新婚さん

コクピットエッチ編










 アハナイム・エレクトロニクス社内で顔を合わせたとしても、ただの同僚。・・・それは二人の同棲時代からの暗黙の了解であった。正式に届けを出し、カップルであることが社内に知れ渡ったが(結婚が法的に認められてるとはいえ、まだまだ小数派の男性同士であるし、なにぶんコウはともかくガトーの派手さはかなり目立つ存在だったので)、ともかくこれからも私生活を仕事に持ち込むことはない、とコウは思っていた。担当次第で互いの仕事場に顔を出すこともあったが、そつなくこなしてきたし、思いがけない場所で、・・・例えば、ちょっと書類を持って行った別の建物のエレベーターで偶然一緒になり視線を一瞬だけ交わすとか、そういうこそばゆい楽しみで十分満足していたのだ。



 ある日のこと、コウ・ウラキが主席開発責任者として設計にあたった『ホビーハイザック(仮)』の初めてのテスト飛行が行なわれ、コウはMS格納庫でホビーハイザック(仮)とテストパイロットが戻ってくるのを待っていた。一年戦争が終わって13年。MSの性能は保持し改良していきたいが、武器として開発するには色々と制約がある。何せ戦後である。アハナイムでも表向き、趣味や作業用の領域をメインに開発を続けていた。とはいっても到底一般人に買えるものではなく、金持ちが個人で乗り回したりとか、観光コロニーの遊園地用とかに使用されるものなのだが。巨大なスクリーンモニターに写る機体は、産業スパイ避けに胸回りと肩にごてごてとカバー型装甲が付き重そうに見えるが、軽快に宇宙を駆けていく。そのコクピットには、テストパイロットのアナベル・ガトーが陣取っていた。

 100近いテスト項目を終えて帰還する頃には、定時退社時間を一時間ばかりも過ぎていた。それでもテストパイロットたちも揃って待っていた。責任者のガトーが戻っていないのに、退社はしづらいというわけである。35歳のガトーは、部長代行の課長職であった。正式に部長にという話もあったようなのだが、現場のパイロット職から離れるのがいやで辞令を拒んだという噂も。・・・ちなみに、29歳のコウは童顔でも開発部の主任、である。

 ガシン、ガシンッと音がして着床したホビーハイザック(仮)が、格納庫のハンガーに歩いてくる。いくつかクレーンが突き出た真ん中にぴたりと収まると、ジェネレーターの唸りが静かになる。胸のハッチが開いて、ノーマルスーツが見えた。機体の腰の辺りに両側から作業台がスライドして固定される。パイロットがそこに、ふわり、と降りてくる。シルエットが意外に細く見えるのは、高い身長のせいだろう。実際には、ノーマルスーツの内側にしなやかな筋肉の塊が納まっていることをコウは知っている。ヘルメットを外そうとするガトーの前に立って、お疲れさま、と出迎えた。

 「・・・で、どうだった?」
 「どうだった、では、何を聞かれてるかわからない。何のどこが知りたいのか明確にしてくれ。」
 「あ、(コホン)今回のメインの改良点は、アポジモーターの数を増やしたことによるスムーズな機体移動と方向転換に、出力アップによる加速でフレームの振動がかなりあったから、それを減らすよう関節部分に球体型の接着部を作ってみたのだけど、ちゃんと静かになってました?」
 「それは、ハイザックと比べて、という意味か?」
 「う、・・・そうです。」
 「そうだな、AMBACのバランスがまだ発展途上というところか。同じ感覚で右に振ったら、弾かれそうな挙動が、・・・云々。」
 もちろん、数値的なデータは記録ディスクから直接コンピュータに読み込まれるが、ここで必要とされているのは、生身のパイロットが『身体で感じた点』なのだ。その間に、整備担当がホビーハイザックのモニター装置からデータを抜きにかかる。

