私立・茨学園高等学校二年生、浦木攻(ぴちぴちの16歳)は、保健室のふかふかといわないまでもそれなりに気持ちのよい、清潔な白い布団の上にゴロンと横になって、サボリを決め込んでいた。



 11月の空はちょっと薄い青って感じで寒そうだが、南に面した窓ガラスから射すお日様はいくらかの暖かさを運んできてくれる。

 3,4時間目は選択授業で『書道』の時間だった。『音楽』も『美術』もまったく縁がないから、消去法で仕方なく選んだだけ。そんな書道の授業より興味のあるもの・・・いや、興味のある人間がここにはいた。



 (・・・でも、どこに行ったんだろ。)

 「はふ・・・。」

 なんだか眠気に襲われてくる。・・・ベッドの上、ぽかぽか、仕方ない。



 『・・・ガラッ!!』

 横開きの扉が開く音。・・・・・・・・・まあ、いいや。お・・・や・・・す・・・み。





 「ん・・・誰だ?」

 男の低い声がした。

 ここを出るときには、レールの端に寄せていた仕切り用のカーテンが閉じられている。誰が具合の悪い生徒が寝ているのだろうか、と。



 がささっ。

 記録ノートを見る。保健室を使用したら、クラスや名前や痛い所を書くようになってるあのノートだ。



 「何も、書いてないな・・・」

 今日11月14日の欄には、家庭科の時間に指を切った女性徒の名前しかない。少し前に治療して帰したはずだった。



 (・・・ということは、)

 ザーッと、カーテンをめくって、病院仕様のベッドが3台ほど並んでいるスペースに男が入ってくる。



 ・・・・・・・・・人の形に盛りあがった布団。天辺に少しだけ見える黒髪。顔を確かめるために、そっとのぞき込むと・・・



 「また、おまえか。」

 ちょっと、あきれたような声。



 「起きろ。サボリは許さんぞ。」

 「・・・んーーー。あ、先生・・・・・・・・・眠いよ。」

 布団をめくって、目を覚まさせようとする。コウは、濃紺のブレザーを着たまま横たわっている。・・・皺になるぞ、おい。



 「ここに寝ていいのは、病人だけだ。」

 「俺だって、病気だもん。・・・恋わずらい。」

 寝転んだまま、コウはしれっとした顔でそう言うが、男の表情は変わらない。



 「いいかげんにしろ。早く降りるんだ。」

 「ねぇ先生。・・・ベッドにはもうひとつ使い道があるんだけどな。」

 コウは、のぞき込む男の目を見つめたまま、にやりと笑った。・・・・・・・・・無邪気に。





 『ね・・・セックスしようか?』















保健室で加藤先生















 私立・茨学園高等学校新人養護教諭、加藤鈴太郎(むきむきの22歳)は、着任した日からほとんど全ての生徒と一部教師の噂の的だった。

 理由その1:外見とそれにそぐわぬ名前。

 身長は軽く190cmを越え、体重も100kgに届こうかという見事な体格。それでいて、細く切れ長の眉、紫水晶を思わせる瞳、鼻筋の通ったという表現にぴったりな鼻梁、意志の強そうな薄い唇、ツヤのある柔らかそうな銀髪、とどめに透けるような色白の肌。・・・そう、どっから見ても純潔の白色人種なのに、『加藤鈴太郎(がとうりんたろう)』という立派すぎる日本名。



 理由その2:男性の養護教諭。

 男女平等と言っても、まだまだ養護教諭は女性が多い。こんな若くてハンサムで外人っぽい男がどうして?という疑問。



 理由その3:学園長を堕としたらしい?!

 これが一番の話題なのだが、着任そうそう学園長から『その長い髪をなんとかしたまえ。』『教育者に相応しくないと思わんかね。』とイヤミを言われるも、『ちょっとお話が・・・』と二人で園長室に消えて、5分後に出てきた後は、文句を言われなくなったとか。

 あの強者のエギーユ・デラーズ学園長を、どうやって説得しかのか噂でいっぱい。・・・あーだ、こーだと。

 あ・・・・・・・・・ちなみに、学園長がどうしてそんなことを言ったのかといえば、ガトーの見事な銀髪が羨ましかったから、という信憑性の高い噂も。デラーズ学園長は、つるっぱげなのだ。



