初夢
たとえば、天寿をまっとうするガトー。
きっとおだやかで物静かで、昔"ソロモンの悪夢"に憧れた者たちも気づかないぐらいで・・・
老人たちがあの頃を熱く語ろうとも、
若人たちがあの頃を美化して話そうとも、
その輪に加わることはなくて。
決して核を撃ったことを後悔はしていないし、反省もしはしない。
間違いだったとも思わない。
ただありのまま年をとっていく。
自分がしたことの意味が、誰かに伝わっていることを信じて、
軍から身を引いた後は、ただ黙すのみ、
・・・時どき宇宙(うえ)を眺めて、
懐かしい顔を思い出して、
お茶を飲んで、
暖まって、
だんだん眠気に襲われることが多くなって、
けれど背筋だけはいつも伸びてて、
結婚はしなかったろう、
子供も持たなかったろう、
自分の"子孫"のためだけに、あの時願ったのではない。
・・・・・・・・・そうして、ある日、聞こえてくるのだ。
「もう、そろそろ、いいだろう、ガトー。」
その声はケリィかもしれないし、デラーズ閣下かもしれない。
かつての部下かもしれないし、同期の桜かもしれないし、かわいがってくれた上官かもしれない。
もしかすると、昔、死力を尽くして戦った相手かもしれない。
・・・きっとおだやかで物静かで二つ名も忘られ、敵とか味方とかのない処へ。
(享年85歳)
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