 コウは、チェックシートにガトーが言ったことを書き込む。ガトーは、パイロット用の携帯スポーツ飲料を隣のパイロット控え室にいた部下に放り投げてもらうと、キャップを取って口をつけた。テストが長引いたせいで、乾いた喉に冷たい液体が心地よい。ごくごくと喉仏が動いた。顔を上げたコウがそれを見る。男らしく盛り上がった喉仏が上下して、なぜか艶かしく思えたコウは慌てて視線をそらした。・・・・・・・・・おや?とガトーもそれに気づく。飲み終わった袋をゴミ箱に向かって投げた。ストライク。整備担当が、仕事を終えたようだ。急に人が減り始める。あちこちで、お先にー、お疲れさまー、の声がする。定時をとっくに過ぎている。みな早く帰りたかったらしい。

 「あくまでホビー用なのだろう?・・・もう少しコクピット回りが拾い方が良いと思うが。」
 「武器管制用コンピュータボックスとか、広域識別モニターとか、取っ払ってるから、ハイザックより120%は空間が広くなってるはずだけど。・・・うーん。」
 その辺は、自信ありの設計だったので、どうも納得がいかないコウである。

 「・・・・・・・・・では、試してみるか?」
 「うわーっ!!!」
 ガトーがコウの腕をとって、金属の床を蹴った。軽々と3メートルあまりも飛んで、二人の体がコクピットの高さに到達する。ハッチはまだ開いたままだった。コウを先に押し込むと、下にいる部下たちに、おい、もう帰っていいぞ、とガトーが叫んだ。何やらひそひそ声で部下たちが言ってるようだが、(部長代行)課長の命令には逆らえない。・・・徐々に姿が消えていった。

 (は?)
 突然のできごとに、コウの頭の中がぐるぐるになる。するとガトーもコクピットに入って、どうしたらいいかわからないでいるコウより先にシートに座る。次いでスイッチを押してハッチを締めたので、ぐるぐるはもっとひどくなった。が、狭さに身体が前に、・・・つまりガトーの方へつんのめってしまった。

 「やはり、居住性は高くないぞ。いっそ、二人乗り用シートを開発した方が良いのではないか?」
 「・・・ガトー・・・・・・・・・、俺・・・」
 声音が真面目に聞こえる分、コウはどう答えていいかわからない。・・・それに窮屈だし、早く出たい。

 「悪かったよ。確かに狭い。わかったから、外に出してよ。身体が痛くなりそう。・・・・・・・・・えっ?」
 小さくコウがうめいた。なんとガトーが、右手で自分の太ももをぽんぽんと叩いたのだ。一瞬、意味がわからず固まる。それから自宅でぽんぽんだったら、ガトーの太ももに座ったりしたよな、と思い、ここは自宅じゃないんだけど、と思い、それでもやっぱりそういうこと?、と思い、それからようやく狭い中、身体を動かしガトーに背を向けると、抱きかかえられるような格好で、太ももの上に座った。確かにコクピットの作りだと、これが一番ラクだけど。でも・・・

 太ももの下の太もも。腕の中の腕。背に当たる胸。それら固い筋肉の感触が、コウを昂ぶらせる。ガトーの腕がお腹に回ってきた。手の平全体でそっと撫で回す。白衣の下の腹筋がざわっと緊張する。

 「あのー、・・・・・・・・・何するんですか?」
 「私はテストパイロットなのだから、当然テストに決まっている。」
 「あのあのー、・・・だから何の?」
 「何のかな。・・・ふっ。」
 「ああっ!」
 不意にコウのうなじにガトーの唇が押し付けられた。わざと息を漏らして温かい空気に襲わせる。

 「何のどこを知りたいのか明確に答えろよっ!」
 とは、コウの逆襲。

 「おまえの、身体の、感度。」
 (カーーーッ!!!)
 ストレートすぎるガトーの反撃は、見事コウに効いた。身体中がいっぺんに熱くなる。

 「それ、今ここですることーーーっ?!」
 すっぽりと抱かれているせいで、コウの熱がガトーに伝わり、またガトーの熱がコウに返ってくる。熱い、とコウが言うと、サーモスタットの効きが悪いんだな。チェックしとけ、とガトーが言った。・・・・・・・・・だから仕事なんだか、なんなんだか、チクショウ。

 ガトーの指が器用に、密着した身体の隙間からコウの白衣を脱がす。つんと立った乳首がシャツの布をもちあげ皺を作る。内側に手を入れて、直接そこを触られると、痺れが伝わって腰が苦しくなる。くにっと何度も先端をもてあそばれ、その回りを人差し指の爪がひっかくように蠢く。

