガトーはこの家にコウを泊まらせないようにしてきた。コウもガトーの思うところをわかったつもりで泊まらないようにしてきた。一度目はジョークで、二度ならばたぶん過ちで済む。・・・三度目のことは、・・・・・・考えまい。



 「なんでだよ。・・・前はよく泊めてくれたじゃないか。」

 コウは敢えて言う。泊まらないこと、の意味を先延ばしにするには、もう限界だと。



 「・・・・・・わかるだろう?」
 「わからない!」

 がしゃりと音がした。最後の皿を少し乱暴に食器棚に収めたのだ。・・・・・・・・・わからないわけじゃない。でも今日のコウは決意と共にここを訪れていた。



 この心に渦巻く感情の正体を見極めなければ、どこにも進めない。



 (間違った道でも、踏み止まっているぐらいなら、・・・・・・・・・俺は!)



 「痛っ!・・・何すんだよ?!」

 右腕がガトーに掴まれた。力任せにコウをキッチンから玄関に引っ張っていく。



 「いいから、帰るんだ。・・・ほら、コート。」

 フックに掛かっていたコートをコウに押しつけるように渡す。



 「大雨の中に放り出すのか!」

 いったん両手で受け取ったコートをコウは床下に投げつけた。ドア一枚向こうから轟々と雨音が響いてくる。



 「んっ?!」

 突然のガトーのくちづけ。嵐のような。これでも帰らない気かと、それは脅しのはずだった。なのに腰の辺りから甘い感覚がが立ち昇ってくる。



 (これで終わりだ。終わりにすべきなのだ、・・・だが、・・・・・・・・・これは?!)










 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・激した雨が下界の雑音をすべて消し去るような、嵐の夜だった。















 ここで終わればまだ二度目のくちづけだ。どんなに長かろうと、どんなに深かろうと。通ったばかりのキッチンから玄関への道を逆戻りして、コウをその腕の中に抱いたまま引きずる。キッチンを横切れば奥はベッドルーム。・・・まだ離れない唇に、がっしりとした抱き心地のするコウの身体。



 (・・・・・・・・・何をしてる。早く振りほどけ!)

 一方で、腕の力を緩めようとしない自分がいて、・・・私はこの腕を放したくないのか。帰れと願っているのは見せかけか。コウの身体をベッドの上に投げるように倒す。こちらを見る目は、真剣でまっすぐでいつものコウで、瞬時もそらしはしない。・・・おまえはっ!

 その時、身体の中を支配していたのは、怒りに似た感情であったように思う。予想通りに行動しなかったコウと、それ以上に裏切った自分。・・・ガトーは自ら肌を包む灰色のシャツのボタンを上から一個ずつ外していく。だんだんと広がっていく胸の隙間に筋肉が浮きあがる。実際には30秒程度のことだろうに、じりじりとした時間。次いでベルトに手が掛かる。・・・がささっと風が。ベッドの上で半身を起こしたコウが万歳をしている。着ていたスカイブルーのセーターを脱ごうとしている。コウが完全に脱ぐのを待って、ガトーがわざとその黒い瞳を睨む。ドア向こうのキッチンの明りだけがこの部屋を照らしている。ぼんやりと見えるコウのしかし鋭い視線。躊躇いも戸惑いもなくガトーを見返す。

 身体を隠す布をすべて脱ぎさり一糸纏わぬ姿となってコウの前に立つ。背後から射す光では銃痕はわからないが欲望の形ならば見てとれる。コウの目は逃げない。・・・ガトーの男がコウに挑みかからんばかりでも絶対に逃げない。



 いいんだな、と念は押さず、ただガトーはコウの上に身体を重ねた。唇が近づいて三度目のくちづけ。ここで留まる気はどちらにもないというだけのこと。










 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一瞬の稲光が全裸の肉体を蒼や黄金に染める、嵐の夜だった。















 これが男の肌なのか、と。



 想像していたわけでもこういう経験があるわけでもないのに、妙な違和感を抱く。くちづけながら指で撫でるコウの肩はなめらかで、イメージしていたものとは違う。ごつごつしたのが男の肌だと。だが何度も撫ぜたくなるような。だいたい舌を絡めあえば不快感が沸き起こるかと思っていたが。むしろこの先の行為を連想し、ひどく自身を昂ぶらせている。戦いの欲求にも似て、己の身体の下で参ったともう駄目だと叫ばせたい。手の平で行きつ戻りつしてすべすべした感じを楽しむ。コウの肌から少しずつ汗が出るのがわかる。手がじっとりと濡れてくる。触れたところから順に体温が上がっていく。左手でコウの前髪をかきあげる。のぞいたおでこに唇を落として、高まる気分を緩めてみる。

