溺れる
一緒にベッドに眠るようになって気づいたことがある。それは、日常のガトーの仕草が、とても静かであるということ。・・・たとえば、朝が来て先に目覚めるのは、だいたいガトーが先だ。遅れて目を覚ますのは、ガトーがベッドから身を起こし、足を降ろして、バスローブを羽織り、キッチンに向かった頃ではなく、ようやくコーヒーが沸く頃になって、隣の寝ているはずの人間が残していった身体ひとつ分の空間に少し寒さを感じた時であったりする。
(俺ってそんなに鈍いのか・・・。)
時には、ベッドの縁に腰掛けているガトーを見れることもある。何度もコウを抱いて過ごした夜の後の軽い倦怠感の中で、日常へのスイッチが切り替わらないかのように、少しうつむいてどこを見るでなく、たたずんでいる風情のガトー。
(・・・寂しそう?)
そうも見えて、ズキリと胸が痛む。この関係を後悔しているのだろうか。ガトーの白い肌が闇にうっすら浮かんでいる。。夏には少し赤くなっていたけれど、秋の半ばには、すっかり元の白さを取り戻していた肌。白人種の肌。
「・・・・・・・・・。」
(もしかしたら、もの寂しいのは、ガトーじゃなくて俺なのか?)
ありえないはずの交わり。ありえないはずのこの瞬間。
たまに、コウが先に目覚めることもある。シーツがもぞと持ち上がった刹那で、ガトーにはコウが目覚めたとわかる。・・・だが微動だにせず、ベッドから降りて薄手のシャツを着るコウを薄目で追う。ふと右腕が後ろに下がった瞬間、シャツの下の盛り上がった肩甲骨に気づく。筋肉のついた肩。間違いなく男のものなのに、昨夜そこを噛んだ時のことを思い出し、ぞくっとする。己の中にある欲を知る。・・・知りながら今度ははっきりと目を開けて見つめ続けてしまう。
さらさらの黒髪がかかった耳たぶ。昨夜そこにくちづけた。その黒髪から伸びたうなじ。昨夜そこに舌を這わした。しなやかな若木のような背骨も上から下へ舐っていった。
(このまま溺れてしまったら・・・。)
ほんの一瞬でもそんなことを考えている自分を嫌悪する。冷静になれと無言で叫ぶ。着替えを終えたコウがキッチンへと消える。ふわふわ、やわやわ、そんな心地よさは全く感じられないがっちりとした身体。なのに、昨夜何度交わったことだろう。そして今また感じているこの感情は間違いなく欲望だ。
脳から中枢神経を飛ぶように走る。愛したいというのではなく、ただ抱いてこの欲をぶつけたいという、ぴりぴりととんがったわがままな自己熱。ここで止まれるならこの関係ははじまっていなかった。だからガトーはただ、ベッドを降りてコウを追いかける。蛇口からあふれる水をポットに入れているコウの背中に襲い掛かる。
シャツを脱がす手間を惜しんで抱きしめる。腕の中にある、180cmあまりのがちっとした塊にますます欲望を掻き立てられる。
「ガトー?!」
驚くコウを振り向かせないままに、背後から手を前に回し、ジーンズの布越しに、中心を撫でる。乱暴なほどに往復すると、昨夜の熱が残ったままのコウも腰に力が入らなくなり、ひざが折れて下に沈みこもうとする。ガトーはそれを許さずより強靭な力でコウを支えて、ジーンズをはぎとる。耳の後ろ側を何度も甘く噛む。と同時に指を中心に埋めて残り香で湿っているのを確認する。
「あああっーーー?!」
一気に貫かれたコウが叫ぶのを無視して、ガトーが動き出す。
性急な行為。ぶつけるだけの欲望。・・・溺れるような感覚。
コーヒーを飲むはずだったコウの口に、より苦いものが流れ込んでくる。のどを通って胃の中へ落ちていく。身体の中に溶け込んでいくような錯覚。この味を教えたのはガトーだ。こんなものを飲み込む行為があることなんか想像もしていなかった。
果てしない欲望の海で溺れたら、どこへたどり着けるというのだろうか。
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あけおめことよろがこんなんでいいのか(笑)。
ぷちリハビリ中の気持ちでございます。
管理人@がとーらぶ(2008.01.02)
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