 「・・・ああっ。」
 そのコウの声には、だいぶ切ない響きが混ざっていた。耳たぶに首筋に背後から執拗に舌が這う。何度も何度も這うせいで、唾液の跡がぬらぬらと光る。どうだ、ここは、と低い声で囁かれると、その声にすら感じてしまう。・・・痛い。・・・・・・・・・早く。

 コウが振り返り向きざま、潤んだ瞳でガトーを見ると、どうやらわかってくれたようだ。コウのジッパーが降ろされ、ぐいっと屹立したモノが取り出され、ガトーの右手に握られた。小指から人差し指まで波打つように順番に力を込められる。もどかしい。遊ばれてるみたい、だ。

 「こんなの、・・・まずいって。・・・んんっ。」
 「定時を過ぎてるのだ。サービス残業だと思え。手当ても出ないし、会社に迷惑もかからん。」
 (だから、そーいうことにまで口が立つし!!!)
 でも、頭の中はいっぱいいっぱいモード。しゅんっと後ろの穴が収縮する。そこは知っている。ガトーの熱さを、ガトーの硬さを。ガトーの大きさを。

 「・・・ひゃっ!」
 べろり、という感じで、背筋の真ん中を下から上に舐められて腰がガクガクする。シャツは剥ぎ取られ、パンツは脱がされて、足首に残る靴下だけが貞操を守る。・・・とても守りきれるものではない。皮の上の剥き出しの部分が真っ赤に盛り上がり、先端から透明な液を漏らしはじめた。

 「・・・んっ、あっ、・・・ガトーっ!」
 こりこりと人差し指の先で押される。コウの硬さを楽しむような愛撫。直接過ぎてがんがん響く。ますますガトーが欲しくなり、でもそれを言うのはシャクだ。

 「んっ・・・んっ・・・んっ・・・ぁ。」
 コウの吐く息がリズミカルになる。ガトーの手が上下にすべるようにコウのモノを撫で、それにつられて息をするせいだ。どうやら、先にコウを達かせる気になったらしい。

 「だ・・・だめだよ。・・・・・・・・・ガトー。」
 コウの手が尻の下に回され、さらにその下にあるガトーの男根をノーマルスーツ越しに触った。薄く柔らかくそして丈夫な素材のスーツをしっかりと持ち上げるように、それは勃起している。撫でると形がわかる。伝わってくる。

 「あうっ。」
 それが契機になったのか、コウの腹を抱えて少し前屈みに持ち上げ、自由になった空間にガトーは自身をさらした。ノーマルスーツのジッパーが降ろされて、取り出されたそれは、すっかり臨戦体勢になっている。赤黒い幹に何本も盛り上がった筋が走り、ひどく凶暴そうだ。

 「・・・ちゅぱっ。」
 口の中にガトーの指が入ってきた。右手の人差し指と中指。舌で丁寧に舐めてみる。まるでガトー自身の代わりのように舐めて舐めて、甘く噛んでみる。たっぷりと濡れたその指が足の間をくぐって、奥へ伸びた。穴の回りを一撫でし、侵入を開始する。

 「・・・うんっ、ガトー・・・。」
 抜き差しされる指にガトーを思い、駆りたてられていく。早く欲しい。熱いアレが。ガトーの。逞しい。いつも嵐のように蹂躙していく、あの、硬い、塊が。

 「だ、・・・だめっ!」
 中を引っかくように、指の関節が折り曲げられる。ぐりぐりとポイントを押されて、たまらなくなる。欲しい、もうほんとに欲しいんだってば!

 「コウ。・・・防音も完璧だろうな。」
 「・・・もち・・・ろんっ。」
 だから、吐息交じりにそんなこと言うなってば、チクショウーーーっ!!!

 「・・・んんんっ。」
 ようやく、狭い入口に熱い塊の先端が触れた。唾液で少しは滑らかになったそこに、先走りで濡れた先端を押しつけてさらに潤みを与える。・・・いいよ、もういいから、早くっ!