 ・・・・・・・・・もっと気持ちの悪いことかと。吐き気がして続けられないものだろうと。微塵もそんな気にならない。止まらない。・・・・・・・・・ああ。





 これが男の唇なのか、と。



 ただ一度、ガトーと交わしたくちづけは触れただけで全然こんなじゃなかった。生きてるみたいに濡れて動いてぐちゅっとあちこちに押しつけられて。時に舌は口にも耳にも入りこんで。まぶたを舐め顎を舐め喉仏を噛まれ、脂肪が少ない場所ほど奥にじんと響く。慣れぬ刺激に腰が敏感すぎるぐらいに反応する。血液が集中してもうとっくに勃起している。・・・・・・・・・こんなにもあからさまだとは。ガトーに触れられこんなにも。ぐぇってなりそうなぐらい重い男の身体。これがセックスの最中じゃなきゃ跳ねのけてやるのに。

 だが今日は止めろと絶対言わない。何をされても絶対言わない。ガトーに聞かれても絶対言わない。・・・・・・・・・うぅっっ。





 ガトーの唇がコウの胸を捕らえる。ガトーより濃い肌にガトーより薄い色の乳首。処女みたいに。穢れてないように。自分の舌で弄っていいのかと思うほどに。円を描くように舐める。時々噛む。うぅっと面白いぐらいにコウが声を出す。唾液の跡をつけながら舌を動かす。ならだかな腹筋。くぼんだ臍。産毛すら生えてないのでは。すべるようだ。臍に舌を差しこむと、ひゃっとヘンな声が頭上から聞こえる。コウの感じる場所を分析しようとする冷静な自分もいる。だが早くコウの中に突っ込みたいという自分も。現に腹につくほどの欲望が。奮えるほどのものが。・・・そうかおまえもか。コウの起ったそれをしばしの躊躇いの後、口に含む。その味より硬い感触の方が唇に残る。はむ、と唇に力をこめる。ひどく物量感がある。同じものが自分にもある。敏感な個所を思い出し、亀頭と皮の間を尖らせた舌でつついてみる。あああぁぁぁっ・・・と腰が抜けそうな声が。・・・安心して何度もつっつく。顔ごと深く上下して全体を刺激してやる。頂点のへこんだ場所にも舌をやる。力を得たようにさらにぐんと硬くなる。単純でわかりやすい男の欲望。はあぁぁぁっ・・・と深い息がする。このままコウが射精しようがかまうかと激しい口淫を続ける。



 「・・・で、・・・・・・・・・出るっ!」

 叫びながらコウが急に上半身を起こしてガトーの頬を両手ではさむと、無理に顔を引き剥がす。とっさのことにガトーは歯でコウを傷つけないようにする。ぽっかり開いた空間を飛んでコウの放った精液がコウの腹を白く汚す。



 「何をする。」
 「だって、ガトーの口が汚れる、・・・だろ。」

 俺を咥えて俺をこんなにも感じさせるガトーがきれいで。こんなガトーは見たことがない。こんなガトーは知らない。銀髪を汗に乱して。俺なんかに。



 「・・・ガ・・・ガトー?!」

 目の前でガトーが腹を舐めている。太ももの上に乗って頭を下げて。そこには散ったばかりの体液が。舌が這って舐め取っていく。



 「・・・こんな味とは知らなかった。私の身の内にもあるのにな。」
 「まずい・・・だろ?」
 「まずいというか苦い。」

 ・・・・・・・・くすっと二人が鼻で笑う。男同士というのはこんなにも滑稽だ。だが欲しい。コウの両膝を立てさせて後ろが見えるようにする。少し柔らかくなったコウのペニスを邪魔にならないように左手で上向かせ、顔を近づける。皺の寄ったそこに指を当てる。ただ一本の人差し指さえ拒むように閉じている。回りをぐるりと撫でても変化は無い。開くことも濡れることもない。指をゆっくりと差しこんでみる。すぐにつっかえる。苦しいだろう。ガトーはしばし考え、待ってろ、と言ってベッドを離れる。身体の前面に急に風を感じて寒い。ひとり待つコウはそう思う。男と男でどうやって『セックス』するのか知ったのは数週間前のこと。本で読んだ。その代用行為には人間の果てない欲望を感じた。そんなことができるのかと。そうまでしてやりたいのかと。そしてもうすぐその瞬間が来る。逃げる気にはならない。ガトーがしたいと言う。・・・なら俺も。ガトーがやりたいと言う。・・・なら俺も。いや、俺が欲しい。ガトーを、生きているガトーを身体で感じたい。

 バスルームから、ガトーがボディローションとコンドームを手に戻ってくる。専用のクリームは当然ここには置いてない。代わりになりそうなのは、シャワーの後に塗るこのローションぐらいだ。コンドームは救急用キットに。これは軍人の性。コウの足の間に座り、その下に自分の足を入れる。顔と顔は遠いのに、繋がるべき場所は近い。いきり立ったガトー自身と窪んだコウの穴。コウ・ウラキという人間の中。繋がるとはどういうことか。ぐしゃぐしゃにしてやりたい。ひっかき回したい。生きているんだと、生身の人間なんだと、実感したい。

