バースディ





















 雨の休日、
ソファの上に長い足を投げ出し、
ナショナルジオグラフィックの絶滅寸前猛禽特集を読んでいたアナベル・ガトーの背中に、

 「・・・なぁ、ガトーの誕生日っていつ?」

 キッチンで、
先ほど二人で食したばかりのロブスターの残骸をディスポーザーに放り込んでいたコウ・ウラキの声が届く。

 「8月15日だが・・・。」

 本から目を上げずに答えたガトーが、
実は少しハッとした表情を浮かべたが、
コウからは見えない。









 『誕生日はいつなの?』

 そう遠くない昔、ガトーは今と同じように聞かれたことがあった。

 『・・・4月4日。』

 とっさに友人の誕生日を答えてしまった。
本当のことを言うわけにはいかなかったからだ。










 「夏生まれかぁ・・・なんとなくガトーっぽくない。」

 「・・・ど・こ・ら・へ・ん・が・だ?!」

 キッチンから再び聞こえた声に、
ふざけて答えられる自分。

・・・ためらわず誕生日を言える自分と、
言えなかった自分。









 誕生日はいつ?

 ・・・・・・・・・どうということはない問いなのに、
そう聞かれて『本当の』ことを言えるというのは、
・・・なぜか嬉しい。










 あの頃、
あまりにも疲れていて、
つかの間のなぐさめが欲しかったのだと思う。
しかし結局はうまくいかなかった。

・・・それはけして彼女のせいではなく、
自分が本当の自分ではなかったからだ。
ニセモノの恋愛に浸ろうとしていたに過ぎなかったのだ。










 手際が悪いのか、
まだ片付け終わってない皿を右手に持ったままのコウ・ウラキの背中に、

 「うわっ?!」

 突然、
アナベル・ガトーの堅い胸の感触がした。
ソファーを立ったガトーが足音もさせず、
こっそりと近寄っていきなり抱きしめたのだ。

 「・・・・・・・・・。」

 そして無言のまま、
コウのうなじにキスひとつ。

 「ガ・・・ガトー?!!!」

 ちょっぴり慌てるコウ。










 
 誕生日はいつ?

 ・・・・・・・・・どうということはない問いなのに、
そう聞かれて『本当の』ことを言える相手がいるというのは、
なぜかこんなにも心が安らぎ・・・・・・・・・。










 願わくば、
もう少しこの時が続いて欲しい、
と思った。

本当の自分をさらけ出せる相手と本物の関係を築けるかもしれないと。




















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はずかちぃ・・・(笑)。

ガトー様、おたんじょうびおめでとー!

管理人@がとーらぶ(2004.08.15)











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