 ここ『茨学園高等学校』は、ミッション系の小中高一体になった教育施設で、経営母体はフランスにある某宗派。だから学園長は、その本拠地フランスから遣わされている。

 数年前までは男子校だったが、昨今の少子化とかなんとかのせいで共学になったばかりだ。女子は一クラス35人のうち4,5人程度。当然、先生方も圧倒的に男性が多かった。

 ・・・・・・・・・だから、養護教諭が男でも、それほど不思議でないといえば、ないのだが。










 ベッドの上は、相変わらず日差しが落ちて暖かい。だけど保健室にはなんとも冷たい空気が流れていた。



 「おまえ・・・、自分が言ってる意味がわかってるのか?」

 「・・・だから、セックスしよ。」

 ガトーの顔が少しだけ曇った。・・・浦木、本当にわかってるのか。



 「私は、勤務時間中に、そんなことはせんぞ。」

 「・・・じゃあ、放課後ならいいの?」

 「・・・・・・・・・。」

 「なんかさー、最近女子が騒いでんの。絶対、先生のことオトしてみせるって。・・・それぐらいなら、あんな奴らに取られるぐらいなら、俺がオトしちゃおうかなー、なんて。・・・だって俺、先生のこと大好きだし。」

 口調がふざけてる割には、コウの表情は真剣だ。まあるい黒目がちな瞳を開いて、ガトーを見る。



 「おまえはバカか?・・・第一、私は女生徒なんかに堕とされたりせん。」

 「・・・・・・・・・やっぱり、ダメ?」

 コウの目が細くなる。



 「とにかく早くここから出ろ!」

 「動けないー。」

 ふざけたように言うコウに、ガトーの態度も荒くなった。



 「いい加減にしろ!!!」

 身を乗り出し、コウをベッドから引っ張り出すのにその腕をつかもうとした瞬間、



 『ちゅっ』



 すばやくコウの両腕がガトーの首に巻きついて、そして唇が・・・ガトーのそれに重なった。



 「へっへー。」

 コウがいたずらっ子のように、笑っている。腕はまだ首に回したままだ。



 「いいんだな?」

 「・・・は?」

 がばっと、ガトーのちょっと痩せた熊のような身体がコウの上に圧し掛かった。・・・げっ、重たい。



 「ちょ、ちょっと、待ってよ。先生。」

 「セックスしようと言ったろうが。」



 あっ???

 ・・・ガトーの整った外タレみたいな顔が近づいてくる。・・・やっぱ、別世界の人みたい。・・・きれー。



 「・・・んっ・・・んんっ。」

 二度目のキスは、クールな外見と裏腹に熱くて・・・










 浦木攻は小学生の頃から、図工と体育が得意だった。高校では『図工』なんてものはカリキュラムにないので、体育だけが唯一の『自信ある』科目だったのだ。



 秋の体育祭、花形プログラムの『スエーデンリレー』。第一走者が100m、第二が200mと段々長くなって、アンカーが400m、つまりトラック一周分を走る種目だ。

 コウは学年対抗で行なわれるこのリレーのアンカーに選ばれていた。高校生で一番運動能力が高いのは二年生だ。一年生は中学生の影を引きずってまだまだ未熟だし、逆に三年生ともなれば、身体を動かす機会も減って体力が落ちている。

 そんなわけで、二年生チームのアンカーを務めるコウは、学校一足が速い男ということになる。・・・本人にもその自負があった。



 そして大会当日、コウのプライドは・・・見事に壊された。それも予定外の先生チームによって。



 コウにバトンが渡された時、前走者が不調で3年生チームに30mほど差をつけられていた。これくらい楽勝だと思っていた。事実、トラック半分ほどで追い越した。そしてゴールまであと10m足らずという時、ビュンっと風の音を聞いた。気がつくと視線の先に大きな背中があった。銀色の髪が後ろになびいて、大股の安定したフォームで男が駆けていく。

 ・・・コウは二着でゴール。屈辱のゴール。



 『くっそーーー!!!』



 悔しくて悔しくて、男の方をずっと見てた。もちろん、それが噂の養護教諭だと知っていた。



 悔しくて悔しくて、男から視線が外せなかった。・・・すげー・・・早かった。・・・・・・・・・かっこよかった、な。



 悔しくて悔しくて・・・・・・・・・うわー、かっこいい人だったんだ。・・・ただ立ってるだけでも。





 加藤鈴太郎が着任して半年間、全然興味がなかったはずなのに、体育祭のあったその日から、コウはなんだかんだと口実を作って、保健室に入り浸るようになってしまった。










 「う・・・あふっ・・・」

 ガトーの生暖かい舌が、口の中を暴れ回っている。逃げるコウの舌を追いかけて絡みついて巻きとって、お互いの唾液が混ざりあった。・・・・・・・・・これが大人のキス?