 膝の内側をちゅうと吸いながら、手に取ったローションをコウの後ろに塗りはじめる。下のシーツに垂れるのもかまわず、指を往復させて内壁を濡らす。不意に指が締めつけられる。きゅうっと。気をそらすように太ももを舐める。足の付け根に近くなるほどコウの声が大きくなる。第2関節を曲げて中をぐるりと探索してみる。これが男の中。コウの中。指一本入れただけでもう根をあげそうな。きつく狭い場所。幾度と抜き差ししてもこれ以上に緩くはなりそうにない。



 「・・・んんんっ。」

 艶を秘めたコウの声。きっかけを得たガトーは、ビニールを破いてコンドームをその身に付ける。赤黒く逞しく勃起した男根が天を向いている。ほんのりピンク色が重なる。あらためてコウに覆い被さる。大きな身体と身体が重なる。胸と胸がぶつかる。互いの硬いペニスが当たる。かちかちとした感触。慣れた場所より少し下にあるはずの入口にガトーは自身を押しあてる。ローションのせいでぬるりと滑る。間違いなくここ。コウを見る。ガトーを見る。汗と皺の浮かんだ顔に張りついた髪。黒と銀の、黒と紫のコントラスト。こんなにも違い、こんなにも欲しい。



 ガトーはコウの左耳に唇を寄せて、いくぞ、と言う。



 コウは目を開けたまま、いいよ、と言う。



 ぐい、と腰が動き、うぅーーーーっと押し殺した叫びが部屋に響く。・・・・・・・・・そしてそれを消す雷鳴が。










 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・雨は止まず邪魔するものもなく思いが解き放たれた、嵐の夜だった。















 「・・・あぁっ。・・・・・・・・・んっ。」

 俺の上でガトーが眉間に皺を寄せている。戦ってるわけじゃないのに苦しそうな顔。俺の中でガトーが動いている。ゆっくりと。大丈夫かと何度も声がする。大丈夫?・・・大丈夫って何だろう。くり返されるくちづけ。指を絡め合って。ガトーが優しい。怖い顔してんのに優しい。こんな時なのに優しい。・・・ガトーじゃないみたい。

 ・・・・・・・・・あれ、・・・何を考えてるんだろう、俺。



 「す・・・すまない、先にっ。・・・うっ。」

 久しぶりの行為。人肌に触れ、埋め、味わう、とはこんな感じだったか。いつもほどの力がない。腰が限界だと告げている。そっとしたつもりだったのに。・・・情けない。先端が瞬間しびれて薄いゴムの中に液体が満ちる。温かいコウの中。攻めているようでその実、包みこまれているような。私より小さいのにな。ちびこいとからかうとむきになって怒るのに。不思議なものだ。

 ・・・柔らかく気持ちがいい。まだ浸っていたいほどに。



 「・・・・・・・・・ふーーーっ。」
 「・・・ガトー。」

 射精の充足感にガトーが大きく息を吐く。残されたコウは起ったままのペニスをもてあます。これで終わりか。これがやりたかったことだろうか。



 「ガトー・・・俺・・・」
 「・・・苦しかったか?・・・すまん。今いかしてやるから。」

 コウとコウのものを見てガトーが言う。コンドームを残さないようにゆっくりと自身を抜いて外す。丸めてティッシュに包んでベッド脇のごみ箱に捨てる。今一度とばかりコウに手を伸ばしかける。



 (違う、ガトー。・・あれじゃ優し過ぎて、なんだか・・・・・・・・・、)



 「ガトーじゃないみたいだ。」
 「・・・は?」
 「なんだかガトーじゃないみたいで。・・・ガトーらしくないよ。俺の知ってるガトーはもっと強くて不遜で傲慢で。俺が追いつけないようなとこにいて・・・、」
 「コウ。・・・何を・・・、」
 「俺を叩きのめせよ!・・・ガトーなんだって、俺を抱いてるのはまぎれもなくガトーなんだって、俺にわからせろよ!!!」
 「言ったな!」

 がくん、っと胸が押されてベッドに倒される。圧しかかったガトーが右の親指と人差し指で頬を挟んで痛いほどに口を開けさせる。口に口が重なって大量の唾液が流しこまれる。舌が引っ張り出されてもて遊ばれる。がしがしと耳たぶを噛まれる。首筋も。俺も噛んでやる。歯型がついたってかまうもんか。硬い筋肉。二の腕も肩も。この圧迫感。