 「・・・いくぞ。」
 「あああっっっ!!!!!!!!!」
 やっと入ってくる。ガトーが。熱い。少し痛いけど、もっともっと欲しい。・・・欲しいと思いながら、どこかで最後まではイカナイだろうと思っていたコウの当ては見事に外れた。・・・・・・・・・結果オーライ、でいいといしよう(うん)。

 「はっ・・・・・・はっ・・・・・・はっ・・・・・・・!」
 「はぁっ・・・はぁはぁっ!」
 下から突き上げるガトーの動きに合わせて、コウの身体が揺れる。吐息に吐息が重なる。苦しくて伸ばした足の先に支えがあったら・・・って、そんなのは改良するわけに、いかないだろうけど。・・・あれ、何考えてるんだ、俺。・・・くすっ。

 「・・・こら、・・・何が・・・可笑しい。」
 「なんでもない・・・よ。んんんっ!!!」
 コウをたしなめるように、いっそうガトーが強く動く。身体の中に一本まっすぐな鉄柱が立ってるみたいだ。貫かれて、刺されて、俺の心臓を杭打つような、熱い熱い情熱。だめだ、いっちゃうってば。ぐるぐるで、真っ白で。

 「・・・俺、いきそう。」
 「・・・もう少し、・・・・・・・・・もう少し、だ。」
 いっぱいに思えたガトーのモノがさらに大きくなって、コウを内部から圧迫する。ガトーの爆発も近いんだ。一緒に、ガトー、一緒にっ。意識のはしっこで、コウは力を込めて入口を締める。ガトーが、うう、とうめく。・・・いけよ、俺の中で。

 ガトーの先走りはコウの中をすっかり滑らかにし、何物にも邪魔されることなく出入りする。くり返しくり返し擦られてポイントから熱が全身に広がる。後ろを塞がれ、前を握られ、背中に這う唇、時々ささやく声。吐息。全力で攻撃されて、俺、勝てるわけないじゃん。

 「んん・・・んんん・・・んんんんっ。・・・ガトーっ!!!」
 「コウ・・・コウッ!!!」
 びしゃっと濡れた感触が広る。ガトーが放った精が熱い中をさらに熱くする。なんとか堪えたコウも同時に達した。ガトーの長く細い指に、白濁した液体が散る。他に漏らさないように、全て手の中に受けとめる。びくんびくんと余熱を出すガトーに、コウの全身が震える。やめろ。・・・また欲しくなる。

 「ん。」
 (うわっ!)
 コウの精液にまみれた指をガトーは自分の唇に持っていき、舌で舐めとった。目の前でそんな行為を見たコウは、またドキドキと胸と腰が一気に熱くなる。それにまだ萎えないモノが中に入っている。これじゃ、冷めようがないよっ!

 繋がったまま、ガトーは(一応)きれいになった手で、コウを抱きしめた。コウを追いたてるような動きを見せずに、ただ静かにぎゅっとコウを抱きしめた。耳元で「良好だな。」と声がした。・・・・・・・・・バカヤロー。だいたい元から知ってるだろう、コウの叫びがコクピット内に反響する。はははっ、そうだな、とガトーが笑った。・・・俺もだんだん、おかしくなり、だって、この格好だし、こんな場所だし、なのに最後までいっちゃったし、・・・っていうか、まだ入ってるし!・・・笑ってしまった。



 二回目のテスト(?)を終えた二人は、衣服を整えてコクピットを出た。

 「万一の時のために、非常脱出装置も必要だな。」
 「・・・あのさー。・・・・・・・・・いや、もういいです。」
 何が万一なんだか。・・・・・・・・・格納庫には誰もいなかった。少しホッとして、二人は着替えと残りのチェックに向かった。



 この日、当直と徹夜組をのぞいて、ガトーとコウの二人がもっとも遅くまで働いたのだった。・・・そういうことにしておく。仲良く家路につき、腹ペコだったので途中のコンビニで山ほどサンドイッチを買って、帰って食べた。



 結婚三週間目の、幸せな夜だった。















+ END +










戻る















+-+ ウラの話 +-+



「・・・・・・・・・では、試してみるか?」が妙にツボ(笑)。

管理人@がとーらぶ(2002.05.12)











Copyright (C) 1999-2002 Gatolove all rights reserved.