 唇がぴたりと合わさって、息が漏れる隙間もなかった。だが頭がぼーっとしてくるのは、酸欠のせいだけではない。



 (・・・たしかにセックスしようって言ったのは俺だけど・・・・・・・・・抵抗しな・・・きゃ・・・あっ・・・。)

 ガトーの指が、すっとコウの黒髪に入り込んだ。頭を横から支えるような格好で、その実、押さえ込んでいる。



 ・・・数分間もの長いキスの後、ようやく唇を離した。ツーッとかすかに唾液が二人の喉元にこぼれる。コウは反射的に口元に手をやりながら、ガトーに訊いた。

 「・・・・・・・・・先生って、ホモなの?」

 「さて、な。」



 浦木攻は、たしかにこの加藤鈴太郎という男が好きだ。

 ・・・好きだけど、さっきのは、ちょっとふざけただけで。全然、相手にしてくれないから、ワルノリしてみただけで。



 ・・・・・・・・・だけど、先生ってば、・・・キスが・・・うますぎー。



 コウのブレザーを脱がして、白いシャツのボタンを素早く外していく。・・・ひとつ・・・ふたつ・・・。

 「なんだかとーっても、慣れてる気がするんだけど。」

 「・・・なんとでも。」



 夏の名残りのかすかに日焼けした健康そうなコウの肌。一面の薄い黄褐色の中で、少しだけトーンが違う二つの突起。右側の乳首へガトーが顔を寄せた。



 「・・・せん・・・せー。」

 ちゅうっと吸っただけで、コウの身体がピクリと震える。かりりっと軽く歯を立てると、コウの身体が跳ねる。・・・うわっ、わわわっ。



 コウの顔を撫でていた手が、頬や喉や肩や腰のくびれやおへそをゆっくりとなぞりながら、だんだんと下に降りていく。触れる場所すべてに、新鮮な感覚が芽生えた。くすぐったくて熱っぽくてでも気持ち良くて・・・

 とうとう股間に着いた手が、若い膨らみをそっとズボン越しに握った。誰にもそんなことをされたことがないコウは、腰に力を込めてその感覚を否定しようとする。



 「あ・・・ぃや・・・。」

 目をぎゅっと瞑って、顔を横にそむける。その間にも、ガトーの手がズボンのジッパーを降ろして内側に入り込んだ。白青赤のトリコロールなトランクスをずらして、中にあるものを取り出す。・・・コウには見えないが、ガトーがニヤリと笑ったようだ。



 「浦木、・・・見てみろ。」

 意地悪にも、そっぽを向いたコウに自分の目で確認させようとする。コウのものは、ガトーの愛撫にこれまでの行為に反応して、立派に勃起していた。



 「・・・・・・・・・。」

 赤くなるコウに遠慮せず、ガトーはズボンとトランクスを一気に引き降ろして、隣のベッドに放り投げた。



 ・・・ぺろっ。

 「あぁっ・・・あ・・・。」

 まるでキャンディーか何かのように、ガトーがためらうことなくそれに舌を伸ばした。小さな宝袋を手で揉みながら、棒状の本体を下から舐め上げた。浮かんだ筋も、外側の皮と中身との境目も、先端の窪みも、丁寧に余すとこなく唾液で濡らしていく。

 コウはどうしようもなくて、そのガトーの頭を両手でつかんではいるのもの押し返すでもなく、喘ぐのがせいいっぱいだ。



 「ひっ!・・・・・・・・・やっ・・・ああ!!!」

 コウが大きく息を吸った。ガトーがそれ全体を口に含んだのだ。ぬめぬめと暖かい。気持ち良過ぎて、今にも先生の口を汚してしまいそう。



 ・・・しゅっ、しゅっ。

 ゆっくりとガトーの顔が上下した。唇ではさみ込んで表面をこすると、びくびくとコウの情熱が震えているのがわかる。そのかわいらしさに、つい力と早さを増してしまう。



 「だめっ!・・・先生ーっ!!!・・・あああっ!!!」

 びゅっ、とあっけなく、コウは放出した。熱くて熱くて耐えられなかったのだ。ガトーはまだ咥えたままだ。ごくっと何食わぬ顔で、一滴残らずそれを飲み干す。



 はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・

 もちろん、コウだってぴちぴちな16歳だ。女の子とはキスまでだけど、ひとりHの経験ぐらいある。でも全然違うよ。これは・・・、

 「先生・・・すご、い。・・・・・・・・・俺・・・俺・・・、」

 ブレザーもシャツも袖は通したまま胸元だけ肌けて唾液の跡が走っていて、下半身は丸裸というすごい格好でベッドの上に寝転んだまま、コウが言った。・・・まあ、悪いのはガトーだが。