 「・・・んんっ。・・・あああっ!」

 ちりちりする。乳首が乱暴に摘ままれ、爪でかりかりと引っ掛かれる。背中に回された片腕が肩甲骨の下をぎゅっと抑える。皮膚の内側で細胞がささくれ立つ。ざわわっと。ガトーの感触に。起ちっぱなしのペニスがひくひくと動く。早く出したいのに足らない。透明な雫が皮を伝う。不意に生暖かいものに包まれる。ガトーの口が咥えこんでいる。激しく上下する。浮き上がった筋の上を舌が的確に捕らえる。・・・あと少し。何か手に掴むものが欲しくてガトーの頭に手をあてる。その手に力が入る。だめだ、・・・いきそうだ。・・・・・・・・・ああぁっ。



 「んはぁっ?!!!」

 そうはさせまいと、ガトーがきつく根元を噛む。押さえこまれた欲望が幹の中で逆流する。出口が無い。腰が爆発しそうだ。ひどい奴。



 「まだだ。・・・足りないだろう!」

 軽々と身体が裏返される。獣みたいに四つ足で立って、後ろをガトーの目にさらす。11月のひんやりとした空気がそこに。尻の肉に指が食いこんで、さらに広げられるる。見られている。



 「・・・ほう。」

 その声の意味は何?・・・気になるじゃないか。・・・・・・・・・まじまじと見るのは初めてであろう後ろの門は赤く痛々しい。・・・そうだろう。こんなものを入れたのだからな。だがまた入れてやる!!!



 「うっ・・・痛ーーーっ!!!」

 数回、自分の手で擦って硬度を増してからガトーは再びコウに挑む。そうか、これが私か。これも私か。わからせてやろう。深く門をくぐって埋めこむ。ずんっと。奥まで。どこまで入るのか。ここか。そこまでか。腰と尻が触れて止まる。限界。熱い。狭い。・・・拒むなら、



 「ん・・・んんんっ!」
 「くっ。」

 何度も腰がぶつかる。リズミカルな音がする。頭の天辺まで衝撃がくる。がつんと。熱いのと痛いのがごっちゃになって、身体の真ん中を支配しているみたいだ。セミダブルベットが想定外の重さにぎしぎしと悲鳴をあげている。深く深く突く。熱く柔らかいコウの中。困ったことに、また自分もいきそうになる。まだ与えなければ。伝えなければ。



 「ガトーっ・・・!!」
 「・・・コウ!」

 身体が揺れる。一緒に揺れる。腰から伝わる感覚は甘くて身体中が蕩けそうだ。おかしい。ガトーにこんなにひどく攻められているのに。その手にペニスが握られたまま。まだ許してもらえない。逃げられない。



 「・・・・・・・・・うあああぁぁぁっ!!!」
 「うっ。・・・・・・・・・くくっ!」

 ただの男。二人の男。一対一で向かい合う。コウを感じたい。ガトーを感じたい。生きてること。本物だということ。かつて戦いあったということ。敵であるということ。生き方。主義。しがらみ。ねたみ。ひがみ。憧れ。願い。いろんな思いが交錯する。

 抱きたい。抱きしめたい。繋がりたい。セックスを。セックスだけじゃなく。汗と唾液と精液と。熱が、上がり続ける熱が、暴発しそうな熱が。



 楔のように引き裂いては鎹のように繋ぎとめる。身体と身体がこうやって結ばれるとは。





 アナベル・ガトー。0058年生まれ。27歳。公にできないがジオンの軍籍を持った男と、



 コウ・ウラキ。0064年生まれ。21歳。地球連邦軍オークリー基地勤務の現役少尉が、





 こんなにももう一人の身体を、そしてたぶん心を、欲していたとは。















 ・・・知らない。



 ・・・・・・・・・知らない。





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こんな感情は知らない。















 そして、・・・達する。



 「うわああぁぁーーーーーーっ!!!!」
 「ぐぅーーーっ!!!」

 コウの背中に顎の載せてもたれかかるガトーの身体。折り重なって崩れ落ちる。まだ繋がったまま。ガトーの手の中に収まりきらず指を伝って落ちるコウの体液。そのコウの中を満たして縁から零れるガトーの体液。互いの身体に放った情欲の品。汗ばんだ肌が触れ合っても許せる。むしろ触れたままでいたい。べっとりと濡れてもこのままで。ずっとこのままで。



 ・・・今日初めての触れるだけの優しいくちづけが、いまさらに。・・・・・・・・・シャワーなんか浴びずに、このままで。















 汗と精液の匂いがこもる部屋にまだ雷雨が降りそそぐ。





 ・・・禊のような。















 ソーラ・レイIIの強烈な光に焼かれてから二年後の、





 再びの、





 ・・・・・・・・・嵐の夜だった。















+ END +










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混乱した文章で、読むのに大変だったと思います(笑)。

やっぱり、もはや語るまい・・・。

管理人@がとーらぶ(2002.08.12)











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