 「まだ、セックスはしてないぞ。」

 何か言おうとしたコウをさえぎって、その太腿を両手で大きく開かせると、中心の奥の方・・・秘密の入口へとガトーが唇を寄せた。



 「せ・・・先生!!!汚いよ!!!・・・うぁっ。」

 固く閉じられたそこに、濡れた感覚が広がる。ペニスを舐められた時は、まだ少しは知っている感覚だったけれど、これは違う。

 何をされているのか、はっきりとは感じ取れなかった。・・・ガトーの舌が皺を舐めたり、中心のへこみへ尖らせた舌を差し込んだり、唇全体を押しつけたりしているのだ。



 「わ・・・あああっ!!!」

 一瞬、空白の時間があったかと思うと、今度は何かが押し込まれるのがわかった。くるくると中をかき回している。・・・あれ、ガトーの顔が目の前にある?・・・視線を下半身に向けると、ガトーの腕がそこへ伸びていた。そう、ガトーの指が内側からコウの身体を攻めていた。



 「な・・・なに?・・・・・・・・・・ひっ・・・!!!」

 探索中の指が、あるところに触れた。信じられないほど、弱弱しくなった気分。口からこぼれるのは悲鳴ばかり。でもすっごく気持ち良くて。

 さっき達したばかりのそれがはっきりとコウの快感を具現していた。もう次が発射されそうなほど、腹の上で反り返って、先端から透明な液を零している。



 ジジジーッ。

 気が遠くなりそうな、コウの耳にかすかにその音が聞こえた。えっと・・・この音は・・・ジッパーの音?

 コウの太腿の外側に両膝をついて立っているガトーが自分のものを下着の中から引っ張り出していた。



 『!!!!!!!!!』

 ガトーの手に握られたそれは、見事なほど勃起し、むきむきの22歳に相応しくて、・・・・・・・・・デカイよ、それ。・・・ごっくん。

 ぽかーんとしたコウの表情。



 「・・・力を抜くんだ。」

 コウの後ろの入口にこつんと何かが当たる感触。・・・えっと、だから、・・・無理だよ。絶対ーーーっ!!!



 「先生!まっ・・・あああああああああっっっ!!!・・・(むぎゅ)。」

 コウの叫びが途中で切れたのは、ガトーの大きな手のひらが口を押さえ込んだからで、その下では、もごもごと悲鳴を発し続けていた。

 ・・・・・・・・・身体がそこから避けるような感じ。めりめり。むりむり。痛いってーーー!!!

 コウは勝手に血だらけになってる自分を想像するが、その間にもガトーの大きな尖りはゆるゆると狭い道を進んでいく。



 「・・・入ってるぞ。」

 「え・・・?」

 ようやくコウが冷静になれたのは、ガトーの腰が止まってその顔が優しげに自分を見つめているのに気づいてからだった。痛い・・・痛いけど、たしかに入ってる。・・・信じらんねぇ。



 「・・・大丈夫だ。すぐ良くなる。」

 (やっぱ、慣れてんじゃん。・・・・・・・・・先生って、何者?・・・あっ!)

 ガトーが再びゆっくりと動き始めた。コウの蕾をやんわりと開かせるように。なるべく傷つけぬように。・・・愛しげに。





 「ああっ・・・ダメ、がとーせんせい・・・ああああっ・・・!!!」

 「くっ・・・ううう・・・、うら・・・きっ!!!」



 『良くなる』の言葉通り、ガトーがコウの中に白い液体を放出するまでに、コウはさらに二度達していた。










 「ねえ・・・先生。どうして、こんなことを?」

 「・・・・・・・・・やっぱり、おまえはバカだな。」

 コトの間、二人ともすっかり忘れているようだったが、ここは保健室なのだ。手早く衣服を元に戻しながらそう尋ねたコウを、ガトーが睨みつけた。

 コウは、思わず息をのむ。バカって・・・バカって・・・



 「・・・・・・・・・好きだからに、決まってるだろ。」

 ずっと自分にまとわりついているチビが。

 黒髪の少年が。

 明るく笑う生徒が。

 まっすぐに見上げる浦木が。

 憧れを隠そうとせず向かってくる攻が。

 バカみたいに情熱を現して追いつこうとするすべてが。





 「ああ・・・先生!俺も大好き!!!」










 『ね・・・セックスしようよ?』















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忘年会最後の日を飾った(?)エロな話でした(^^;)。
・・・エロって指定されたんですよぉー。
だから私のせいではありません・・・たぶん(笑)。

実は、某パスワードクイズのナマじゃない本番用として、
考えたものだったのですが(((^^;;;)、
私があまりにも加藤先生を気に入ってしまって(大笑い)、
ここに書き切れなかったエピソードが色々と浮かんで(笑)。
それで、第一話が読めないのに続きを書くのは難しいだろうと、
公開用にしちゃったわけです(笑)。

加藤先生ー!私も診てーーー(><)!!!

管理人@がとーらぶ(2000.12.31)











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